Book Report: It Starts with Us
Author: Colleen Hoover
翻訳版の有無: なし
映像化: なし
英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了できるレベル)
*本作は、It Ends with Usの続編です。
「過去をどこまで受け入れられるかも、人間関係を作るには必要」
正直、登場人物の一人であるライルを徹底的に悪者にしたかったんじゃないかな、とちょっと気の毒になりましたが、いかなる理由でも人に手を上げる人は悪い人だと思います。
あぁ、タイムリーな時事もありましたが、特に他意はありません。
前作「It Ends with Us/ふたりで終わらせる」の結末が綺麗だったので、続編を出さなくてもよかったかもしれませんが、読者にはボーナスっぽいかも。
かといって、蛇足と言ってしまうにはもったいないくらいしっかりしたプロットで、楽しく読み進めました。
登場するリリーとアトラス、そしてライルのその後は、私も気になっていました。
悲しいのは、トラウマのあるライルを徹底的に悪役としたこと。
いや、どんな理由があっても、ライルの行動はやっぱり悪なので、仕方がないことなのでしょうけど。
このシリーズの主人公はリリーだけれども、本作はアトラスに焦点を当てた格好で物語が進みます。
前作をあまりネタバレしないように語るよう努めますが、初恋と勢いある若い恋との間で揺れた結果、望まぬ妊娠が発覚し、それを通じて成長してく人達の話、というのが本作の大筋でしょうか。
三角関係に悩まされつつも親友を得て、更には新たな命の誕生に臨んだのが主人公のリリー(Lily Bloom)。
母親になった今、彼女は自身の初恋の相手アトラス(Atlas Corrigan)と、リリーと情熱的な恋をしたライル(Ryle Kincaid)との三角関係に結論を出し、新しい生活を送っている。
恋の決断や出産を経験したリリーを思い、アトラスは次の行動に移すのに慎重だけど、彼女を大切に思う気持ちは変わらない。
一方の悪役ポジションに追いやられたライルは、リリーとの新しい関係に少しずつ順応しつつも、これまでリリーと築いてきた昔に戻りたいとも思っている。
前作から引き続き、お互いにとって何が大切なのかを考えながら日々を過ごす三人は、スローテンポながらも確実に前へ進んでいく。
そんな中、アトラスは、今度は実母サットン(Sutton)との関係に向き合うことになります。
これまで、シングルマザーのサットンはアトラスを愛さず、また、息子よりパートナーを選んだ女性のため、アトラスは実家に居場所がありませんでした。
ところが今になり、母親と繋がり、彼女と継父の間に生まれた弟がいることがわかる。
弟ジョッシュ(Josh)とも繋がり、彼も自分が子供時代に苦しんだように、サットンから愛されていないことを知るアトラス。
自分はリリーがいたお蔭で悲惨な子供時代を乗り越え、自分で生活出来る基盤を作ることが出来たアトラスですが、リリーのような存在がいないジョッシュの心が荒んでいるのを見逃せません。
正直、母親と再度繋がったことを疎ましく感じるアトラスですが、ジョッシュのことは見捨てられない。
そこが、正直、偉いなと思った一読者の私。
ジョッシュのことはさておき、自分のことを捨てた母親と繋がるとか、面倒事と言っても過言ではない人間関係と向き合うアトラス。
未成年のジョッシュのことも、「自分は母親との確執を乗り越えたんだから、弟の君だって乗り越えられる」とか、無責任なことを言って放り投げず、見守る立場に徹します。
苦労を乗り越えてきたアトラスだからこそ、ジョッシュやサットンのことを受け止める。
もっというと、アトラスはリリーのことも受け止めているから凄い。
確かにアトラスにとってリリーは初恋の相手だけではなく、辛い少年時代の支えになった女性だし、ずっと好きだった人には変わりないけれど、ライルの存在は切りたくても切れないところまで深い関係にある。
好きだけでは割り切れない、面倒事のある人間関係を受け止めて、最善を尽くそうとするアトラス。
苦労人ではあるけれど、人間として成熟度の高さを感じました。
前作It Ends with Usのタイトルの通り、何かを終わらせることに焦点が当たりましたが、本作It Starts with Usもタイトルの通り、何かが始まります。
それは先述の通り、リリー、アトラス、ライルが絡んだ新しい生活スタイルだし、アトラス、ジョッシュ、サットンとの新しい関係だし、それ以外にも新しいことが始まっていく。
受け止める力、始めるエネルギーの力強さを感じる作品でした。


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