Author: Truman Capote
翻訳版の有無: あり。「ティファニーで朝食を」
映像化: あり「ティファニーで朝食を」
英語レベル: Advanceレベル寄りのBasic(洋書に一日3分向き合える)
この本は、こんな人達にオススメします。
・自由を求めている人
・かつて、結ばれずに終わった魅力的な知人がいる人
・十年近く会っていない大切な人がいる人
映像作品を紐解くと、洋書に行き当たるケースがかなり多くあります。
キャリア女子なら誰しも好きになる(と思う)Sex And The Cityやプラダを着た悪魔や、男性なら一度は憧れるジェームズ・ボンド作品、それに児童書も数々映画化されています。
その中で、映像化するにあたり、独自のエピソードを盛り込んだ作品もあります。
洋書と映画が全く別物の「ワタシがわたしを見つけるまで」、視点を入れ替えた「私の中のあなた」など。
お蔭様で、私はどちらも楽しめます。
今回紹介するカポーティの「ティファニーで朝食を」も、ラスト以外は原作に沿って進みますが、洋書と映像作品の違いを理解したうえで挑戦するとより楽しめます。
まず驚いたのが、ホリー・ゴーライトリー(Holly Golightly)の外見が、どうも洋書と映像作品とで異なるようです。
洋書では早々にblondと出てきて、映像作品のオードリー・ヘップバーンのイメージからかけ離れたホリー像が描かれていたことに気づきます。
作者カポーティからすると、映像化の際にホリーのイメージを全く変えられてしまったことは不満かもしれませんが、オードリー・ヘップバーンのあの颯爽とした佇まいがホリーにぴったり。
というか、彼女が上手にホリー像を体現したといって良いでしょう。
また、ブロンドといえば、私はやはり「紳士は金髪がお好き」のローレライ・リー。
どちらの映像作品が先に世に出たのか調べ切れていませんが、オードリー・ヘップバーンもマリリン・モンローも強烈なイメージを作り上げてくれたことには変わりありません。
さて、本作品は、主人公の作家のたまごの視点からホリー・ゴーライトリーとの思い出を振り返る展開をしていきます。
アフリカのどこかで元気にしている彼女の姿を写真でみつけた主人公は、バーの主人ジョー・ベル(Joe Bell)に見せ、彼女との思い出を回想します。
赤い縞を持つオス猫を飼い、ギターを奏でるブロンド娘のホリーと主人公は、アパートの鍵をなくしたといって主人公の家を伝っていったことで交流が始まります。
羽振りの良い男性達の元を次々渡り歩く、若くなんとも謎めいたホリーに、主人公は惹かれます。
ホリーから、弟(兄かも)に似ているという理由でフレドと呼ばれるようになる主人公ですが、ある日ホリーの過去を知るドック・ゴーライトリー氏と知り合うのです。
貧乏や飢餓からの脱却のためにホリーが置いてきた過去が顔を見せ、ホリーをどん底に突き落とし、そして彼女が生きるために行っていた行動で進退窮まるという状況に対面しますが、自由になることが彼女の一番の望み。
回想で出てきた写真の通り、ホリーはアフリカへと旅立つのです。
ホリーの過去を象徴するドック・ゴーライトリー氏が登場するまで、ホリーとは何とも移ろいやすい胡散臭いと感じていました。
自分で地に足をつけて働くということをしないホリーだから、そう感じたのかもしれませんが、彼女の軽薄さはどうも無知からくるわけでもなさそうだし、一体彼女の過去に何があったのだろうかと読書中はずっと勘ぐっていました。
先述したように、ホリーは貧乏や飢餓を経験しているので、それをもう二度と経験したくないというのが彼女の最大の望み。
それを実現するために、ホリーはお金持ちの人達のもとを渡り歩いていたのです。
ホリーには根無し草の印象も持ったのですが、彼女の過去が私にそういう印象を与えたのかもしれません。
これまでホリーは、飢餓から脱却するために人生のステージを変えざるを得ない状況に陥ったり、貧乏しないためにお金持ちの男性達を相手したり、自分の欲しいものを手に入れるために自分を差し出す人生を送っていました。
主人公の作家のたまごが見つめる中、ホリーは自身の自由のために戦うのです。
本作品を読むまで、私はまだ映画版「ティファニーで朝食を」に挑戦していなかったため、ぼんやりとしかイメージを持っていませんでしたし、タイトルのとおりティファニーでホリーと主人公が朝食をとることがテーマかと思っていましたが、全く異なる物語でした。
ホリーが自由を求めるところがポイントとなり、短い物語ながらよく描かれていると思いました。
映画版とラストが異なることで本作は有名ですが、ロマンチックコメディーを推す映画と異なることが、洋書を楽しむ良いスパイスになっています。
本作は「ティファニーで朝食を」のほかに三作品の短編小説が含まれています。
正直、カポーティの描く作品はどこか暗い影のあるものになっていて、ほかの三作品にもその影を感じました。
「花盛りの家」は、朗らかな若い主人公が一人の青年に恋をし、彼の元に嫁ぐも現代でいうDVの扱いを受けて病んでいく話。
むせかえる花の香りが嫁ぎ先の家から香るのですが、フェミニンな環境に反して女性のものの考え方に影響する暗い作品でした。
「ダイアモンドのギター」は囚人達が主人公。
囚人のボスっぽい男性の前に18歳の若い囚人が現れ、彼が所持するギターの音色に誘われる話。
次第に脱獄の匂いのする物語展開になり、行く末が気になる作品でした。
「クリスマスの思い出」は主人公の少年と親戚のおばさんが、毎年クリスマスにケーキを焼き、お金を稼ぎ、二人でクリスマスプレゼントを交換する話。
子供と老人というポジションにいて、あまり家族から歓迎されていない二人が、お互いを大切に思い合う姿を描いていました。
私が南部三大作家のひとりと呼ぶトゥルーマン・カポーティは、なんとなく暗い雰囲気の作品を書きますね。
次回、「冷血」(In Cold Blood)を読む予定です。
こちらも映画化されている作品で、楽しみです。
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