Author: Liz Tuccillo
翻訳版の有無: あり。邦題「ひとりな理由はきかないで」
映像化: あり「ワタシが私を見つけるまで」
英語レベル: Advancedレベル(洋書を1年間に1冊読了出来る)
この本は、こんな人達にオススメします。
・パートナーの有無、既婚・未婚に関わらず、自分の生活を謳歌している人
・自分がいる今のステージを向上させたい人
・友達っていいなと再確認したい人
男女関わらず、人から質問されて煩わしいと感じる質問のトップに君臨する「結婚しないの?」あるいは「恋人はいないの?」。
これを否応なしに意識せざるを得ない本書。
また、パートナーシップが破たんした場合に、男性はすぐに新しい恋人が出来るけど女性は過去の恋愛に囚われやすい傾向にあるといい、その描写も出てくる本書。
実は本書を読み進める中で苦しくなり、自分を勇気づけるよりは反面教師としての位置づけにあるなと感じました。
おそらく、本書に登場する五人の女性達が、揃いも揃って自分に自信がなく外に見えるところにフォーカスして向上させようとしているから。
この本のテーマである「独身女性」にフォーカスし、そのステータスを変えようと奮闘する女性達が磨きをかけようとするのが自分の外の部分であり、内の部分である心の成長に全くフォーカスがされていないので、共感が出来たかという点ではし難かったというのが正直な感想です。
一方で、作中で描かれる恋愛を通して彼女達は痛みを経験し、自分らしく輝くとはどういうことか考えさせられるラストで結ばれて作品は終わる点は共感が出来ました。
心の課題や人生観の話なので明確な答えはありませんが、苦しい恋愛、自分らしく輝けない生活を手放し、本当はどう生きたいのか考える彼女達の姿勢は、「確かに」「私にとって居心地の良い生活って何だろう?」と自問自答させてくれました。
独身でいること、あるいはパートナーを作ることを推奨せず、かといってお互い見下さず、最後まで「自分とは」に集中できる作品でした。
著者のリズ・ターシロ(Liz Tuccillo)氏はSex And The Cityプロデュースに携わった経歴があり、本作の書き方にも納得です。
SATCは映画版しか見ていませんが、登場する四人の女性達は未婚・既婚、子供の有無で描かれ方が異なりますが、誰一人マウントを取らない素敵な女性達で、自分がどうしたいかしっかり考えを持った女性達です。
本書に登場するJulieと、その友人であるGeorgia、Alice、Serena、Rubyは「Julieの共通の友人」である以外全く共通点がありませんが、作品を通じてお互いの存在を認め合い、最後には一緒に旅行する仲にまで関係を深めます。
夫に離婚を突き付けられた傷を癒したいと懇願するジョージア(以下Georgia)の連絡を受け、出版社で働くジュリー(以下Julie)は独身の友人であるアリス(以下Alice)、セレナ(以下Serena)、ルビー(以下Ruby)を招集し、五人で女子会を開きます。
ニューヨークに住む彼女達は、クラブや店に行けばすぐに新しい人間関係を築くことが出来るので、長く結婚生活を送ってきたGeorgiaは、飲み歩くこと、男性と語り合うこと、など独身の特権を味わいたいとはしゃぎ、また離婚によって受けた傷で無茶をします。
また、同じく招集した三人の友人の姿を見て、Julieはニューヨークの独身女性達は幸せではないと疑問が浮かびます。
Aliceは弁護士の仕事を辞め、結婚相手をみつけるためにデートし始めますが充実して見えません。
Serenaはヒンドゥー教に傾倒し、自分の世界を築き上げ、ちょっと近寄りがたく完全に異性関係を絶ったように見えます。
Rubyは数か月前からペットロス状態で、気分が完全に沈んでいます。
Georgiaはこの通り、やけになってはしゃいでいます。
そして自身も仕事は充実するもパートナーがおらず。
果たして我々のこの姿は幸せなのかと自問自答するJulieは、上司に直談判し、世界中の独身女性達にインタビューして幸せかどうかを記事にするため、旅に出ます。
ニューヨークに残るJulieの共通の友人たちと、世界へ飛び立つJulieは、自分の幸せは何かをいうこと、自分とは何かということを探していきます。
Julieは取材旅行の途中に思いがけず道ならぬ恋に落ち、自分をみつけるどころか自分を見失っていきますが、自分の幸せが何か問い続けるためその恋への答えを出します。
そのJulieの姿が清々しい。
一点、不満を言うとすれば冒頭で伝えた通り、五人とも外の部分を磨こうとして失敗しまくるので、共感しにくくイライラした場面もありました。
精神の世界に自分を見出すSerenaは、ヒンドゥー教の教えを守り、それに則った生活を始めキャンプに参加しますが、それが本当に心地が良い生活なのか読んでいて納得出来ませんでした。
形から入るも失敗するパターンに感じました。
Rubyはペットロスが原因で鬱屈する自身の生活を変えようと、ボランティアを始めますが、優しすぎる性格から引き取り手のない動物たちに同情し、心のバランスを更に崩していきます。
GeorgiaとAliceは二人に比べてよりJulieと付き合いが深いため、人物像がより的確に描かれていますが、この二人も自分の居心地の良さよりも周りにどう見られたいかにフォーカスする描写があり、いまいち応援出来ませんでした。
唯一Julieが自分の心の心地良さにフォーカスしますが、道ならぬ恋に落ちてしまったため、そうせざるを得ません。
どんなに頑張っても相手から自分は選んでもらえない。
自分は一番になれない恋愛を、果たして続けて自分は幸せになれるのかと悩みぬきます。
物語の流れにより半ば強制的にその恋に決断を下すことになりますが、その後のJulieは強かったのでその姿には引き込まれました。
でも、人って内面を変えるより外の部分を変える方が簡単で目につきやすいから、誰でも陥りやすい「自分との向き合い方」かなと思います。
何歳になっても恋に悩み、自分に悩み、模索する女性の姿は身近に感じることが出来ます。
決して「楽しい」だけで済まないテーマを取り扱っているので、読者も悩み途中ネガティブな思いも出てきますが、恋愛やパートナーシップを通じて成長する五人の女性達の姿を見て、自分も頑張ってみようかなと思わせてくれる作品になっています。
くれぐれも、イライラに支配されず、力を抜いて読むと良いかと思います。
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