Author: Julie Powell
翻訳版の有無: あり「ジュリー&ジュリア」
映像化: あり。「ジュリー&ジュリア」
英語レベル: Advanced(一年に一冊洋書を読破出来るレベル)
この本を読むと、「一つのことをこつこつ続ける大変さを実感出来る」というベネフィットを得られます。
隣の芝生は青く見える、という言葉があります。
自分が持つものに十分な幸せが詰まっているのに、隣の人が持っているもの=自分が持っていないものにフォーカスしてしまい、自分が持つ者に感謝出来なくなる状態です。
本作の主人公で作者のジュリー・パウウェル(Julie Powell)は、ニューヨーク州ロングアイランドに住む二十九歳の女性。
高校の同級生であるエリックと結婚し仕事もしている、という、若い純愛を実らせて手に職を付けた状態なので、いわゆるリア充に見えますが、ジュリーの心境はそれとは裏腹。
二十代最後で年を重ねることへのプレッシャーを抱き、かつて夢見た俳優業は夢破れ、政府系の事業で秘書業務に従事しますがそれも不満。
なんとも空回りするジュリーの心は揺れていました。
エリックと移った新居に両親を招待するも、母はその新居が好きでない、こんなところに娘が住んでいるなんてと涙する様子に辟易します。
そんなある日、実家で見つけたジュリア・チャイルドのレシピ本、Mastering the Art of French Cookingを手にします。
それは、ジュリーが幼い頃によく眺めていた本で、ジュリア・チャイルドはアメリカにフランス料理を紹介したことで有名になった料理人です。
彼女のレシピ本を眺めるうちに、ジュリーは今までやったことがないことに挑戦します。
それは、ジュリア・チャイルドのレシピ本に載った料理を一年かけて作り上げるというもの。
料理することは特別おかしなことではありませんが、一年間使い、その様子をブログに掲載することが、一つユニークなことでした。
始めは母や友人達から理解を得られず、奇妙な目で見られるジュリーですが、エリックが味方し、毎日料理に挑戦しブログを書き続けます。
私がこの作品に出会ったのは、書籍より映画の方が先でした。
映画を観た時、自分の信念のため一つのことをこつこつと実践する二人の女性の姿に、ものすごく勇気づけられたことを覚えています。
三十代目前のジュリーと、その時点で八十歳を超える高齢のジュリア。
(ジュリア視点の場面では、彼女が三十代頃に時間が巻き戻ります。)
それぞれがぶつかる壁に対し、傷つきながらも逃げずに立ち向かう姿に感銘を受けました。
現代に生きるジュリー視点では、情熱のない望まぬ仕事をこなさなければならないこと、資金繰りの関係で意に沿わない場所で暮らすこと、という壁にぶつかり、葛藤を抱えながらもジュリーが得意な料理を毎日こつこつ続ける姿にひたむきさを感じました。
一方のジュリアの視点では、夫と移り住んだフランスで、故郷のアメリカにフランス料理を紹介するため尽力する彼女の姿に手に汗握りました。
料理人の世界は男性社会。
女性であるジュリアは必死について行くのです。
彼女達が素晴らしいのは、料理という普段何気なく、生きるために行う行為と丁寧に向き合い、毎日続けること。
もちろん、普段使いの料理だって、毎日行うことだから素晴らしいこと。
しかし二人は、アメリカへのフランス料理の紹介、毎日レシピ本の料理を続けることを信念として実施続けたことがすごいのです。
すぐに三日坊主になる私には、継続して自分の信念を通す二人の姿に感心するとともに、続けるって大変だな(突発的な来客とかあって妨げられるし、など)と実感しました。
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