Author: F. Scott Fitzgerald
翻訳版の有無: あり。邦題「グレート・ギャツビー」
映像化: あり「華麗なるギャツビー」
英語レベル: Advanceレベル(洋書を一年間に1冊読了出来る)
この本は、こんな人達にオススメします。
・過去をやり直すより未来を大切にしたい人
・日々努力している人
・恋をしている人
本作品ほど、人生は理不尽だと思わずにはいられない作品はなかったな、と読了して感じました。
「グレート・ギャツビー」は、俳優レオナルド・ディカプリオがギャツビー役を演じる作品を観てから書籍に手を出しました。
ちなみに何の関係ない「ギャツビー」は、男性向けヘアケア、フェイスケア製品が存在しますね。
本を知らない方でもこちらは知っている、という方が多いのではないでしょうか。
本作品を簡単に説明するなら「身分違いの恋と一代で築いた富の栄枯盛衰」というところでしょうが、読み進めればわかる、そのどろどろとした人間の身勝手さ。
謎に包まれた実業家ジェイ・ギャツビー(Jay Gatsby)は、かつての恋人デイジー(Daisy)を取り戻し、過去をやり直して彼女と結ばれる夢を実現するため、隣人ニック・キャラウェイ(Nick Carraway)に近づきます。
その手段として、自身の家で行われるパーティーにニックを招待し、彼と親しくなることを選びます。
そういった経緯でギャツビーと親しくなったニックの視点で物語は進むのですが、第三者の視点だから物事を冷静に捉えられ、淡々と進んでいきます。
その「淡々」が恐ろしい。
デイジーを想うギャツビーの気持ちは純粋そのものなのですが、彼女を取り戻すためなら何でもするというまっすぐ過ぎる彼は、手を出しているのは酒の密輸。
時代設定として、禁酒法時代のアメリカ(消費のためのアルコールの製造、販売、輸送が全面的に禁止されていた時代です)という背景があり、それに反し法を侵してギャツビーは富を手に入れました。
幼少期は貧乏だったギャツビーは、生まれながら上流階級に育ったデイジーに釣り合うよう自身を取り繕ったのですね。
彼の強引さはある種甘美な熱量となって、デイジーの気持ちを揺れ動かします。
というのも、彼女は既婚者なのですが、夫トム・ブキャナン(Tom Buchanan)とは元々愛のない結婚であり、しかも彼は不倫をしている。
自分だけを想い続けてくれたギャツビーの熱い視線は、デイジーの気持ちを彼に傾けるには十分でした。
ですが、映画を観て、そして登場人物の設定を見て、私は直感的に「これ、ギャツビーの恋、実らないよね?」と思ってしまいました。
デイジーが既婚者という事実があるから、ということより、ギャツビーが彼女との過去をやり直したいという理由で富を得て成り上がったということが、そう思わせました。
もう少しデイジーのことを語ると、トムの不倫があるとはいえ、彼女の共通の友人達と会う時には当然トムと行動を共にしますし、愛のない結婚だったとはいえ彼女はトムとの間に子供を儲けています。
子供が出来るというのは、未来を創ることに繋がることだと思いますので、デイジーは確実にギャツビーを過去のことと捉えてトムと家庭を作ってきました。
男女間のもつれがあることは事実ですが、デイジーはトムのことを夫と認め、彼と向き合い、ギャツビーと別れた後の人生を歩んでいます。
デイジーは軽薄な女性の象徴として描かれているのですが、とはいえ、ギャツビーのことを密かに思い続けてトムからギャツビーに乗り換える、といった気持ちは作品の中には描かれていませんでした。
このあたりが人生は理不尽だと思わせた点です。
同時に、私の直感に沿って言うと、ギャツビーは可哀想だなという感想も抱きました。
ギャツビーが自身の人生を賭けて築き上げた富と名声は、一人の死をきっかけにあっけなく崩れ去っていきます。
そのエピソードの描かれ方が秀逸で、物語の後半を包む重い空気が書籍から伝わって、何とも後味の悪さを抱きました。
決してポジティブな気持ちにしてもらえない本作品ですが、描写の仕方が詩的で、なのにわかり易く、テンポも良く、良い作品なのだとすぐに感じることが出来ました。
架空の医者エックルバーグ(Dr. TJ Eckleburg)の大きく見開いた目と眼鏡が青い看板に描かれ、それがそのまま「グレート・ギャツビー」の本の表紙になっていますが、外見も中身も人の印象に残る良い作品です。
繰り返しますが、人生の理不尽さを描く作品ですが、人の心を惹きつける作品でもあります。
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