Author: C. S. Lewis
翻訳版の有無: あり。邦題「馬と少年」
映像化: なし
英語レベル: Advanceレベル(洋書を1年間に1冊読了出来る)
この本は、こんな人達にオススメします。
・新しい冒険にわくわくしている人
・未知の出会いを受け入れられる人
・体力がある人
以前の投稿で行ったように、今回も日本語訳の発音が好きじゃないので(笑)、独断でカタカナ変換することをご了承ください。
これまで読んできたナルニア国シリーズは、第一作「ライオンと魔女」に登場したペベンシー四兄弟と何かしらの形で関わる人達が登場してきました。
四兄弟の従兄弟ユースタス、彼の同級生ジル。
さて、今回の作品の主人公はどうでしょうか。
主人公の少年シャスタ(Shasta)は、貧しい漁師アルシーシュ(Arsheesh)と共にカローメン(Calormen)国のある村に住んでいました。
アルシーシュの自分に対する扱いはあまり良くないし、自身も折り合いの良くない父だと感じながら毎日を過ごしていたところに、カローメン国の貴族の男を家に泊めたことで彼の人生は変わります。
彼に降りかかった驚愕のイベントは二つ。
貴族の男がシャスタを自身の世話役(ようは奴隷)にほしいとアルシーシュに話を持ち掛け、取引を始めたのです。
その話を漏れ聞いたシャスタは寝床から抜け出し、世話するロバと貴族の男が乗っていた馬のところへ向かいます。
貴族の男が乗っていた馬に向かって思わず言葉が漏れたシャスタ。
その言葉を聞いた馬が、喋り出します。
夢でも見ているのかと思ったシャスタですが、馬は元々ナルニア国生まれであるために話すことが出来、人間に連れられた格好でナルニア国から離れてしまったため人の言葉を理解することを隠し通していたと過去を教えてくれました。
貴族の男が優しくない、それどころかシャスタを世話役にしたらこき使うことを示唆した馬に従い、シャスタは家を飛び出す決意をします。
シャスタと彼にブリーと呼ばせることを許可した馬は、未知の世界であるナルニア国へ向かい、逃げ出しました。
と、いうことで、シャスタはペベンシー四兄弟と直接関わらないですね。
ここまでは普通の一人の少年の成長物語なのですが、ここから先、シャスタとブリーは国を巻き込んだ争いに関わることになります。
その鍵を握るのは、カローメン国の貴族アラヴィスとナルニア国女王スーザン。
アラヴィスとの出会いは偶然の出来事で、シャスタとブリーが旅の途中、夜にライオンに追いかけられる目に遭い、同じく追い回されるアラヴィスと彼女の馬フウィンが合流します。アラヴィスは望まぬ結婚をさせられる自らの運命に悲観していたところ、シャスタ同様に偶然人間の言葉を解するフウィンと出会い、逃げ出すことに。
ブリーとフウィン、人間の言葉を理解する馬と、その馬を連れる人間はナルニア国へ向かいます。
その道中に絡んでくるのがナルニア国女王スーザンなのですが、ナルニア国と親交のあるアーケン国(Archenland)の王子コリンにシャスタが瓜二つであり、シャスタとアラヴィスの旅の道中にスーザン女王とその弟エドマンド王がシャスタとコリン王子を間違えたことから、シャスタ達とペベンシー四兄弟が関わってくることになります。
スーザンはカローメン国の王子の求婚を拒否したことで、故郷のナルニア国とそこと親交のあるアーケン国がカローメン国の軍事侵攻に巻き込まれてしまうのです。
わぁ、物語が盛りだくさんになる要素が散らばっている。
確かに家出息子と家出娘の冒険譚として物語を進めるよりは、他国の政治的な諍いに巻き込まれる二人の心の成長を描いた方が、物語のボリュームやテーマに広がりが出そう。
シャスタとアラヴィスは、家出したとはいえ道中の冒険や新しい国への期待を抱くシーンが、読者をワクワクさせてくれます。
アラヴィスは貴族という立場から、下の立場にいるシャスタに対し簡単に心を開きませんが、やはり旅を共にする際に見せたシャスタの勇敢な姿に心を打たれるシーンがあり、二人の成長が見られて楽しいです。
動物達が人間の言葉を理解する、というのはこれまでのナルニア国物語作品に出てくるため、決して真新しい展開ではありませんが、当初シャスタもアラヴィスも未知の体験になるので、最初はどぎまぎするシーンが出てきて微笑ましいです。
旅を進めるうちに二頭の馬達は主人の良き相棒になって、二人の心の成長にも助けとなります。
ペベンシー四兄弟と関わりのない二人が織りなす物語、ということでこれまで読んできた作品と一線を画す作品となり、外から見たナルニア国という点で新しい発見がありました。
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