Author: C. S. Lewis
翻訳版の有無: あり。邦題「朝びらき丸 東の海へ」
映像化: あり。「アスラン王と魔法の島」
英語レベル: Advanceレベル(洋書を1年間に1冊読了出来る)
この本は、こんな人達にオススメします。
・「Unfinished Business」がある人
・今の環境に不満があり逃げ出したい人
・船の旅に憧れがある人
折しも船の事故があり、連日ニュースで取り沙汰されていた状況下だったため、記事を書くことを止めていました。
また、私がインプット重視の気持ちになっており、読書に勤しんでいたためブログを書けませんでした。
ようやく気持ちが向いたので、本作品を紹介します。
月間ワークとして読み始めた「ナルニア国物語」も三作品目。
時系列で見ると五番目に当たるそうです。
今回の主人公は、ペベンシー四兄弟の従兄弟にあたる、ユースタス・スクラブ(Eustace Scrubb)です。
捻くれた性格をして、友達がいなくて、私視点では小物な男の子。
家庭の事情で両親と上の兄弟二人と離れて過ごすことになったエドマンドとルーシーは、ユースタスの家(つまり彼らの叔父・叔母の家)に行くことになるのですが、こんな性格難ありの従兄弟がいるから、彼らは憂鬱。
迎える側のユースタスは、過去に四兄弟からナルニア国の話を聞いているようで、「頭の変な四兄弟」と捉えている節があり、今回エドマンドとルーシーを迎えるにあたり、からかってやろうと悪だくみをします。
実際は、エドマンドもルーシーも、こんな小物感100%(失礼)なユースタスなんて相手にしておらず、叔父叔母の家で過ごすのですが、壁に掛かった絵が三人をナルニア国に連れて行くのです。
ナルニア国に呼び戻されたペベンシー兄弟と、今回初めて訪れたユースタスは、航海中のカスピアン王の船に迎え入れられ、彼が行方知れずの七人の大臣の捜索に加わります。
これが今回のメインテーマ。
カスピアン王とその叔父ミラースの王位継承権争いのごたごたに巻き込まれてしまった大臣達を探し出したい、というカスピアン王の考えにより、彼は船を出しました。
自身の周りには信頼出来る臣下もいますし、国も平和を取り戻したので、やりかけの仕事である行方不明者を探し出して過去の問題を解決するつもりでいます。
彼の味方であるエドマンドとルーシーは、早速協力する姿勢を見せます。
一方のユースタスは、現代世界からファンタジーな世界へ急に連れてこられたため、パニックを起こし、航海中もたびたび問題を起こしてカスピアン王とその臣下達から信頼を勝ち取ることが難しい状況に陥っていきます。
スクラブ家から逃げ出したいペベンシー兄弟と、ナルニア国から逃げだしたいユースタスの描写は、対になって面白いですし、またそれぞれ現実と向き合うのでその後の成長にも繋がる描写があって良いです。
鶏か卵が、になるのですが、ユースタスも旅の中で成長するし、その姿を見て特にエドモンドがユースタスを尊重するようになります。
いわゆる典型的な「一人っ子」のイメージに沿って描かれているユースタスは、当初それがネガティブに効いて小物な人物としての印象が強い少年でした。
両親と三人家族であるため人に揉まれず、ちょっと意見が衝突すると意地悪を言う。
さらに、アサーティブに意見を伝えるのではなく感情で訴えるタイプ。
航海中に日記をつけるユースタスですが、彼視点であるその内容には偏りがあります。
実力もないくせに思い上がり、勝手な行動をした結果、彼はある生き物の姿に変わってしまう描写が出てきます。
その生き物は、宗教上、嫉妬や憤怒を表す竜です。
ユースタスは常にイライラしていて、穏やかな印象を全く受けないキャラクターです。
前述した通り従兄弟達に意地悪する性格で、友達がいないことから人が近付いてくると「これはチャンス!」とばかりに相手との距離感を無視して応対するところから、おそらく構ってちゃんなのでしょう。
描かれてはいませんが、おそらくペベンシー四兄弟への嫉妬があるのだと思います。
それは、家庭の経済的なことではなく、友達がいない背景を見て「人に囲まれている」という事柄がユースタスに嫉妬心を芽生えさせるのではないかと思います。
人に囲まれることに嫉妬心を抱く、ということは、おそらく親との関係もうまくいっていないか、ペベンシー四兄弟と彼らの両親との関係が良好過ぎて羨ましいか。
ナルニア国にやってきても、カスピアンとその臣下達と顔見知りのエドマンドとルーシーはわいわいやっているので、ユースタスは疎外感を味わうことになる。
おそらく、常に心が寂しいユースタスは、怒りを態度で表すことで周りの人達に自分の存在に気付いてほしいのだと思います。
そんなユースタスが、勝手な行動を起こして竜に姿を変えてしまう。
当然、周囲はどうにか元に戻そうと心を砕きます。
その間にユースタスにも成長の兆しがあり、自分の小ささを認める描写がありますが、そこに立ち会ったのがエドモンドでした。
年も近いので、よき理解者になるのかなと読者側はほっこり出来る場面です。
さて、航海は数々の島に降り立って行方不明の臣下達を探していきます。
生きて見つかる者もいれば、悲しい結末を迎えた者もいて、前作で触れたカスピアンと叔父ミラースの王位継承権争いの影響がいかに大きかったか、気付かされます。
玉座に就いたからには、カスピアンには平和な世の中を治めてほしいなと強く思いました。
次作以降、どうなっていくのかも楽しめる作品になっています。
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