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洋書Lovers普及委員会 委員長のMasumiです。
前回投稿をしたので。
・・・洋書普及の活動をする者の立場ではありますが、本日は日本人が書いた本を紹介させてください。
かつて読破に挑戦し、シリーズ完走せずに挫折してしまった、三島由紀夫の「豊穣の海」は、輪廻転生ものの代表作の一つ。
輪廻転生は、漫画ならよく取り上げられる設定ですが、小説、それも超・大衆小説という感じでもなさそうな分野で取り上げられているので、とても惹かれた作品の一つです。
ですが、当時はこの回りくどい書かれ方に最終的に抵抗を感じて、途中で挫折。
以来、ずっと心に引っかかっていました。
と、いう投稿をしたのが昨年の十一月でした。
今回、第二部となる作品を読了したので、レポートします。
豊穣の海第二部「奔馬」は、前作に登場した本多繁邦が成人し、判事として登場します。
豊饒の海のテーマが輪廻転生であるため、本多君は前作で身近な人の死を経験し、その痛みを抱えながら大人になり、結婚までしています。
すっかり大人です。
そんな本多君は、仕事関係で奈良県へ。
そこで剣道の親善試合の場に参加し、挨拶をすることになるのですが、そこで将来有望な剣士の飯沼勲に出会います。
若い剣士の勲は、本多君のかつての友人である松枝清顕に仕えていた書生の飯沼の息子だったため、本多君は奇妙な縁に懐かしさを感じます。
それだけで済めば、ただの懐かしい昔を思い出す一つの場面で奈良出張は済んだのですが、本多君は剣士仲間達とつるむ勲の右脇腹に三つのほくろをみつけました。
この位置とこのほくろの数は、本多君が死に別れた相手が同じ個所、同じ個数を有したものと同じだったのです。
そして勲のほくろを見つけた場所が、その死に別れた相手が「また君に会うよ」と告げた場所でもありました。
判事の仕事に就き、日常を丁寧に生きる本多君と、将来を期待されながら思想に傾倒し、活動へ身を染めていく勲の対比はまさに秀逸。
財政界が腐敗していると気に病み、右翼塾を主催する父親の飯沼に隠れ、塾生達を結束して勲がクーデターを計画する場面ははらはらします。
財政界の特定の権力者達が世の中を疲弊させていると勲は悲観し、かつて明治の世で活躍した世直しのように、昭和の神風連を結束し、暗殺を企てるのですが、誰よりも純粋な勲は財政界=悪という構図をどうしても確立しておきたい考えの持ち主。
いわゆる「大人の繋がり」がのちにわかる場面がありますが、それが明らかになると、よってたかって大人達が純粋な子供の勲を弄んだように感じたのは私だけでしょうか。
過激な行動を取る勲達と、過去からの輪廻転生をわかって以降より一層彼を救いたい判事の本多君の切ないやり取りに引き込まれます。
第四部まであるので、また輪廻転生があるのが悲しいですが、奔流の中を見事に泳ぎ切る勲の姿から目を離せない作品です。
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