Book Report: An Offer From a Gentleman
- Masumi
- 2023年6月5日
- 読了時間: 4分
更新日:2024年12月18日
Author: Julia Quinn
翻訳版の有無: あり。「もう一度だけ円舞曲を」
映像化: あり「ブリジャートン家」
英語レベル: Advancedレベル(一年に一冊洋書を読了できる)
この本を読むと、「シンデレラ・ストーリーを楽しめる」というベネフィットを得られます。
作者ジュリア・クインは、少女漫画好きの女子の気持ちを、よくわかっているなと思います。
前作「The Duke and I」は恋人の振りをする男女の恋、「The Viscount Who Loved Me」はじゃじゃ馬慣らしとテーマがあり、それに沿って物語が進みましたが、本作はシンデレラがテーマ。
伯爵家の庶子として生まれたソフィー・ベケット(Sophie Beckett)は、父親の再婚で出来た継母と女兄弟から虐待を受けて育つ中、忍び込んだパーティーで王子様に見初められる、という王道のラブストーリでした。
正直、「きゃんきゃぁん」とときめきを呟きながら読み進めました。
今回の恋の相手はブリジャートン家第二子で次男のベネディクト(Benedict)。
両親の愛情たっぷりな環境で育つも、子だくさんで有名なブリジャートン家に生まれ、常に「ブリジャートン家の子」「二番目」としてみなされ、ベネディクトは自分自身が見いだせずに悶々とした状態でいます。
ドラマを思い出すと、配役がぴったりだなと感心しました。
私はまだシーズン1しか見ていないのですが、ベネディクトのエピソードは目立ちません。
そして原作も、前の二作で彼は目立った活躍はしていません。
前の二作では、八人兄弟の年上組4人の中で、一番目立たないのがベネディクトで、存在感のあるアンソニー、コリン、ダフネに食われている印象でした。
そうね、ダフネの恋路に口出ししまくったのはアンソニーでしたし(相手がアンソニーの親友だから尚更)、アンソニーが恋に落ちるパル・マルというスポーツに一緒に参加したのはコリンとダフネで、ベネディクトも登場しますけど重要なエピソードにはいなかった。
そりゃ印象薄いわ、私の中で。
そんなベネディクトとソフィーは、「自分の存在とは」という問いかけを各々にしながら、シンデレラ・ストーリーさながらに恋に落ちていきます。
もうね、女子好きだわ!と悶絶する物語でした。
ベネディクトに名前を明かさずに去っていったソフィーを、ベネディクトは二年間思い続けるし、いざ再会した時はベネディクトはソフィーのことをメイドとしか認識しないからソフィーは安堵と悲しみが入り混じって泣きじゃくるし。
惹かれていくことを止められない二人。
でも、身分を越える覚悟が出来ない。
この作品のタイトル「An Offer from a Gentleman」は、一人の紳士からの申し出という意味を持ちますが、深読みするとOfferは結構たくさん出てきます。
(もちろん紳士はベネディクトを指します)
翻訳版のタイトルにもなったダンスのオファーはもちろん、ソフィーへの仕事のオファー、そしてベネディクトの愛人になるオファー。
最後の愛人ですが、ベネディクトはソフィーの出自を知らず彼女をメイドとしてみているため、このようなオファーになってしまうのです。
彼女のことは好きだから恋人になりたい。
でも身分を考えると彼女とは結婚は出来ない。
ソフィーも自身の境遇を考えると中々素直にオファーへ手を出せない。
自分の母は伯爵家のメイドで、庶子として自分を生み遺した。
ベネディクトの愛人になり、同じように庶子を生み、その境遇の苦しみを自身の子供には味わってもらいたくない。
だからといって、正式に公表されていない出自を言えない。
そんな葛藤を読み進めながら、最後はやはり二人は自分達の課題に向き合うことになりますが、いかにも小説らしいラストで締めくくられました。
何かを達成するには自分の努力が必要になりますが、運を掴むことも努力の一つ。
チャンスの方からこちらにやってきたら、怖気ずに掴んでみましょう。
ソフィーはいわゆる棚ぼたなチャンスを掴んで、そしてベネディクトと出会うのです。
純粋にシンデレラ・ストーリーを楽しみたい方にはぴったりな作品となっています。
フィクションらしいとはいえ、きゅんきゅんすること間違いなしです。

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