Author: Nicholas Sparks
翻訳版の有無: なし
映像化: なし
英語レベル: Advanced(一年に一冊洋書を読破出来るレベル)
この本を読むと、「思いがけない人との出会いが人生を変えることがあると知る」というベネフィットを得られます。
大好きなNicholas Sparks作品の最新作です。
洋書を購入する時、私は電子書籍を購入するのですが、彼の作品だけは紙媒体でほしいので、日本の書店に入荷するのを待っているのですが(輸送費などの関係)、先日東京の大きな書店で取り扱っているのを確認し、購入してきました。
都会はなんでも揃っていますね 笑
さて、スパークス氏の作品は、とりとめのない、どこにでもいる普通の人達が物語の主根工になることが多く、また「何度この人ばかりこんな目に遭うの?」という過去を背負っている人も登場します。
そして最近の傾向として、物語を回す三人の人物が登場します。
二人がやがてカップルになり、残りの一人は一見関係がないようにして、このカップルと密接に関わる展開になります。
本作でそれに該当するのがTanner(タナー)、Kaitlyn(ケイトリン)、Jasper(ジャスパー)です。
軍での従事経験があるタナーは、祖母が死の間際に放った、長年語られることがなかった父親の情報に心を掴まれます。
軍人時代の友人と再会する時間を儲けながら、各所を巡る旅の途中でノースカロライナ州にたどり着きます。
この地で父親に関する情報収集をするのですが、夜に店の駐車場で若者が口論するところをタナーが助けます。
その若者の一人がキャリー(Carey)で、知り合いの男性と言い合いになっていたのですが、この男性から逃げられたものの動揺するキャリーは、自分が運転する車をタナーの車にぶつけてしまいます。
どちらも無傷でしたが、タナーの車は破損がひどい状態に。
被害を受けたとはいえ、何があったか知るタナーは動揺するキャリーを宥め、彼女の車で家まで送り届けます。
そこでタナーが出会ったのが、キャリーの母親のケイトリンでした。
ケイトリンは、キャリーと彼女の弟ミッチ(Mitch)を育てるシングルマザーで、医者です。
当初は夜に、事故の被害者とはいえ、自身の娘を送り届けるタナーを警戒するケイトリンですが、事故を起こしたのは自分の娘だという事実から、あまりタナーを無下にできません。
車の修繕について関わるうちに、ケイトリンはやがてタナーと打ち解けて、互いに惹かれていくようになります。
ミッチはタナーに懐くし、当初は懐疑的なキャリーも、やがてタナーに心を開きます。
時を同じく、ケイトリン宅の近所に住む老人のジャスパーは、悲しい事故から家族を一気に亡くし、年老いた犬と生活をしていました。
時々ミッチに木を彫ることを教えていますが、それ以外は基本的に一人です。
そんな彼は、ある日ローカルニュースで白いオス鹿が森に現れたという情報を仕入れます。
折しも時期は、ターキー(七面鳥)の狩りの前。
鹿狩りに適している時期です。
ジャスパーはこの白いオス鹿に対し、まるで神の具現のような、守るべき存在として固執し、狩りをしに森に入るハンター達を攪乱する活動をします。
中でも彼は、森の中で出会った若い二人組から白いオス鹿を守ろうと必死になります。
この若い二人組は、街の権力者の息子達で、社会的弱者のジャスパーの目にはいかにも悪者のように映るのです。
父親探しと称しノースカロライナ州に留まるタナー、やがて旅を再開することがわかりながらもタナーに惹かれるケイトリン、深い悲しみの人生の中で白いオス鹿を守るのが使命と息巻くジャスパーが関わる時、想像を超える人間関係がそこに生まれるのです。
と前振りしましたが、これまでスパークス氏の作品を読んできた読者の私としては、事の顛末が予想できましたが、たとえありきたりな展開でもドラマチックに仕上げるのが彼の技。
その土地に留まっていたケイトリンやジャスパーには、物事を変化させる力はありません。
やはりタナーが、ふらりとノースカロライナ州を訪れたことで物事が変化するのです。
それは、タナーとケイトリンの恋仲でもあり、ジャスパーとの関わりでもあり。
この「ふらりと立ち寄った」ということがなければ、人間関係が動きませんでした。
私達にもこういう経験があると思いますが、意図せず行ったことが大きな変化をもたらす場合があります。
私の場合、たまたま同じ時間に昇降口に居合わせた同級生と挨拶をしたところから友情が始まり、二十年来の付き合いをしています。
これもたまたまです。
物事を動かしたのはタナーでしたが、ケイトリンやジャスパーとの関りにより、彼の放浪する人生観が変わったのも言うまでもありません。

Comentarios