Author: Kate DiCamillo
翻訳版の有無: なし
映像化: あり。「きいてほしいの、あたしのこと-ウィン・ディキシーのいた夏-」
英語レベル: Basic(英語に一日3分向き合えるレベル)
この本を読むと、「子供だからって侮ってはいけないと改めて気づかされる」というベネフィットを得られます。
海外滞在中に私達家族がお世話になったスーパーマーケットの一つに、ウィン・ディキシー(Winn-Dixie)というお店があります。
大手ウォルマート(Walmart)やターゲット(Target)に比べるとローカルな小売り店かもしれませんが、母は比較的ウィン・ディキシー推しでした。
理由は忘れましたが。
そんなお店の名前が作品のタイトルに使われている映画を見つけて、鑑賞したのがこの洋書とのお付き合いの始まり。
洋書が存在することを知ったのは随分後になり、今回思い切って挑戦しました。
本作の主人公は、10歳になる少女オパール(India Opal Buloni)。
牧師の父親とアメリカ、フロリダ州に引っ越したある日、小売り店のウィン・ディキシーに野良犬が入ってきた場面に出くわします。
野良犬に惹かれたオパールは、迷惑がる従業員に対し、咄嗟に自分がこの犬の飼い主だと名乗り、そのまま家に連れ帰ることに。
トレーラーハウスの住宅を牛耳るアルフレッドさんに睨まれながらも、この野良犬ウィン・ディシーを飼い始めることになります。
不思議なことに、ウィン・ディシーを飼い始めたお蔭でオパールは人に囲まれて、自身が抱く孤独から少しずつ癒されることになります。
本作品は、主人公が10歳の子供なので子供向け作品ですが、年齢に対し彼女が捉える世界は非常にしっかりしていて、10歳の子供だからと侮れないと実感させられます。
オパールは、自分が3歳の時に母親が家を出て行ってしまい、以来父親に育てられますが、父親のバローニ氏は妻への未練から己の殻に閉じこもってしまいます。
職は何とか保てていますが、子供への接し方がうまくいかず、オパールは寂しい思いをします。
その希薄な親子関係のために、オパールは父への呼びかけは"Daddy"である一方、頭の中で父のことを"the preacher"と呼びかけます。
ただ、希薄な親子関係であるけれど、父親のバローニ氏がオパールを邪険にするとか、殻に閉じこもって育児放棄するとかというのではなく、大事な時にはきちんと娘に向き合います。
例えばウィン・ディキシーを飼うことを許す時。
野良犬は飼えない、トレーラーハウスを牛耳るアルフレッドさんに怒られるから、などという理由を使って頭ごなしに否定しません。
オパールがウィン・ディキシーを家に連れてきた背景をしっかり聴き、双方納得したうえで飼うことを許可します。
このシーンは親子の愛情たっぷり、といった情景だとは感じませんでしたが、少なくともバローニ氏は変に娘を10歳の子供扱いするのではなく、一人の人間として丁寧に接しているように感じました。
娘に対し、丁寧な説明をすれば理解出来るという、信頼があるからだと思います。
さて、オパールとウィン・ディキシーのお話ですが、犬を飼うことで人の目を引きオパールの人間関係は広がりますが、関わる人達は多種多様。
子一人で時間を過ごせる図書館を訪れたオパールは、その図書館の所有者一族で司書のフラニーさん(Miss Franny Block)と知り合います。
明確な年齢は記されていませんでしたが、おそらく60歳を過ぎています。
彼女の繋がりで(図書館を含む)、バローニ氏の勤め先でオパールが通う教会の参列者アマンダやダンラップとスティービー兄弟、スイーティー・パイといった子供達、ウィン・ディキシーの首輪と散歩紐の購入の代わりに店の手伝いをすると交渉した店員のオーティス、そして魔女と揶揄されるグロリア・ダンプといった人達と出会います。
子供達との交流の前に、大人のフラニーさん、オーティス、グロリアと仲を深めるあたり、オパールはやけに子供っぽくないというか、不用意に大人になった子供なのだと感じさせられます。
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