Book Report: Bend It Like Beckham
Author: Narinder Dhami
翻訳版の有無: あり「ベッカムに恋して」
映像化: あり。「ベッカムに恋して」
英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了できるレベル)
「実現の難しさに限らず、まずは第一歩を踏み出せ!」
ここ数日、賑わいがあったのはサッカーのFIFAワールドカップ2026の話題ですが、申し訳ないくらいチェックしておらず 笑
かつての上司は、スポーツが好きなのとお客様との会話のネタにスポーツはしっかり押さえていたのですが、職場が変わり、仕事でそういう会話をしなくなったら自分のアンテナが全く反応しなくなりました 笑
興味・関心って、大事ですね。
そんなサッカーで知名度を上げた選手は様々いますが、私が青春時代に足を踏み入れる段階の時に有名になったのは、ベッカム選手(年齢がばれる 笑)。
著名人の名前が書籍や映像作品になったもので、ぱっと思い浮かぶのが、やっぱり本作「Bend It Like Beckham」。
サッカーに関連する作品なのだと読む前から予想出来ますが、深堀すると、主人公が当時の世の中で求められたことと、自分がやりたいと思うことの間で悩んだ様子がうかがえます。
女性であること、今自分が生活する国で移民の立場にあること、自国で大切にされている価値観など、自分が情熱を持って打ち込むものを大切にすると反発に合う様子は、主人公にとって大きな壁として現れるものです。
主人公のジェス(Jesminder Bhamra)はインドをルーツに持つ女性で、イギリスに住む高校生。
サッカーを愛し、ベッカム選手に憧れ、彼のような選手になれたらと、自身の将来にサッカーを取り入れたいと考えていますが、インドをルーツに持つ彼女は、高校卒業後に大学へ進学し弁護士(solicitor)の道へ進むよう両親から期待をかけられています。
個人の意思より、家や祖国への恩返しをすることを善行として捉えるお国柄で、ジェスは自分の将来が決められてしまっていることに悩み抜きます。
(その国がどうこう、という私の意見を述べているのではなく、そういう価値観があると読み進めていただけると幸いです。)
彼女の姉ピンキー(Pinky)は、両親の目を盗みながらも愛を育んだ交際相手ティートゥ(Teetu)と結婚が決まっており、図らずしも親の期待に応えることになります。
家庭に入るという形で親の期待に応える姉とは対照的に、自身の夢を叶えようとすると親の期待を裏切ることになるジェスは、苦しい立場にいます。
そんなジェスですが、非凡な才能は女子サッカーに所属するジュールズ(Juliette “Jules” Paxton)の目に留まり、ジェスも両親の目を盗んで、女子サッカーチームに加入しサッカーをすることに。
両親に隠れて自分の情熱を注ぐこと、また、所属するサッカーチームのコーチのジョー(Joe)を挟み、ジュールズとの三角関係にジェスは悩むことになりますが、彼女の長い間好きだったサッカーをする道が開かれていく様子に、読者はジェスがとにかく充実した毎日を送る様子に共感出来ることになると思います。
ジェス本人がサッカーに対してどう向き合うかというところがポイントになってきますが、実は彼女の姉ピンキーの行動も読者に訴えかけます。
二人とも共通して、欲しいものに対して行動を起こしています。
冒頭に書いたように、ピンキーは本作の冒頭で既に結婚することが決まっていて、その相手は彼女が両親の目を盗んで愛を育んだ相手でした。
「結婚すること」は、本作が出版された2002年の時分に限らず、それから20年以上経った今でも社会的地位の変化として、人々から一目置かれる事象です。
パートナーシップにいろいろな形があると、今の時代では認められるようになりましたが、2002年は「結婚していること」が「結婚していないこと」や「事実婚」に比べてより優位な社会的立場にあったと思います。
そうすると、どんな背景があっても、結婚相手がいる姉ピンキーは、当時の世で言う親孝行な子供だったのかと思います。
ただ、「親の目を盗んで愛を育んだ」という点では、ピンキーも随分行動派だったし、やんちゃをしたと思います。
何もせず、「親が認めてくれるのを待っていれば、いずれ恋しいあの人と結婚できるだろう」と優等生ぶってぼんやり待つのではなく、誰かから後ろ指を指されたとしても、隠れてでも愛する人と愛を育むという行動を起こして、ピンキーは愛するティートゥと結婚へ結びつけたのです。
そういう意味では、ピンキーは自分の力で、愛する人と結婚する夢を叶えた逞しい女性でした。
当時まだまだ結婚=女性の幸せと思う人が多かった時代に、恋ではなく仕事に情熱を注いだジェスは、少し変わり者に映ったかもしれません。
更に、どんな背景があれ親の期待に応えた姉と違い、自分がやりたいことを貫こうとするジェスは、自身の行動に罪悪感を抱いているようで、本作を読み進めると読者側も少し心が痛みます。
彼女が作中、親に反対されるたびにサッカーをすることを諦めようとするのですが、そのたびに読者(この場合、私)は、「迷うのはわかる!でも、あなたの人生だよ!」と思わず叫んでしまいたくなります。
ジェスは、彼女の才能を見出した同じ女子サッカーチームのジュールズや、コーチのジョーのサポートを受け、自分が本当に情熱を持つこと、やりがいについて向き合っていきます。
両親の、彼らの祖国のルーツを大事にする心は尊敬出来る姿勢ですが、現代の2026年は、自分がどうしたいかをより問いかけられ、より実現しやすい時代になりました。
本作を読み進めれば、ジェスの父も彼女と同じように、両親から求められた理想像と別に彼自身が情熱を傾けるものがあり、様々な理由で諦めざるを得なかった場面に出くわし、親として子供を苦しみ・葛藤から守りたいという気持ちを読み取ることが出来ますが、やはり最後は「自分はどうしたいか」。
そして、「やりたいことに対して、最初の一歩を踏み出すことが出来るか」が問われます。
全体的に明るい雰囲気の作品ですが、読者へ訴えるテーマは、将来の夢や親子の間にある未来の姿の乖離など、深いものが隠れています。


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