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Book Report: The Wrong Sister

8月30日
読了時間: 5分

Author: Claire Douglas

翻訳版の有無: なし

映像化: なし

英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了できるレベル)

「身近な人と比べ出したら用心を。」


本作は、一つ前に取り上げた「House Swap」に似て期間限定の家の交換(ハウススワップ)をする設定なのですが、「House Swap」と異なり、本作にはサスペンス要素が含まれていました。

そのため、どきどきしながら読書を進めたのですが、かえってエッセンスが多過ぎて、ちょっと交通整理が必要な物語だったなと思いました。

家族間の摩擦が発生するのは「House Swap」も本作も、どちらの物語にも共通していて、特に兄弟という近しい者同士が持つ経済格差や生活環境に明らかな違いがあるからこそ、隣の芝生は青く見えるのだなと思わされました。

本作にサスペンス要素が含まれていた分、兄弟間で抱く憧れや劣等感や、相手の心理がどうなっていたのかよりダークに浮かび上がっていました。


歯医者の受付で働くタシャ(Tasha/Natasha Pritchard)は、学生時代に出会ったアーロン(Aaron)と結婚し、双子の姉妹(Elsie and Flossie)を授かり、イギリス・ブリストルに近い小さな町で幸せな家庭を築いている。

でもこのところ、生活に疲れて、アーロンとの夫婦関係に悩んでいるところ。

そんな状態の彼女の元に姉夫婦が訪ねてきます。

姉で生化学者のアリスと彼女の夫で実業家のカイル(Alice and Kyle Campbell)はいわゆるパワーカップルで、ヴェニスにある彼女達の住まいと提供し、タシャとアーロンに夫婦の時間を過ごしてもらうことにしました。

アリスとカイルは代わりに、姪二人の面倒をみることになりますが、いわゆる「fun uncle/fun aunt」の立場を楽しむ夫婦は、普段子供と触れ合う機会がないため楽しそう。

最初は、姉とはいえ幼い子供達を預けて家を留守にすることに躊躇うタシャでしたが、結局はアリス達の提案を受け入れ、ハウススワップの当日を迎えます。

実際にヴェニスに到着したタシャとアーロンは、異国の雰囲気を楽しむことはもちろん、アリスとカイル夫婦の豪華な家に期間限定で過ごせることに浮足立ちます。

しかし、いかにもアットフォームな空気はここで終わり。

ヴェニスでロマンチックに過ごすタシャとアーロンの時間は、留守を預かるアリスとカイルが家で襲われたという一報を受けたことで、終わりを告げます。

急いで帰国した二人は、アリスが重傷を負い、カイルが亡くなったことを知ります。

子供達が無事だったことには安堵するタシャですが、なぜ自分達ばかりこんな目に遭うのかと苦悩します。

というのも、実はタシャとアリスには、末っ子のホリー(Holly)という妹がいたのですが、母ジャネット(Jeanette)がほんの数分、買い物中に目を離した隙に誘拐されるという事件に見舞われているのです。

残念ながら、ホリーのその後は誰にもわからず未解決。

その事件のせいか、母は連絡こそ取り合うものの姉妹と疎遠になり、更にアリスも自身の子供を持つことを望んでいない。

(事件が影響しているというはっきりした描写はなく、タシャ独自の推測でしたが、アリスもカイルも子供を望む描写はありませんでした。)

ジャネット不在の穴埋めをするのが、アーロンの母ヴィヴ(Vivian)なのですが、タシャと仲が良く、タシャには頼りになる存在です。

ヴィヴが姉御肌っぽく描かれるですが、彼女と反りが合わないのかジャネットはヴィヴがいる時はあまりタシャ一家のところにいたくないようですし、物語を読み進めると、ホリーが誘拐された時、買い物先でジャネットは同じく買い物中のヴィヴが彼女の末息子と顔を合わせているため、おそらくジャネットはヴィヴに会うと事件の日を思い出してしまい嫌な気持ちになるのだと思います。


さて、カイル襲撃事件やホリー誘拐事件といったワードの存在感が強いので、事件そのものに注目しがちですが、横に逸れれば浮き彫りになるのがそれぞれの人間関係で比べっこが発生すること。

タシャとアリス姉妹は、明らかに結婚生活の格差。

愛するパートナーがいて、子供がいて、家があって、という誰の目にも幸せに映るタシャですが、彼女達は経済的な余裕がない。

姉夫婦はフットワーク軽く、ハウススワップを申し出るので、タシャがどうしても経済格差を感じてしまうのは仕方のないこと。

経済的な余裕は従事する職業に紐づくもので、タシャは、自分と違い仕事で活躍するアリスの聡明さにも無意識に格差を感じるのです。

身近な人と比べる描写は、アリスとタシャ姉妹だけではなく、先に挙げたジャネットも行っていました。

娘夫婦の近くで生活していないため仕方のないことですが、娘タシャが義母ヴィヴを頼りにする様子は、タシャの実母であるジャネットの葛藤を生みます。

もっと娘を助けてあげたいのに、何もしてあげられない。

でも自分の生活を変えられない。

当たり前ですが、末娘ホリーが誘拐された事実は、ジャネットの心を蝕んだのです。


身近な人と比べてしまうのはよくあること。

でも、隣の芝生を見始めたらきりがないし、そして本当に大切なものが何か見失うとうまくいかなくなるものです。

大切なものは何かということを問いかけられ、タシャもアリスも決断を迫られるというのが物語の後半で描かれます。


誰かと比べてしまうことが物語の横軸だとすると、サスペンス要素の縦軸に隠された事柄が本作のタイトル「The Wrong Sister」に隠されていました。

最初、wrong sisterだから、タシャなりアリスなり、血縁に繋がりがないとかが出てくるのかなと思いましたが、私の予想ははずれ。

Wrongは、不正の、良くない、誤った、間違った、という意味を持つ単語ですが、そういった行いをした姉妹達が幾人か登場し、本作のタイトルは彼女達を指していました。

心が不安定になることを恐れ、自分の心の平穏を保つために、wrongな行いをした人。

自分の生活を守るためにwrongな行いをした人。

明らかに罪な行いだとわかることを隠し、相手の心の平和を優先するためwrongな行いをした人。

様々なwrongが登場する作品で、「相手の心情を思うと・・・」という言葉の裏側の事情を考えさせられる作品でした。

どれも、身近な人と自分を比べたからこそ起きることなのですよね。



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