top of page

Book Report: House Swap

8月29日
読了時間: 5分

Author: Olivia Beirne

翻訳版の有無: なし

映像化: なし

英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了できるレベル)

「見えるものが事実とは限らない」


2025年以降、私を取り巻く環境ががらりと変わったことで、身近な家族関係も2024年以前の関係と比べて変わりました。

未来に向かって変わったので、いい形になっていると思いますが、変化を受けて、これまで目を瞑ってきた違和感も出てきたのも確か。

そういうものからは、逃げてもいいし、向き合ってもいいし。

とりあえず、私は物理的に家族と離れたので、一定の距離を保つことが出来ています。

少なくともあと20年は、このくらいの距離があっていいと思っている 笑


さて、家族と距離が出来たという点において、本作にも登場してきます。

ある出来事をきっかけに、一度出来た家族間の距離が縮まり、隠された小さな秘密が浮き彫りになる物語です。

ケイティーとレイチェル(Katy and Rachel Dower)は、イギリス出身の双子の姉妹。

ごく一般の家庭に育った二人には、癒えない心の傷がありました。

父の不倫をきっかけに両親は不仲で、これまで家族間を繋いでくれた同居する祖母ヴァイオレット(Violet)の死をきっかけに、家族はばらばらに。

離婚を経て父は出ていき、母は新たなパートナーとの間に家庭を築き始め、残されたケイティーとレイチェルも別々の道へ。

子供時代のつらい思い出が残る故郷に残りたくないとしたケイティーは、都会のロンドンへ単身出て、敏腕上司フィオナ(Fiona Cunningham)に就きイベントを企画・運営する会社へ就職します。

故郷に残りたがったレイチェルは、ケイティーと別れて一人で実家を守り、のちにダニーという男性と結婚します。

表面上は、都会で奮闘する一方の姉妹と故郷で家庭を作る他方の姉妹、という違いがあるだけですが、ケイティーは心の傷を負う原因となった故郷から離れ、レイチェルはばらばらになった家族の名残を惜しむように実家にしがみつきます。

誕生日にメッセージカードを送り合うことや、時々電子メールでやりとりすることが姉妹を繋げる唯一のツールでした。

ようは、やり取りはあっても疎遠になった二人なので、お互いの生活に関する確たる情報が少ないため、どんな毎日を送っているかは想像するしかない状態でしたが、お互いが「レイチェルは・ケイティーは、絵に描いたような素敵な生活を送っているんだろうな」と思い描いていました。

そんなある日、レイチェルがケイティーに、家を不在にするから飼い犬のブルーノを見てほしいと、ペットシッターのお願いをします。

それが、本作の物語が始まる六か月前のことでした。

レイチェルの夫ダニーはクルーズ船で勤務するため、長い間家を空けることが多く、レイチェルが気軽に頼めるのは、ケイティーだけ。

最初は大きな葛藤があったケイティーですが、レイチェルの依頼を受け入れることに。

そしてそれがきっかけで、ケイティーはレイチェル夫妻が住む実家に戻って数日を過ごすことに。

時同じくしてレイチェルも、ケイティーの家に滞在するという、ハウススワップをすることに。

家の主が不在の中、姉妹がそれぞれの家の空気、住まいの佇まいを感じ、ケイティーが仕事でうまくいっていないこと、レイチェルの夫婦関係がうまくいっていないことをそれぞれが悟るのです。


本作とは全く関係がありませんが、見知らぬ女性同士が短い期間でそれぞれの家を交換し、そこで出会った人達との心温まる交流を描いた「ホリデイ」という作品がありました。

あれは然るべき機関に登録し、交換する家や利用者を管理していたため成立した設定でしたが、正直、「よく知らない人を家に入れられるな」と思ったものでした。

映画自体は面白かったし、心が温まりましたが、現実的に考えると、家の交換は勇気がいる行為だと思います。


本作は姉妹というある程度家族間での信頼関係が築かれた人同士の家の交換ですが、それでもすごいな、ケイティーもレイチェルも。

だって、お互いが抱えていた秘密がばれちゃうんだもの。

いつか、どこかのタイミングでレイチェルに・ケイティーに伝えようとしていた秘密は、家の交換をきっかけに明るみになります。

仕事に躓いていたことを打ち明けられなかったケイティーの秘密は、彼女が住む家とその場所が示していたので、レイチェルが訪れた時から結構すぐに明らかになりました。

一人都会で過ごすケイティーを思うと、レイチェルも甲斐甲斐しく手を動かし、ケイティーが家に戻った時に心地よく過ごせるように心を配ります。

レイチェルは料理が好きなので、食品のストックを作ってあげるのですが、その様子は姉妹でもあり、母親のようでもありました。

レイチェルが打ち明けられなかった、彼女の夫婦関係の不和は、ケイティーが実家に飾られた写真のうち、レイチェルとダニーの写真を見てうすうす感じ取ります。

レイチェルが抱える秘密は、ケイティーが想像したより大きく、ちょっと深刻なので、覚悟が決まるまでレイチェルの心が揺れ動くシーンがたくさん出てきますが、一旦覚悟が決まると芯の強いレイチェルが登場するので、彼女の心の変化を見るシーンも楽しめます。

ハウススワップを通じて、レイチェルは始終、夫婦間の不和をどうするか悩むのですが、一方のケイティーは思わぬ人と再会し、その人の隣で仕事の不調以上に過去の傷と向き合うことになり、しんどい時間を過ごします。

二人とも周囲の人に恵まれているのですが、私は特に、ハウススワップ後に、実家からロンドンへ戻ったケイティーを上司フィオナが迎えるやり取りが好きです。

やはり上に立つ人だからか、フィオナは自身の部下達のうち、ケイティーがチームから浮いていることに気づいていて、ハウススワップ後に戻った、肩の力が抜けたケイティーの様子にホッとするシーンが出てきます。

やっぱり、わかるんだよな、人の心の変化とか、言葉にしていない本当に言いたいこととか。


本作のテーマは、表に見えることだけで人のことを判断してはいけないし、見えるものが事実とは限らないということ。

ケイティーとレイチェルが、一番近いはずの家族に言えない秘密を通じて、過去に起きた家族間で出来た傷と向き合う姿には、勇気を与えてもらえました。



コメント


©2021 by 洋書Lovers普及委員会。Wix.com で作成されました。

bottom of page