Book Report: Women of the Tudor Court
Author: Shania Thorne
翻訳版の有無: なし
映像化: なし
英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了できるレベル)
*このレポートは、まとめて以下の8冊をカバーします。
・In Anne's Shadow
・Bessie's Gift
・The Queen Who Walked Away
・The Unprotected Queen
・The Queen's Defiance
・The Quiet Queen
・Henry's Last Queen
・The Tudor Queen's Perseverance
「役割に翻弄されながらも、必死に全うしようとした。その健気さに胸を打たれる。」
私が大好きな歴史舞台の一つがイギリスのテューダー朝。
以前にフィリッパ・グレゴリー氏の「ブーリン家の姉妹」(The Other Boleyn Girl by Philippa Gregory)を読了して、結構お腹いっぱいになったはずなのに、この舞台設定の物語は思わず読んでしまう。
このシリーズにスポットライトが当たるのは、家を守るため、国の平和を守るためというのが心の葛藤の根底にあり、男の世継ぎを必死に求めたヘンリー八世と、その彼に翻弄された六人の王妃達と、彼の有名な愛人二人。
ヘンリー八世が世継ぎを得るため、王妃を六人迎え入れたことは有名なので、王妃六人の存在は知っていましたが、この愛人にあたる人って誰なんだろう、というのが率直な疑問になるかと思います。
で、読んでみてですが、もうなんか、うん、当時の世の中で国家を守るって大変なんだな、と思ったのが率直なところ。
それから、八人の女性達(厳密にはそれ以上の女性達)がヘンリー八世に人生を翻弄されたと思うと、なんだか気の毒。
一貫して言えるのは、それぞれ求められた役割を全うしようとひたすら努力しただけ。
努力が報われないのがつらいし、結果がついてきても、そのメリットを享受できず、辛い所だけ経験して一生を終えてしまう人もいた。
理不尽!
人生いっぱいの労力を使ったのに、ヘンリー八世の後を継いで国を反映させたのが、彼の娘エリザベス一世だったというのは、世の中の皮肉だとも思います。
更に彼の子供達は誰一人子供を残さなかったため、ヘンリー八世の直系は断絶しました。
これもかなり皮肉的な流れ。
このシリーズは短編なので、この時代背景の作品に初めて挑戦する方でも気軽に楽しめるかも。
ヘンリー八世に所縁のある女性達が主人公となって、シリーズ作品が刊行されていますが、政治家、国のトップとしてのヘンリー八世を見ると・・・
財政難の国政の舵取りや、フランスやスコットランドなどの近隣の脅威と対峙する手腕があります。
父であるヘンリー七世は、ランカスター家とヨーク家の争いを経て王位に就いた人で、先代から続く情勢の不安定さがヘンリー八世の統治開始の際にも暗く影響を与えていました。
また、本来なら彼の兄であるアーサー王子が王位を継ぐはずでしたが、若くして亡くなってしまい、ヘンリー八世が即位したという背景もあり、死の不安が常に近くにあった人でした。
当のヘンリー八世は、多くの作品で、大柄で健康的な偉丈夫な人物として描かれるので、彼自身の健康問題はあまり心配されなかったのでしょうけれども、世継ぎを得るまでの道のりが長く、どの人物にとってもつらかった。
各文献で、ヘンリー八世との間に子供が出来たとされて、描かれるのは五人の女性。
最初の王妃であるキャサリン・オブ・アラゴン。
彼女の地位を脅かし、二番目の王妃になったアン・ブーリン。
新たな御代を作る期待をかけられた、三番目の王妃ジェーン・シーモア。
三人の王妃達が交代する間に出産を経験した、ベッシー・ブラントとメアリー・ブーリン。
ベッシー・ブラントは、ヘンリー八世から唯一、彼の非嫡出子を認められた女性で、キャサリン・オブ・アラゴンが子供を亡くす深い悲しみの中にいる最中、激しく揺さぶった描写が出てきます。
メアリー・ブーリンは、姉妹であるアン・ブーリンより先にヘンリー八世と関係があり、自身も結婚を経験していたため、生まれた子供はどちらの子供かあまりはっきりしていないようですが、ヘンリー八世の非嫡出子を示唆しています。
四番目以降の王妃達との間にも、子供を得ることを望んだヘンリー八世でしたが、自身の健康問題に課題があり、以後子供には恵まれなかったようです。
それにしても、どの人にとっても運命の過酷さを感じます。
特に王妃になった女性達は、アン・ブーリンからジェーン・シーモアへの王妃交代劇を知っているので、王との間に子供を授かることに対して大きなプレッシャーを感じていたことでしょう。
子供を授かるという、非常にセンシティブなことに対し、王妃の役割だからと責任を求められる。
相手がいることなので、簡単に取り扱うことも出来ないし、何より王の期待に背いたら自分の命が脅かされる。
ひどいプレッシャーだったかと思います。
女性達にスポットライトがあたりがちですが、プレッシャーはヘンリー八世側も当然受けていました。
敵国から自国を守るために、自身の力を見せつけなければならない。
自分の後を継ぐ人も、パワーがあるということを表明する必要もある。
女性側からすれば、健康な子供を出産出来ないというのは相当つらいことですが、ヘンリー八世も、女性に対し健康な子供を授けられない、というのもつらいことだったと思います。
地位と責任の大きい人だから、相当なプレッシャーだったかも。
「出来ない」と簡単に言えてしまえばいいですが、一国の主がそんなこと出来るはずもなく。
とにかく役割を全うすることに真剣に向き合ったのだろうとは思いますが、後世で、こんなに相手を変えて、自国の情勢まで変えたのに、育った子供のうち国の繁栄に力を注いだのはヘンリー八世の娘エリザベス一世だった、というところは何度考えても皮肉としか言いようがありません。
それぞれが、生きるため、その地位のために必死だったでしょう。
逃げることなんて出来ない中で、とにかく役割を全うしようとした人たちだからこそ、惹かれる人物、惹かれる王朝なのかもしれません。

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