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執筆者の写真Masumi

Book Report: Breaking Gravity

Author: Autum Grey

翻訳版の有無: なし

映像化: なし

英語レベル: Advanced(一年に一冊洋書を読破出来るレベル)


この本を読むと、「心の準備が出来ていなくても何かは始められる」というベネフィットを得られます。


皆さんは、「準備が出来てから自分のやりたいことを実行する」ではなく、「自分のやりたいことを取り合えずやってみる」のがいい、というアドバイスを聞いたことはありますか?


これに類似する内容のものを、口頭ではなく、書籍など見える化された状態で私が初めて触れたのは、仕事の進め方に関する記事を読んだ時でした。

80%以上という高い数値での完成度で期限ぎりぎりに上司へ提出するのではなく、65%レベルの成果物を早い段階で上司に第一弾ドラフトとして提出し、締切までに何度もフィードバックを受けて

成果物の精度向上のためブラッシュアップを繰り返す方が良い、という内容の記事が書かれていました。

その後、細谷功さん著作「地頭力を鍛える」を読んだ時にも似たアドバイスが書かれていたのですが、私はどちらの作品に触れた時も、自分の仕事の仕方を振り返る良いきっかけになったなと感じたものです。

 

さて、これらの書籍と今回紹介する洋書作品の共通点は、準備が出来ているかどうか。

準備が出来てから●●する、というマインドではなく、気づいたら物事が進んでいたという物語の展開が本作で読み取ることができます。

 

このBreaking Gravityの主人公は、イーロン(Elon Blake)という女性。

前作Fall Back Skywardのヒロインであるノア(エレノアEleanorのNorからくる)の妹でチェロ奏者の大学生です。

彼女は二人の姉ノアとエリーズ(Elise)同様、支配的な父親の仕打ちに耐えて生活してきました。

大学生の今、家から父親がいなくなり、かつ自分も実家を離れたことで自立はしますが、

父親のせいで心に支障をきたし頼りにならない母親の代わりに精神的・金銭的な支えになってくれたノアをがっかりさせたくないという思いが強く占めています。

そういったアンバランスさはパートナーシップにも色濃く出ていて、幼少期の隣人でキャラウェイ家の三兄弟の末っ子であるニック(Nick Callaway)とは良き友達ですが、彼の自分に対する友人以上の感情に応えられず、また過去に付き合っていた元カレのリック(Rick)も暴力的で接近禁止令まで出されるような人。

次の恋愛にはまだ心の準備が出来ていないイーロン。


ですが、出会ってしまうんですよね、物語なので 笑

ある日、大学の講義開始前に机に突っ伏して居眠りしてしまったイーロンは、教授に起こされます。

彼は臨時講師として現れたネイト(Nathaniel Rowe)で、偶然にもイーロンが幼い頃から憧れ続けたチェロ奏者でした。

確か八、九歳ほどイーロンよりネイトが年上という設定で、よって決して老いているわけでもないのに彼は第一線を突如退いて教鞭を振るう立場に。

そんなネイトにも、かつての恋人を目の前で失う悲劇的な過去があり、その時の傷が心にも体にも残った状態で今でも乗り越えられずにいます。

今という時間をとにかく一つ一つ積み上げて生きる、という心もちの二人です。

 

心に傷を負った者同士。

それでも、学生と教授という許されない立場での恋愛が、二人の心の準備も整わないまま始まってしまいます。

それはチェロへの情熱と、つらい環境下でも生きようともがく強い力が成す業でもありました。

私たちも似たようなことを経験した、という人がいるはず。

仕事を機に新天地で頑張ろう、と決意したのに全く気に留めていなかった恋愛が思った以上に大恋愛となったり。

家庭に力を注ぐため縁の下の力持ちになろうと思ったら、パートナー側の方が仕事で大変だから、自分が金銭的支柱となったり。

反対のことも経験しているはず。

つまり、AをやってからBをやる、というべきねば論優先の生活です。

両親を説得してから結婚します、とか、貯金額が●●万円を超えたらずっとやりたかった起業をします、とか。

本当にやりたいことを後回しにして、人生が中々始まらないパターン。

前者は自分が意図していない事態が起きた一方で、その流れに乗っちゃうパターン。

本作のイーロンとネイトにしても、本当なら学生として、そして大学教授としての生活を盤石なものにしてから次の恋愛にしたかったはずなのに、心の準備もなく強烈にお互いに引かれていってしまいます。

そしてどちらも、過去の恋愛のトラウマを克服してから関係をスタートさせましょう、とか

学生のイーロンが卒業してから付き合いましょう、とか言っていない。

リスクを負いながらも、お互い惹かれ合う気持ちを大切にして関係を作っていきます。

 

もちろん私たちは、心の声だけ優先するのではなく、情報を集めて吟味し一番いい選択をする必要もあるので、準備できている状態というのは大切です。

例えば新築の家を建てるのに、壁紙のデザインや素材など何も調べず心の声だけを優先して内装を決めれば、ちぐはぐな家になってしまいますよね。

どう生きていくかという、形のないものを決めるのにも準備は必要です。

ですが、準備が出来ていなくとも物事は進められるし、準備していないからこそ都度ネガティブ要素にも向き合っていけるのです。

そんな安心材料を本作から見出すことができたなと思います。




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