Author: Andre Aciman
翻訳版の有無: あり「君の名前で僕を呼んで」
映像化: あり。「君の名前で僕を呼んで」
英語レベル: Advanced寄りのBasic(一日3分英語と向き合えるレベル)
※続編に「Find Me」があります。
この本を読むと、「自分の心を美しく保ちたいと思える」というベネフィットを得られます。
媒体に関係なく同性同士の恋物語に触れたのは、これが初めてではありません。
以前に女性同士の秘密の恋を描いた映画「キャロル」を観たことがあり、あれは主人公のテレーズとキャロルがお互いを思い合う心情と、キャロルが自身の家庭の中で立たされた苦しい立ち位置とで葛藤があり、生活感があるせいかよりどろどろした印象を受けました。
あれはあれで好き。
こちらの本作は、二人の男性が出会い、数年後に一方が家庭を持ちながらも細々と交流を持ちますが、家庭人としての匂いをかもしださない描写から、より人の心情にフォーカスしていると感じました。
教授である父親の元には毎年夏になると学生が助手として訪れる。
イタリアに住むエリオ・パールマン(Elio Perlman)にとってアメリカから訪れた学生オリバーは、父の助手の一人にしか過ぎないはずでしたが、彼の物言いや仕草に目が離せなくなります。
オリバーに対する複雑な感情を持て余し、エリオはまるで苛立ちをごまかすように同郷のマーシア(Marzia)と付き合うように。
オリバーの振舞や彼が付き合う人達、特にシアラ(Chiara)とオリバーが一緒に時間を過ごすことに対し、一喜一憂するエリオですが、オリバーと二人でサイクリングした先で自分の思いをオリバーに打ち明けます。
一度は断りながらもエリオを受け入れるオリバー。
二人が一緒にいられる時間は限られていて、かつ当時は現在ほど同性同士のカップルが受け入れられていない世の中。
オープンに出来ない関係ですが、二人はその恋を大切に保ちます。
一方は純粋にその愛情を保ち続け、もう一方は家庭を持ち表面上は地に足付けた生活をしながら心の奥底にその愛情を秘め続けて。
エリオとオリバーが愛情を示し合う時、まるでゲームのように始まった"call me by your name"ですが、自分の名前を口にしながら想う人は相手であるというロマンチックで複雑なことをします。
愛に生きたエリオは、物語後半やラストでオリバーに対し、「どうか君の名前で僕を呼んで」と声にならない声でオリバーに訴えます。
エリオは自分の名前を口にしながら、ずっとオリバーのことを呼び続けていたんですね。
またオリバーも、家庭を持ち現実を生きる道を選びながらも、心の底にはエリオと育んだ愛情を大事に持ち続けていました。
何だかんだで二人は出会ってから二十年間手紙やe-mailを通じて繋がっているんですよね。
好きな人がいながら、あるいは好きな人との思い出をずっと大切にしながらも、それを表に出すことがはばかられた二人。
同性だからという点が大きいですが、作中でセクシャリティに悩む場面はあまり登場しませんでした。
ですが根底にはその悩みは大きく残っていたと思います。
二人がお互いへの思いを大切にし続けられたのは、実生活とお互いへの想いを切り離していたからではないでしょうか。
生活費とか、税金なんて現実的な事柄を思うのではなく、お互いをどう思うかにフォーカスし、心をピュアに保てる場所にお互いを想い合う感情を残し続けた。
そんな思いがある場所は、心が美しい場所。
そんなことを考えさせられる物語でした。
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