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Book Report: Castle in the Air

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 2023年5月6日
  • 読了時間: 3分

Author: Diana Wynne Jones

翻訳版の有無: あり。「アブダラと空飛ぶ絨毯」

映像化: なし

英語レベル: Advanceレベル寄りのBasic(洋書に一日3分向き合える)


この本を読むと、「思い込みも突き抜ければ現実になる、という言葉を信じられる」というベネフィットを得られます。



Amazonで本作を見つけた時、ハウル・シリーズとして紹介されていたので、前作「ハウルの動く城」と次作「チャーメインと魔法の家」も一緒に購入しました。

そして、ハウル・シリーズなので、前作の主人公ソフィー・ハッターを中心に描かれる物語なのかと思いましたが、別なキャラクターが主人公となり、物語が進みます。

前作インガリーはヨーロッパの雰囲気を感じましたが(ヨーロッパ、行ったことないけど 笑)、本作は中東のイメージ(中東も行ったことないけど)。


アブダラ(Abdullah)は空想好きな青年で、カーペットを露店で売って生活しています。

彼の空想の最たるところが、彼の出自。

アブダラは、自身は盗賊カバル・アクバ(Kabul Aqba)に攫われて長く行方不明になっている王子なのだと空想して楽しんでいます。

そんな出自だからいつかお姫様と結ばれる、なんて夢見がちなことを考えていますが、イメージ力のあるアブダラの空想はクオリティが高い。

また、アブダラが空想に走るのは、ある種の現実逃避のように見えました。

既に亡くなった父親とは仲が良いとはあまり言えず、かつ彼の親戚に引っ掻き回される立場なので、唯一自分でコントロール出来る空想は、アブダラの心のよりどころでもあったのかもしれません。

そういった彼の環境のため、アブダラの空想好きに拍車をかけました。


この空想を表現する単語がcastle in the airで、空想にふけるという意味があります。

まさにアブダラのことを指しているのですね。

物語冒頭すぐに、この表現が出てくるので、なぜタイトルがCastle in the Airなのかすぐに理由がわかります。

アブダラの空想は確かにありえないの一言につきますが、空想が現実になる場面がいくつか出てきて、思ったことが現実になるというのは本当だなと感じさせられました。

個人的には、自分は失踪した王子様だという空想は現実になるのかという点が気になりました。

思いがけない空想が現実化するので、作者のプロットは上手だなと思いました。


新たなキャラクターも魅力的。

アブダラは空想好き、親戚に振り回されているといった、どこか地に足がついていない頼りないところがありますが、彼は気前がよく人柄の良さが見受けられます。

作中、彼のカーペット売り場の隣にブースを構えるジャマル(Jamal)にお世話になる場面が出てきますが、アブダラはジャマルに躊躇なくお金を渡したりと、対価を与えるんですよね。

そして彼らが住むザンジブ(Zanzib)の街では、何かと相手を称える慣習があります。

商人の街らしく、おだて合うというか、言葉で相手のことを表現し合います。

アブダラはそういう意味では口がうまいのですが、嫌みのない言葉遣いをします。


彼が恋に落ちるのがFlower-in-the-Nightという名前のお姫様、夜咲姫。

彼女は父親譲りの論理的な発想の持ち主で、世間知らずのお姫様ではあるけれど、賢く勇敢で守られるだけの存在ではない女性。

世間知らずだから心もまっすぐで、地に足のついていないアブダラとよいペアです。

彼女とはいわゆる身分違いになるのですが、アブダラの恋がどう進むのかドキドキしながら読み進めました。


Castle in the Airという単語だけ見てしまうと、空の城と直訳してしまい、空に浮かんだ城にアブダラが行くのかなとイメージしていました。

まさに宮崎駿監督の「天空の城ラピュタ」の印象。

城が出てくるかどうかは、ぜひ読んでいただきたいです。

ちなみに「天空の城ラピュタ」の英語版タイトルは「Castle in the Sky」です。



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