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Book Report: The Austen Sisters

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 7月31日
  • 読了時間: 4分

Author: Dee Blankenship

翻訳版の有無: なし

映像化: なし

英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了できるレベル)


この作品を読むと、「オリジナルを大事にしつつ、独自のイマジネーションもうまく主張させるすべを学べる」という、ベネフィットが得られる。

 

「二次創作」という言葉が生まれたのはどの時期でしょうか。

同人誌活動に携わったことのある方は、一度は聞いたことがあるのではと思います。

オリジナル作品(使ったことないけど、一次創作)が存在して、その作品からインスピレーションを得て生まれた作品を二次創作と言って分別しましたが、要は同人誌作品です。

私が知る限り、洋書の場合は、元々は二次創作だったけれど、編集者の手が入り、別物に生まれ変わったというのがE. L. James氏の「フィフティ・シェイズ・オブ・グレー」三部作。

作者James氏は、Stephanie Meyer氏の「トワイライト」シリーズのファンで、ファン作品(要は二次創作)を手掛けていたところで編集者の目に留まり、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレー」が生まれたといわれています。

 

全く別物に生まれ変わったJames氏の作品と異なり、本作はジェーン・オースティンの複数ある作品からキャラクターやエピソードを抽出し、一つの物語を作っています。

二次創作か、もしくはパラレル作品とも言える内容ですが、オースティン作品未挑戦の方でもオリジナルを容易に想像できる、楽しい作品になっています。

ただ、オリジナルのネタバレになるエピソードもふんだんに登場するので、オリジナルを読みたい方には注意が必要です。

 

現代に生きるオースティン五人姉妹が主人公で、近しい従妹ファニーの結婚式に、彼女の花嫁介添人(bride’s maid)として招待されたのが始まり。

上から順に、エリナー(Elinor)、エリザベス(Elizabeth/Lizzy)、アン(Anne)、エマ(Emma)、キャサリン(Catherine)の姉妹は、仕事や学業をきっかけに離れて暮らしているため、この結婚式で久しぶりに姉妹全員が揃うことを楽しみにしていました。

仲の良い五人ではありますが、年齢差や仕事へのモチベーション、そして典型とも言える姉妹のポジションでコンプレックスや確執も持ち合わせています。

揃って未婚の五人は、進行中の恋愛の悩みを抱えたままの状態で式に出席するのです。

 

この作品のいいところは、何より、オリジナルのオースティン作品を既に読んでいた場合、安心して物語の先の展開を想像できるところです。

彼女たちのパートナー、恋敵や厄介な相手として登場する人物だけでなく、印象的な場面が各作品からそのまま登場するので、ファンだけでなく、これからオースティン作品を挑戦しようと考えている人にはもってこいの作品。

中でも秀逸なのが、四女エマの職業。

彼女はデートアプリを導入したインフルエンサー、という役どころですが、オースティン作品「エマ」でも男女の仲を取り持とうとする、お節介焼きなのです。

オリジナルでのエマは決して恋愛の百戦錬磨とか恋愛マスターという女性でもなく、結構的外れなことをする女性なのですが、本作でもそのお節介さと的確に恋愛アドバイス出来ないところがうまく表現されています。


既に存在する作品を使って作品を作った場合、オリジナルを知っている方がより共感しやすいため、知らないと馴染みにくいというちょっとした癖がでますが、全体的に明るくまとまっています。

私の場合、読了済みの作品「分別と多感」「高慢と偏見」「エマ」の主人公であるエリナー、エリザベス、エマにはよく共感できましたが、未読の「説得」「ノーサンガー・アビー」「マンスフィールド・パーク」の主人公であるアン、キャサリン、ファニーのイメージは掴みにくかったのですが、作者は各作品のエピソードを上手に抽出し、キャラクターの命を吹き込んでいるので、決して本作の脇役で終わっていないのが面白いところ。

例えば五女キャサリンのモチーフになった「ノーサンガー・アビー」の主人公キャサリンは、ゴシック小説の愛読者というキャラクターで、本作キャサリンはヴァンパイアが登場する「トワイライト」の愛読者という設定にしています。

末っ子で頼りなさのある彼女ですが、実は柔術に精通するという意外な特技があります。

このエピソードの登場シーンは痛快で、キャサリンのギャップに驚かされました。

誰しも一度は聞いたことのあるオースティン作品という、有名なオリジナル作品を大切にしながら、その作品を読んだことがある読者にある程度物語の展開を予想させながらも、現代に生きる女性たちの生き方を上手に取り入れた、読者を飽きさせない工夫が上手になされています。

オースティン作品が未読なら、私もぜひオリジナルも一緒に読むことを勧めたい、いい作品です。


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