Author: E.B. White
翻訳版の有無: あり。邦題「シャーロットのおくりもの」
映像化: あり。「シャーロットのおくりもの」
英語レベル: Advancedレベル(洋書を1年間に1冊読了出来る)
この本は、こんな人達にオススメします。
・世代や性別などの枠を越えた友がいる人
・命の大切さを学びたい人
・牧場に関わる英単語を学びたい人
物語の舞台が牧場だと言われて、お察しのよい読者は何となくでも事の顛末に気付くのではないでしょうか。
この物語の主人公である子豚のウィルバーは、家畜として生を受けます。
家畜の運命は決まっています。
そう、人間である我々の血となり肉となる運命。
本書は児童書ではありますが、過酷な運命の元に生まれたウィルバーが異種族の蜘蛛シャーロットと育む友情を描いたのが本作品です。
ウィルバーを二番目に救う女性であるシャーロット。
彼女は、蜘蛛の習性である、子供を授かる際にオスの蜘蛛を食べてしまうということから、他の動物達から恐れられていますが、ウィルバーだけは偏見を持たずに彼女を友達として初めから受け入れるのです。
ウィルバーの運命は生まれた時から厳しいものでした。
他の兄弟と違って小さく生まれたために、殺処分の選択を迫られるという、厳しいエピソードから物語が始まります。
ですが、彼を救う最初の女性である飼い主の娘、ファーンのお蔭でまずは飼い犬ならぬ飼い豚として一家に迎え入れられます。
彼が育って家で飼えなくなったため、ファーンの親戚の牧場に預けられたウィルバーは家畜として育つより友達が欲しいと孤独を募らせていきます。
その牧場で出会うのがシャーロット。
彼のこの孤独が、ウィルバーがすんなり異種族のシャーロットを受け入れた要因にもなっています。
子供であるが故に偏見も少なく、優しく賢い女性(蜘蛛)のシャーロットに敬意を示すウィルバーはすっかりシャーロットが好きになり、また、ウィルバーの屈託のない態度にシャーロットも心を開きます。
そんな二匹の姿を見る他の動物達は、徐々にシャーロットへの警戒心を解いていくのです。
さて、家畜ですので、ウィルバーはまた命の危険にさらされます。
(家畜なので、ある種名誉なのでしょうけど、私達人間のために命を捧げることになるので悲しいですね。)
ウィルバーが育つと、他の豚達がそうされたように、競売に掛けるか話が持ち上がります。
当然、ウィルバーは死にたくないので、牧場の動物達に助けを求めます。
そこでシャーロットが彼のために手助けしたのが、彼女が持つ特技である蜘蛛の糸です。
彼女は蜘蛛の糸を編み、ウィルバーがいかに素晴らしい豚か、人間の話す言葉で糸をつむぐのです。
彼女のメッセージを読んだ人間達がどう反応したか、果たしてウィルバーは家畜としてどんな運命を辿るのか、ページをめくる手が止まりません。
冒頭で記載した通り、本書を通じて意識せざるを得ないのは「死」や「生命」の重いテーマです。
種族を越えて育まれるウィルバーとシャーロットの友情は、いかに人間からウィルバーを守るかという緊張感を孕んでいます。
家畜であることを常に意識し、今日も生き延びることが出来たと毎日を必死に生きるウィルバーの姿からは、一日を大切に向き合うひたむきさが感じられます。
過去に動物を扱う物語はいくつか読みましたが、本作はより「死」「生命」を強く意識させられる作品となっています。
ウィルバーの環境と並行して、季節が廻るごとに新しい動物も誕生し、家畜の家族が増える描写もあるため、基本的に生命力を感じる明るく力強い作品です。
私は畜産に関わったことはありませんが、いつか人が育てた家畜の命をいただくことになるため、動物は決して可愛いだけで済まされないことをしっかり感じ取れました。
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