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Book Report: The Housemaid

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 16 分前
  • 読了時間: 4分

Author: Freida McFadden

翻訳版の有無: なし

映像化: なし

英語レベル: Advanced(一年で一冊洋書を読破できるレベル)

*続編に「The Housemaid's Secret」、「The Housemaid is Watching」、短編で「The Housemaid's Wedding」があります。


この本を読むと、「自分が見ていることだけが正しいことではないと、気づかせてくれる。」というベネフィットを得られます。


メイド、あるいは家政婦と聞くと、日本には家政婦を主人公にした有名なドラマがいくつか存在します。

どれも主人公が一歩引いたところから雇い主の家庭を見る、という舞台設定ですが、スキャンダラスだったりコメディだったり。

本作も、主人公の目線から各家庭に目を向ける設定ですが、作品を通じて共通するのがドメスティックバイオレンスを取り扱っています。

メインの家庭で起きる暴力だったり、主人公がパートナーとタッグを組んで女性を暴力夫から救うというサブ設定を取り入れたりと、主人公の正義感の強さがうかがえます。

実は、ちょっと正義感が強過ぎる節があり、トラブルに巻き込まれるのも日常茶飯事です。

 

主人公ウィルフェルミナ・”ミリー”・キャロウェイ(Wilhelmina “Millie” Calloway)は、学生の時分、暴漢に襲われた友人を助けるため反撃し、運悪く相手を死なせてしまったという過去の持ち主。

正当防衛だったはずなのに、不当に判断されたために刑罰を受け、家族はおろか助けた友人も去っていくというつらい経験をしています。

そのため、家探しや職探しなど、通常の生活に苦労を強いられるミリーですが、ようやく見つけた職場(一般家庭)で家政婦として働きます。

第一部The Housemaidでは、態度の豹変が著しい奥さんを持つ家庭で働き、第二部The Housemaid’s Secretでは、部屋から一歩も出ない奥さんを持つ家庭で働きます。

第三部The Housemaid is Watchingではミリーが家庭を持った立場に変わり、彼女に若さと美貌を見せつける奥さんのいる家庭で働くのですが、この三部作はどれも起承転結が秀逸で、ありきたりな筋書きから一転し表面では見えない、奥さん側の事情が描かれ始めるという展開にシフトチェンジします。

 

ミリーの過去から、彼女は正義感ゆえに暴力も厭わない、少し危険な人物として読者に予測させますが、案外抜けている部分もあるためミリーは人間味のあるキャラクターに仕上がっています。

(本当に抜かりない人なら、学生時代に起きた友人襲撃も、暴漢に対し寸止めで終わらせると思う。)

 

さて、この作品を通じて、夫から妻への暴力というのが物語の肝になっています。

ミリーが家庭に踏み入れたことで明るみになる夫婦の秘密があり、まさに彼女の存在が物事を変えるのです。

夫の暴力から逃れるためにミリーを利用する妻達ですが、それがミリーにとって良い方向に出るか、悪い方向に出るかは各エピソードで確認することができます。

第一部までミリーは単身戦うのですが、第一部で後にパートナーとなる理解者に出会うことになります。

このパートナーとの展開も、第二部、第三部でさらに詳しく描かれているので、サスペンス要素だけでなく恋愛要素もあり、楽しめます。

表面上では幸せそうに見える各家庭でも、ミリーがひとたび足を踏み入れることで、実際に夫婦が抱える問題が浮き彫りになります。

第三者目線というのは、一歩引いた形で物事を確認するため、冷静に物事をとらえやすいのですね。

第一部に登場する一見幸せそうなウィンチェスター家三人が、実は砂の城のように足元の覚束ない絆でしか繋がっていない親子であったり、第二部のギャリック家は姿を見せない妻ウェンディーは実はとんでもない策士であったり。

第三部でも、隣人ローウェル夫婦が持つ愛情の温度差にミリーは訝しく思いますが、読者の予想を裏切る展開に物語を読む手が止まりません。

短編にThe Housemaid’s Weddingという、第二部と第三部の間で起きた、ミリーの結婚に関するエピソードが描かれた作品があり、ミリーはこの作品で、自分が育った家庭とこれから作ろうとする家庭との間で、どちらを大切にして生きていくかという決断をします。

致し方なかったとはいえ、人の命を手にかけてしまった過去のあるミリーが誰とどのように生きていくか、その事実を周りは受け入れられるのかという点が描かれています。

(この作品のエピソードにサスペンス要素も含まれていますが、ポイントはサスペンスではなく、ミリーが誰と生きるかという点でした。)

難しい英語をあまり使わない作品のため、作品の面白さに加えて読みやすい作品になっています。



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