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Book Report: The Good Sister

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 3 時間前
  • 読了時間: 4分

Author: Sally Hepworth

翻訳版の有無: なし

映像化: なし

英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読破できるレベル)


この本を読むと、「人間関係の種類に関わらず、境界線の線引きは必要だと考えるきっかけになる」というベネフィットを得られます。


関係が近ければ近いほど、境界線の線引きが難しくなるのが人間関係です。

私は線引きができているかと思っていましたが、今年四月から生活する環境が一変し、人間関係の見直しが入ったことで、これまでより意識するようになりました。

 

本作も人間関係の線引きがテーマです。

姉妹と親子、二つの人間関係に焦点を当て、読者に境界線を意識させました。

主人公のファーン(Fern Castle)には二卵性の双子の姉妹ローズ(Rose Castle)という、発達障害(おそらく感覚処理障害: sensory processing disorder)のある彼女にとって生活面や精神面で支えとなる存在がいました。

二人が十二歳の時に、シングルマザーの母親が薬の過剰摂取が原因で入院して以来、里親を転々とする生活を送ることになるのですが、きめ細かなローズのサポートにより、ファーンは日常生活を過ごせています。

現在は地元の図書館で司書として働きますが、ローズとは週三回夕食を取る頻度で会います。

ローズはオーウェン(Owen)という男性と結婚をし、独立していますが、ファーンのことも甲斐甲斐しく世話します。

そんな折に、ファーンはローズが妊活を試みたこと、そして検査の結果、不妊だということを知ります。

実はローズは幼い頃に1型糖尿病の診断を受けているのですが、日頃ローズからサポートを受けることから自分が代わりに子供を授かりローズに養子縁組などによってその子供を手渡そう、とファーンは大それたことを思いつきます。

彼女がアプローチしたのは図書館を訪れた若いロッコ(Rocco)という男性です。

図書館のプリンターがうまく起動しないところに居合わせた男性ですが、彼が、「ウォーリーを探せ」に登場するウォーリーに似ていることから、ファーンはロッコをウォーリーと呼びます。

ロッコはシステムエンジニアで、有名なアプリケーションの開発に携わったことのあるキャリアを持ちながらも、その繊細な心持のため故郷を離れ、今は車の中で生活するいわゆるホームレス。

心と頭がばらばらなファーンとウォーリーはやがて心を通わせていきますが、トラブルが起きるとすぐにローズを呼び寄せるファーンの姿にウォーリーは疑問を呈します。

ファーンの障害に加えて、当時十二歳の時にファーンが経験したある悲劇的な出来事から、ファーンは自分が危険な存在であると認識しているためファーンは中々ローズとの関係を見直すことができません。

やがて当初の目的を達成したファーンは、ローズに妊娠を伝えると、ローズのファーンに対する過保護さに拍車がかかります。

お互いのために行動する二人は果たして「グッドシスター」なのか。

それとも、本心を隠してその存在を利用するだけなのか。

 

ファーンとローズという、お互い植物の名前を持ち合う美しい姉妹ですが、母親との不安定な関係や潜在的に抱く姉妹同士のコンプレックスや障害のために、共依存の関係にある二人。

特にファーンは、十二歳の時に経験した悲劇は自分のアクションが原因だと自覚しているため、自分の行動に自信が持てません。

障害も相まって、ファーンは同僚達と距離を置いているし、健常者と同じことはできないと初めから決めつけています。

しかしウォーリーの存在は、ファーンには自分が築いた世界に疑問を投げかけるよい起爆剤でした。

ファーンは彼女が思い込んでいるほど、何もできないわけではありません。

彼女が引いた人間関係の線引きは、他人と自分、そしてローズと自分について考えさせます。

ファーンのお腹で育つ子供が大きくなるにつれ、ローズとの関係、十二歳の時に経験した悲劇が浮き彫りになります。

本作は、人間関係の線引きを様々な方向から意識させてくれる作品です。

また、物事の感じ方、受け止め方も人によって異なることから実際に起きた出来事が、歪んだ形で伝わるという表現も本作でなされます。

果たしてファーンはどうローズとの人間関係に線引きするのか、という点も本作の見所です。



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