Author: Tove Jansson
翻訳版の有無: あり「ムーミン谷の彗星」
映像化: あり。「ムーミン谷の彗星」
英語レベル: Advanced寄りのBasic(一日3分英語と向き合えるレベル)
この本を読むと、「人は役割を持って生きていると改めて実感する」というベネフィットを得られます。
子供の頃に観たアニメ、というのはどの世代にもある話題です。
そのアニメも、人気が高いと長期で放送されることもあるし、リメイクされることもある。
私の場合、そんなアニメの一つにムーミンシリーズがありました。
声優や描かれ方も世代で違うようですし、何よりシリーズのヒロインであるキャラクターの名前も変わっています。
あくまで「子供の頃に観たアニメ」の一つなので、物語やキャラクターの記憶が曖昧でしたが、今回機会を得て読むことに。
すると、まぁ、最初の作品は思った以上に手に汗を握る冒険もの。
そして、そんな冒険だからこそ、旅があるわけで、旅で遭遇するトラブルの対処の仕方を統率する役割がそれぞれ生まれてくる。
普段の私達の人間関係における役割は、厄介だけどそれがあるお蔭で存在意義を見いだせると改めて感じられました。
ムーミンはふっくらした体形のキャラクター。
妖精かもしれない。
動物に喩えるとカバのような体をして、ムーミンは気性が穏やか。
彼の両親であるムーミンパパやムーミンママも穏やかだけど、常に自分の伝記memoirを書くネタを探しているパパは夢想家、てきぱきと家事や仕事をするママは現実的。
スニフというイタチのような見た目のお友達も一緒に暮らし、穏やかな日々を送っていたある日、ムーミンパパが建てた橋によって自宅が迷惑したマスクラット(Wikipedia調べではジャコウネズミとなっていました)が雨の夜に訪ねてきます。
彼を助けるため宿を提供するムーミンパパ。
そこでムーミンとスニフは、マスクラットから地球に近づく彗星の話を聞きます。
そして調査の旅に出かけた二人。
ロンリーマウンテン(Lonely Mountain)には天文台があり、そこで研究者が彗星に関して調査をしているよう。
二人は旅の途中、放浪者スナフキンや、ムーミン達一族によく似た種族のヘムル(the Hemulens)やスノーク(the Snorks)に出会います。
やがてその彗星が十月七日の夜8:42にムーミン谷(Moominvalley)に到達すると聞き、一行は急いでムーミン谷に住むパパとママの元へ避難を伝えに戻ります。
こんなピンチの中、際立ったのが誰が何をするかという役割分担です。
穏やかなムーミンとこだわりの強いスニフは仲良しで良いバランスが取れた友人同士ですが、旅の途中で出会ったスノークのお嬢さんが絡んだ途端、ムーミンはしっかり者で彼女へ気遣いが出来る男性に様変わりします。
旅の途中に立ち寄った店で、スノークのお嬢さんにプレゼントを買いたいと彼女に見合う品物を探す様子が微笑ましかったです。
ムーミンの様子を理解できないスニフはからかいますが、お店のおばあさんには窘められて、ムーミンが大人の階段を一歩先んじた姿が面白かったです。
放浪者のスナフキンは、これまでただただ自由な人というイメージでしたが、自由だからこそ一人で経験した深みある話や、ハーモニカや詩など人を楽しませる術をたくさん持ち合わせています。
そして、まとまりのなさそうな旅の一行をうまくまとめたのがスノークのお嬢さんの兄、スノーク。
几帳面な彼はメモ帳に旅であったこと、彗星が迫ってきたらすることをリスト化し、トラブルがあると何かと会議を開きたがります。
確かに頭は固そうですが、自由で脱線しやすい面々がこの旅の一行にたくさんいますから、彼みたいなキャラクターも必要ですね。
こういうユニークなキャラクターがたくさん登場しますが、私達人間が築く人間関係に近いものがあり、ファンタジーなのに身近に感じられる存在です。
迫りくる彗星に対しムーミン谷の面々はどう対処したのか、など結末が気になりページを進めるのが楽しくなります。
彼らがそれぞれの役割に徹し、ピンチに向き合い対処する姿がとても魅力的です。
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