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Book Report: The Once Upon a Time Bookshop Storiesシリーズ

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 2月15日
  • 読了時間: 5分

Author: Alice Hoffman

翻訳版の有無: なし

映像化: なし

英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了できるレベル)

*本ページでは、The Bookstore Sisters、The Bookstore Wedding、The Bookstore Keepers、The Bookstore Familyをまとめて紹介します。


「どこの家族にも一つくらい諍いはある」


自分も含め、家族を持つ人間なら、誰しも家族と大なり小なりぶつかることがあります。

それは小さな喧嘩から、大きなトラブルにまで及びますが、それは家族それぞれのこと。

今日この記事を書いている私は、家族との関係は「普通」かと思っていますが、これまで歩んできた歴史や、家族構成や環境やら様々な事情があり、私は自分が生まれ出た家族と物理的に距離があります。

まぁ、転勤が理由で生まれ故郷を離れて生活しているのですが、これまでずっと家族と一緒だった私は、彼らと距離を取ったことで、すごく心に余裕を感じています。

今まで一緒にいた人がいなくなって心がぽっかり穴が開いた、というのではなく、必要以上に握りしめていたものを離した、というのが正しい言い方かもしれません。

家族の誰かに頼まれたわけではない。

自分の意思も入りつつも、環境に左右された結果、今の自分が作られたことも事実。

それを強制的に辞めたことで、私は今、ずっと肩の力を抜いた状態で生活しています。

この先、自分が生まれ出た家族の元に、これまでのような状態で戻ることはありません。


さて、本作は家族との諍いが一組の姉妹を引き裂き、引き戻し、そして彼女達が予想だにしなかった世界が開く物語です。

最初の話である「The Bookstore Sisters」は以前にほ読んで紹介しましたが、のちに続編が出たことを知って、早速続編をゲットし読み進めました。

「The Bookstore Sisters」だけでも面白く、ショートストーリーなのでさらっと読めたのですが、続編が出たことで、最初の話だけでは未消化だったアイテムがいい形で消化されています。


*以前に投稿した時はいろいろと伏せましたが、今回の再投稿でちょっとネタバレします。



幼い頃に病気で母を亡くし、やがてその傷が癒えないまま亡くなった父の姿を見ながら育ったイザベル(Isabel Gibson)は、大学進学と同時に故郷のメイン州(Brinkley’s Island, Maine)からニューヨークに移り住みます。

それは上記の通り、病に弱っていく母の姿を見て苦しみ続けたことや、その母を亡くした後、父が心を閉ざしていく姿に傷ついたゆえの行動でした。

イザベルが故郷に置いてきたのは、初恋の人ジョニー(Johnny Lenox)と、何より自分を支え続けた姉ソフィー(Sophie Hawley)でした。

ソフィーはイザベルがいなくなった後も、父が残した小さな本屋を守り続けていましたが、怪我を負って経営が停滞する事態に。

事態を重く見た人物で、イザベルが今回初めて対面することになるのがソフィーの娘ヴァイオレット(Violet Lenox)。

つまり、イザベルの姪です。

三人が一堂に島に集まった時、イザベルがニューヨークで生活する間は考えもしなかった未来が扉を開けたのです。

ばらばらだった家族が揃い、それぞれ抱えていた重荷を下ろしていきます。

家族の防波堤のような立場だった長女のソフィーは、崩れ行く家族を繋げようと努力していましたし、そもそも家族の崩壊に耐えられなかったイザベルは自身を守るために外へ出ていくも、自分を守るための行動がずっと心に引っかかっている。

生まれた時から既に自身の家族に悲劇が起きていて、それでもつましい暮らしを送る聡いヴァイオレットは、その家族の歴史故に人との繋がりに隔たりを感じている。

「自分が生まれ育った家族」と「自分がこれから作っていく家族」の物語を短いながらも厚みある展開で描き、一番身近な人間関係「家族」を思い直させてくれる物語です。


イザベルの人間関係がシフトしていくにつれ、彼女が気に掛ける人の優先順位も移っていきますが、これまでの自分の態度から、姉ソフィーに対する気遣いは全作を通じて描かれています。

自分の家族はおろか、ファミリービジネスの本屋の重荷をも背負う姉ソフィーと違い、自分の心の平安のためにこれまでの家族の歴史を捨てて都会に出るところは妹らしいとも思いましたが、イザベルはイザベルなりに苦しむことになります。

ニューヨークにて生活中、彼女も家族を持つ機会に恵まれるのですが、思ったような結果にならず、一人で過ごすことになります。

また、別の視点で見ると、イザベルは外に出たことで自分がこれまで置かれた環境の息苦しさや、心の豊かさと縁が薄い環境だったかもと思わされるのも事実です。

外に出て企業に就職したイザベルと違い、行くところがなく、家業である本屋を経営するソフィーですが、裕福な暮らしを保証するものではなく、長い目で見た場合、もしかすると彼女がファミリービジネスを維持させることは現実的でなかったのかもしれません。

家族を繋ぐものを守りたいソフィーは、頑なに自分が考える家族の象徴=家業の本屋を存続することを守りたかったのかもしれません。

両親を失った悲しい事実を手放すために本屋や故郷から離れたイザベルと、それらを維持することで家族を繋ぎ止めようとするソフィーの対比は、典型的な次女と長女の姿とはいえ、上手なコントラストだなと思いました。

母ソフィーの姿を見てきたヴァイオレットだから、家族の在り方に疑問を持って他人とうまく打ち解けられないのも理解できますが、彼女の課題も第四作「The Bookstore Family」でよく描かれています。


私自身をも投影するような作品だったThe Once Upon a Time Bookshop Storiesシリーズ。

自分もよく見るからでしょうけど、SNSでも長女ビジネス(長女あるあるとか、女性性を否定しがちな長女とか、そういう投稿)が出回るせいで、さも長女に生まれることって大変みたいな風潮がありますが、どのポジションに生まれた人も大変です。

他人なら切って捨てて終わるにできることも、家族だとそうもいかないこともあります。

イザベルとソフィーの場合は、ちゃんと収まるところに収まりますが、彼女達の例が「所詮物語だしね」と捻くれて感じるのではなく「素敵なお話」と思える今の自分は、離れても自分の家族に対してリスペクトを持って接することが出来るのだと思っています。




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