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Book Report: The Wedding People

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 7 日前
  • 読了時間: 5分

Author: Alison Espach

翻訳版の有無: なし

映像化: なし

英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了できるレベル)



「このどんちゃん騒ぎは今の沈んだ気を紛らわせるか」


何をやってもうまくいかない時って、生きていれば一度や二度くらいあると思います。

私の場合、「これがどん底だ」と絶望するレベルのうまくいかなさはありませんでしたが、

タイミングが合わずに実現しなかったイベントはあります。

(まさに今週、ぽんと食事の約束をしたのに一緒に食事する相手に急遽残業が決まって、約束が流れてしまいました。)

自分の努力だけでは、人生、どうにも動かすことが出来ないことって、あるんですよね。

 

本作は、実際に起きた2020年のパンデミックが生活環境に影響を与えた、という環境変化を下敷きに、今までの生活が一転しうまくいかないことが積み重なって、人生どん底に陥った人が主人公です。

主人公のフィービー(Phoebe Stone)はキャリアも結婚もうまくいかず、人生行き止まりまで追い詰められてしまいました。

Adjunct English professorという補助の立場を務める教授を職業にするフィービーは、これまで愛する夫と猫と暮らしていましたが、手掛ける論文は全く完成しないまま年月ばかりが過ぎ、結婚生活も破綻し、感覚として「もう終わった」と塞ぎ込んでいます。

思いつめて、もう自分の人生を終わらせようといるくらい。

生きる希望を失ったフィービーは、最期くらいは贅沢にとロードアイランドの高級ホテルを選び、そこで人生を終わらせる決意で訪れます。

ところがそのホテルでは、鬱屈としたフィービーと対照的に、若いカップルの結婚式開催に向けて活気づいていました。

ホテルにチェックインし部屋に向かう途中、フィービーはエレベータの中で花嫁ライラ(Lila)と出会います。

結婚式の中心にいる人物なだけあって、ライラの立ち居振る舞いに生意気さを感じるフィービーでしたが、ライラ自身や彼女がこれから結婚する花婿ゲイリー(Gary)のバックグラウンドを知ると、なぜ反発心を感じるのかもしれません。

ゲイリーはライラより少し年上で、前妻ウェンディー(Wendy)を亡くした上に難しい年頃の娘”ジュース”(Juice)や何かと口やかましいゲイリーの姉妹マーラ(Marla)も傍にいて、ライラは肩肘張っている状態です。

何の関わりのないフィービーとライラですが、一週間ブライダルイベントを執り行う予定のライラがフィービーの身の上を知ると、晴れやかなイベントに泥を塗ってほしくないと説得し、フィービーを結婚式のイベントに巻き込んでいきます。

もう何にも関わりあいたくないフィービーですが、結婚という晴れやかな人生の門出に死という真逆のものが発生するのは嫌だというライラの言い分も理解し、やがてライラに誘われるがまま結婚式のイベントへ参加することを決めます。

ライラの友人ですらないフィービーは、結婚式の一連のイベントに関わるうちに、ライラだけではなくゲイリーやジュース、二人に縁のある参加者たちが抱える問題にも目を向けていきます。

 

2020年は様々な事柄のターニングポイントでした。

様々な活動の自粛があり、家に籠ることが多かったこの時期は、これまで蓋をして目を逸らしてきた問題が浮き彫りになり、嫌でも向き合うことになった時期だったかと思います。

本作も、まさにフィービーは自分のキャリアと結婚生活が破綻しますが、それはこれまで本心に蓋をしてきたからこその結果でした。

夫のマット(Matt)とは同じ教授という職業に就きながら、片方は補助の立場でもう片方は正式な教授です。

論文などの発表を行い、キャリアも認められたマットと違い、自身のキャリアがくすぶるフィービーは彼に劣等感を抱いていましたが、自分の気持ちに蓋をして結婚生活を優先させてきました。

いい妻でいること、子供を授かろうと試みること、キャリアと家庭のバランスを取ること。

例えば目に見える変化となる「子供を授かること」が実れば、ある種夫婦の関係を取り繕えたのかもしれませんが、残念ながらフィービーとマットは子宝に恵まれませんでした。

一つボタンが違えれば、次々と玉突き事故のようにうまくいかなくなり、二人の夫婦関係は終わりを迎えてしまうのです。


ここではフィービーの夫婦関係を書きましたが、彼女が本当に抱えていた問題は、むしろ彼女のキャリアの方でした。

本当はマットと対等に立ちたかったフィービーですが、それが出来ず、しかも夫の活躍を心から喜べないことにも罪悪感を抱えていたのです。

そして自分の気持ちをマットに伝えられずにいたことも、フィービーを苦しめた事柄でもありました。

自身の問題を抱えながらも、フィービーは、気を張り何とか自分の結婚式を成功させると意地になるライラを一番外側から見守ります。

ライラ自身もパンデミックの影響を受けていて、ゲイリーと結婚すること自体を成功させたいという気持ちがあるようですが、ライラは本当の自分の気持ちに気づいていません。

今以上に幸せになりたいとか、新しいステージを生きるための結婚ならきっともっと肩肘張らずに一週間のブライダルイベントを執り行えたのでしょうけど、ライラの様子はイベントをこなすことに躍起になっているようでした。

果たしてライラはゲイリーと無事結婚できるのか、自分の手で自分の人生を終わらせようとするフィービーの気持ちに変化が出るのか、楽しく読み進められる作品です。

また、そのブライダルイベントの最中にフィービーがジャグジーで出会った、見知らぬ魅力的な男性との仄かなロマンスの行方も気になるポイントです。



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