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執筆者の写真Masumi

Book Report: Dreamland

更新日:2023年12月16日

Author: Nicholas Sparks

翻訳版の有無: なし

映像化: なし

英語レベル: Advanced(一年に一冊洋書を読了することができるレベル)


この本を読むと、「何が今、最善かを考え抜く力をもらえる」というベネフィットを得られます。


私の大好きな作家のNicholas Sparks。

他の作品に目移りしていたということもありますが、ようやく最新作を手にし、機能読了しました。

本作もよかった。

別の作品を読んだ時に確か、「彼の過去の作品と近年の作品は類似するところが見られる」とコメントしたことがありますが、それでも好きなことには変わりない。

本作も似たところはありましたが、やっぱり好きだから、飽きないし先が気になるし。


本作の主人公コルビー(Colby Mills)は、かつてシンガーソングライターになることを夢見ていた青年。

家庭事情により、姉と共に親戚の家で育てられ、そしてまた家庭事情により牧場運営を生業にする彼は、現在の生活に不満を抱くまではないにせよ自分の人生をどうするかと深く考えることなく、とにかく今を生きることに必死でした。

そんな彼はある時、休暇でフロリダ州を訪れ、音楽イベントで歌を披露していました。

その休暇先でモーガン(Morgan Lee)という女性に出会います。

モーガンは友人達とSNSを駆使して自分達のダンスを披露し、人気を集めるアマチュアグループの一人で、将来はプロ歌手になることを夢見ていました。

この休暇の後に、モーガンはテネシー州に移り住み、音楽活動をすると決めています。

音楽という共通の事柄を通じて惹かれ合うコルビーとモーガン。

休暇中という限られた期間で二人の時間を過ごし、やがて二人が手掛けた合作の曲を音楽イベントで披露し、二人の結びつきを外の世界に発信するまでに絆を強めた一方で、遠く離れた他州では、ビバリー(Beverly)という女性が幼い息子トミー(Tommie)を連れて夫の元を去り新しい人生のスタートを切ったところでした。

若いカップルの束の間の逢瀬と、遠く離れた場所で新しい生活を始めようとする母と子。

コルビーがこの先、モーガンとどういう関係性を築くか決断した時、様々なイベントが発生して二人の絆を試します。


遠距離恋愛や、休暇など終わりが来る期間に始まった恋というキーワードは、Nicholas Sparksの作品の中でたびたび出てきました。

それが原因でうまくいかなかったカップルもいましたし、その時はうまくいかなくても時を経て結ばれたカップルもいました。

今回のコルビーとモーガンも、休暇中に出会い、愛を育んでいきます。

期間限定の滞在中に発生した恋に戸惑う二人の姿にはどきどきしますね。

そしてモーガンが切り出した、「私達、これからどうする?」に切なくなります。

モーガンは明るい未来が待っており、二人の関係維持のために力を注ぐ覚悟をしていますが、コルビーはもっと現実を見ています。

ショービズの世界に入り込む若いモーガンと、牧場運営できりきり舞いの自分では、二人きりの時間を作れないことは明白でした。


このレビューを書きながら、コルビーとモーガンの関係を思い返した時、私のメンターの一人がよく使う「幸せとどん底はセットでやってくる」という言葉を思い出しました。

特にコルビーにとって、モーガンはこれまでお付き合いした女性に感じたことのない安心感や、心の拠り所を感じることが出来た女性で、そんな彼女と関係を一時の「遊び」にしたくない。

仕事、家族関係、住む場所の距離を考えると、確かに関係の持続は難しいかもしれない。

そんな大変な状況で、彼が読者に教えてくれるのは「今自分にできることは何か、最善は何か」というメッセージ。

この恋を成就させたい気持ちは二人にありつつも、自分達の生活環境を整えることがまず優先事項で、それを達成するためには何をする必要があるのか。

特にコルビーは家族に左右される環境にいるので、自分一人の意志だけで自由に動けない部分もあるけれど、家族を理由にモーガンとの恋を諦めるのも少し違う。

一つの恋を成就させたい、生活環境を整えたい、などさまざまな願いがあり、何をまず優先させるのか考えさせられました。


過去の彼の作品「The Return」や「The Longest Ride」のように、カップルになる男女とまた別の誰かというメインの三人が登場し、並行してエピソードが展開される様子が描かれた本作品。

コルビーは一人称、ビバリーは三人称で進み、物語における役割の違いを書き分けていました。

この二人の物語がどのタイミングで交わるのか、一体どういう影響を与え合うのかわくわくし、それが明らかになった時、合点がいきました。

どういう未来を生きたいか、そのために今をどう生きるか、ということを考えさせられる作品です。








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