Author: Gail Carson Levine
翻訳版の有無: あり「さよなら、「いい子」の魔法」、「魔法にかけられたエラ」
映像化: あり。「魔法の国のプリンセス」
英語レベル: Advanced寄りのBasic(一日3分英語と向き合えるレベル)
この本を読むと、「不本意な境遇を生き抜く精神が鍛えられる」というベネフィットを得られます。
いい子という言葉が、最近ネガティブなものにも捉えられると言われています。
個人の意志を通して人生を作り上げる人が目立ってきた世の中、いい子=人の言うことを聞く子、都合のいい子と解釈されると、確かにいい子というのは良くない表現とも捉えられますね。
あと、自分軸や他人軸といった言葉が出回っているので、その点を切り取ると、自分の意志がない人はいい子=主体性のない子として表現されてしまうのかもしれません。
本作の主人公は、他の人から見ればいい子に映るやっかいな特性を持った女性です。
人間の他に妖精やトロールなどの人外な生物が共存する世界で、エラ(Ella)は生まれてすぐ妖精のルシンダ(Lucinda)から服従の祝福を受けました。
以来、人から命令されると従うという祝福の元行動し、自分の意志を持ち始めたエラにとって人の命令下で行動することがとても厄介に感じるようになります。
母親が生きているうちは、エラの心の拠り所として彼女を頼りにしますが、母親が亡くなると、エラは母と一緒に育ててくれた妖精のマンディー(Mandy)に懐くように。
エラが受けた呪いともいえる祝福の秘密を知るのは、母以外にマンディーだけ。
エラはマンディーから生き抜く術を学びます。
仕事で忙しく飛び回る父、幼少期から彼女と懇意にする時の王の息子チャー王子(Prince Charmont)、のちにエラのステップファミリーとなるオルガ夫人(Madame Olga)と娘のハティ(Hattie)、オリーブ(Olive)など多彩なキャラクターが登場し、エラの世界は色づいていきます。
オルガ夫人の家族と知り合い、早々に服従の秘密がハティに勘づかれると普段の生活や学校、ステップファミリーになって以降エラは彼女の命令に服従する羽目になりますが、人の言いなりになるだけでないのがエラの魅力。
人の命令を怖がって家に閉じこもるのではなく、生き生きとするエラはまさに逆境にも屈しない心の持ち主。
自分がどう生きていきたいのかしっかり考え、自身の服従の祝福にも向き合い、やがてチャーとのロマンスも、服従の祝福を抱える自分が王子という立場ある男性と付き合うというこがどういう結末を迎えるか想像し、悩み抜くエラ。
服従の祝福があることで、周りへの影響もよく考えながら行動する彼女の聡明さに心惹かれる読者も多いはずです。
主人公と継母と連れ子の二人の姉妹という構図は、シンデレラにも通じる設定で、連れ子のうち妹側に主人公が慕われて姉側に敵対心を抱かれる設定も本作で読むことが出来ます。
(別作品のブリジャートンシリーズ「もう一度だけ円舞曲を/ An Offer From a Gentleman」でも同じ設定が見られます。)
長い間、エラは自分の意志だけを貫き通して生きることを許されませんでした。
自分にはどうしようも出来ない強い力に操作され、彼女は不自由でした。
人の言葉を気にしながら、それでも卑屈にならず、自分の居心地のよい環境を模索します。
最後は誰しもほっこりと心が温まる結末でしょう。
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