Author: Autum Grey
翻訳版の有無: なし
映像化: なし
英語レベル: Advance(一年間で一冊洋書を読了出来るレベル)
この本を読むと、「いかなるタイミングからでも未来を創れると確信出来る」というベネフィットを得られます。
本作を読み進めて冒頭、どんでん返しが起こり、主人公達の過去を綴った章を読んだ時には混乱の原因に怒りを覚える、という気持ちに起伏があった作品でした。
主人公のコール(Cole Holloway)の隣の家に引っ越してきたノア(Eleanor Blake)は、大人になったら支配的な父親の元から妹達二人と母を必ず救い出すと決めて、これまでひっそりと生きてきました。
その引っ越し先でコールと出会い、彼と恋に落ちます。
こんなシンプルな物語の設定ですが、コールとノアのラブストーリーをめちゃくちゃに混乱させたのが、ノアの父親スティーブン(Stephen)。
妻と娘三人は、自分の汚点として支配的な環境に置き、コールに対しても理不尽な憎悪を抱き、ノアにコールとの交際を禁止します。
やがて父親を否定し、最後通告を渡したノアのことをスティーブンは目の敵にし、自分の職の力を使って若いカップルの仲を引き裂きました。
何でこういう男に限って公的な職に就いているのか、スティーブンは警察官です。
自身の職の有利性を逆手に取り、ある出来事をきっかけにスティーブンはノアに手を上げるのですが、正当防衛で彼を止めに掛かったコールを逆に監獄送りにしてしまいます。
そして極めつけは、コールが刑期を終えたその日にノアをコールの兄ジョッシュ(Josh)と結婚させて式を挙げさせます。
これにより、コールは恋人と兄を恨み続けて九年間、故郷に帰ることはありませんでした。
コールが本来作るはずだった九年間の未来は奪われてしまいましたが、この九年間読むことがなかったノアや彼の家族から届いた未開封の手紙をようやく読むことで、未来を創るチャンスが与えられます。
コールが知らなかった様々な事実が明るみになり、彼は今後どういう未来を歩みたいのか悩みます。
これまで彼のことを守るために大きな保護シールドとなってきた兄ジョッシュから、そのバトンを渡され、もう一度愛するノアと向き合うのです。
こんな混乱を極めたあるラブストーリーですが、私達も、今まで築き上げたキャリアや実績をやむにやまれぬ事情で捨てることってありますよね。
わかりやすいのは仕事と自身の社会的ステータスの変化。
女性ですと、結婚や子供を授かったりといったパターンでしょうか。
こういったポジティブな事柄が要因の場合であったり、ネガティブ要因では自然災害や人の生死にかかわることもあります。
その時は、本当に苦慮して現状を諦めることもあります。
ですが、不思議なものでセカンドチャンスって、与えられるんですよね。
私自身も海外赴任する親について行って海外生活をすると決めた時、送るはずだった「日本での高校生活・大学生活」という未来を捨てました。
捨てた後に悔やんだことも事実ですが、長い時を経てその決断は間違いではなかったと思っていますし、捨てたことで得られらた未来があるとも思っています。
そして、形を変えてその時捨てた時間、例えば「仲間と共有出来る青春めいた時間」を、思ってもみなかった形で作ることが出来ました。
本当に叶えたいと思っていれば、ユニークな形で実現することが出来るのですよね。
本作品の設定を知った時、私が高校時代からファンの作家ニコラス・スパークス(Nicholas Sparks)の作品Dear John(親愛なるきみへ)を触れた時に似た感情を覚えました。
一つの情熱的な恋、そしてそれが成就せず苦しんだカップル。
そのカップルの片割れをサポートし続けた静かな愛情、病気、陰ながら支える力。
(標準にするのが大好きなニコラス・スパークスであるところが、やっぱり彼が私の洋書好きの原点なんだなと気づかされます。)
ノアとコールの恋物語は、大人と子供という絶対的な力関係に屈しないために命懸けで守ろうとした結果、紆余曲折あり、苦しみながらもちゃんと着地出来たという作品です。
ノアがコールを諦めなかったこと、コールがきちんとノアの熱意に向き合ったこと、そしてジョッシュが彼の愛する人達を守るために心を砕いたことが、彼らの未来へと繋がっていると感じます。
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