Author: Tove Jansson
翻訳版の有無: あり「たのしいムーミン一家」
映像化: なし
英語レベル: Advanced寄りのBasic(一日3分英語と向き合えるレベル)
この本を読むと、「自分の欲しいものは何かを考えさせられる」というベネフィットを得られます。
自分の生活が当たり前になると、今ある幸せに気づけなくなります。
感覚が鈍ってくるんですね。
やがて心の欠乏を覚えるようになり、外に自分の欲しいものを求めるようになる。
自分の心が望むものは、自分の中にあります。
それを意識させてくれるのが、本作のエピソードにありました。
本作の冒頭で、ムーミン一家は冬眠の時期を迎えて眠りにつきます。
季節が変わり春になると、物語が始まります。
春になり目覚めたムーミンと、同じく眠りについていたスナフキン、スニフは「一番目に起きた!」というアピールのため山に登りますが、そこで帽子の落とし物を見つけました。
この帽子はホブゴブリンの魔法の帽子(Hobgoblin's Hat)。
※日本語版では、Hobgoblinを飛行おにと訳しているようです。
そうとは知らず帽子を持ち帰った三人は一度ムーミンパパにプレゼントしますが、その姿があまり好評でなかったため、帽子はゴミ箱として使われることに。
魔法の帽子と知らず卵の殻を捨てると、雲が発生してムーミンとスノークのお嬢さんは楽しく浮遊に使います。
やがて帽子の魔法によってムーミンの家をジャングル化させたことに気づいた一行は、帽子を一度捨てるのですが、ムーミンとスナフキンは川に流れた帽子を取り戻し、洞窟に隠してしまいます。
夏の船での冒険や、謎のスーツケースを抱えたトフスランとビフスランというペア(Thingummy and Bobo)の出会いも経て、帽子の持ち主である飛行おにがルビーの王様を求めてさまよっていることを知ります。
自分がほしいものを探す飛行おにのエピソードを軸に、本作で焦点が当たるのは、特段強い好奇心もなく今の環境の中で穏やかに暮らすムーミン、そして友人に囲まれながらも孤独と自由と変化を求めるスナフキンです。
本作のテーマと感じたのは、自分は何が欲しいか。
最終章まで姿を現さない飛行おにですが、彼はルビーの王様がほしくて探し続けるという、自分のほしいものがわかっている。
ムーミンとスナフキンは、前作で出会い友人関係となるキャラクターですが、ほしいものが全く違います。
ムーミンは彼の住むムーミン谷での安定した生活が気に入っています。
前作や本作でも冒険のため家を離れますが、最後には谷に戻り生活が始まります。
対するスナフキンは「家は持たない。いや、ある意味すべてが僕の家」という放浪者です。
本来であれば各地をさまようスナフキンは、今回冬をムーミン一家と越して春を迎えました。
彼の気質と合っていないことをしますが、これはムーミン達と過ごすため。
ただやがて彼の気質である、自由に旅をしたい欲求が現れてくるのです。
春から秋にかけてのエピソードが描かれ、楽しく海へ出る場面もありますが、同じ風景は続かない。
飛行おにがほしがるルビーの王様を通じ、自分達にとって何が大切なのかを訴えてくる作品になっています。
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