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執筆者の写真Masumi

Book Report: Gone With the Wind

更新日:2022年6月5日

*この記事は2021年6月7日にNoteへ投稿した記事の再編です。


Author: Margaret Mitchell カテゴリー: ラブストーリー、歴史小説 翻訳版の有無: あり。邦題「風と共に去りぬ」 映像化: あり「風と共に去りぬ」 英語レベル: Advanceレベル(洋書を1年間に1冊読了出来る)

この本は、こんな人達にオススメします。 ・自分が置かれた環境の大きな変化に必死に食らいついていこうとしている人、あるいは変化の波に乗ってチャレンジする人 ・典型的な長女、あるいは長女気質だと自覚して、誰かに共感してほしい人 ・総じて頑張っている人 ある日に知り合いととりとめのない会話をして、「アメリカの経済は西、政治は東に分かれている」という言葉が出てきたのが印象的でしたが、アメリカの歴史や真髄がわかる地域は南ではないでしょうか。 私が独自に「アメリカ南部出身三大作家のひとり」と銘打っているMargaret Mitchellの「風と共に去りぬ」は、アメリカを舞台に描いた大河ドラマと表現するに相応しい作品だと思っています。 ※残りの二人の作品もいずれ触れます。

この作品は、書籍の前に映画から入ったため、スカーレット(以下Scarlet)を演じたヴィヴィアン・リーの印象が強烈に残っていて、自己主張の強い、悪女の印象を受けたのを覚えています。

それだけヴィヴィアン・リーの演技がうまかったのだと思います。 そのためScarlet=悪女代表の先入観を持ったまま洋書に挑戦してしまいましたが、読了後、Scarletの印象が書き換わりました。 Scarletはこじらせ女子代表です。 同郷のアシュリ(以下Ashley)を美化しまくって想いを寄せるという、恋に恋する夢見る夢子ちゃん。 彼に正面切って自分の想いを伝えるところは素直でいいのですが、物語終盤までAshleyへの幻想を抱きまくっています。 本当にScarletが悪女だったら、夜這いするなりお酒の力を借りるなりして、Ashleyと関係を結んでしまいそうですが、「南部の良家出身の子女」はそんなはしたないことはしません。 今回の記事を書くにあたり「風と共に去りぬ」の内容を振り返りましたが、Scarletに対する印象は「こじらせ女子」以外にも、もっと人間味のある女性であると塗り替わりました。 これは南北戦争を軸にScarletという一人の女性の半生を描いた物語であり、特に彼女の恋愛を取り巻く人間模様が華やかなので、恋愛メインの物語かなと今まで片付けていましたが、戦争によって自分が生きる常識が一変する世の中の激しい流れに耐え抜き、変化を受け入れて今までの常識を超えることにチャレンジした、人間の逞しさを描いたドラマだと改めて感じました。

Scarletの一番の魅力は、何と言っても時代を生き抜く逞しさです。 それを決定づける文章があり、その一文が、洋書で長編小説あることを躊躇せず挑戦出来た決め手でもありました。 その一文は、物語の一番初めの文章です。 Scarletは決して美しくありませんが、男たちは彼女に魅せられるとそんなことに気に留めない、という内容です。 そう、Scarletは顔の造りや身体つきといった表面的なことではなく、内面で男性を惹きつけていたのです。 その魅力というのは、戦火を生き抜き、頼りにならない家族をまとめあげて実家を再建し、優秀なビジネスマンとして活躍することになった、彼女のバイタリティーにほかなりません。 ただ、頑張り過ぎて、Scarletが心から気を許せる仲間はほとんどいませんでした。 美化しまくってAshleyを愛していたため同志とも言えるレット(以下Rhett)には心底心を開いているとも言えないし、家族を守るため資金繰りするために北部出身者と付き合って南部出身の仲間達から敬遠されるし、そもそも家族はいろいろと難ありで頼りないし。 戦時中、戦後を生き抜くために必死だったので仕方ないのでしょうけど、ほんの少しでもScarletに人に歩み寄る心の余裕があれば、もう一人、二人くらい彼女の仲間になってくれる人が現れたのではないかなと気の毒に思います。

2020年から我々を取り巻く環境は、全世界的に、自分達の意思とは別の力で様々な「常識」が覆されました。 Scarletも自分を取り巻く環境の大きな変化に耐え抜き、南北戦争により自分の故郷である南部が負けてのちに北部の人を受け入れた、今までの常識を超えた人です。 彼女のように、変化を受け入れられる柔軟な考え方と逞しい気質が、変化の大きい世の中を生き抜くために必要で、彼女はまさに体現しています。 こじらせ女子Scarletの恋愛は一筋縄ではいきませんでしたが、時代の変化に乗って突き進む頑張り屋の彼女の姿勢は、誰しも共感できるものなのではないでしょうか。


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