Author: Joe Hill
翻訳版の有無: あり。「ホーンズ 角」
映像化: あり「ホーンズ 容疑者と告白の角」
英語レベル: Advanceレベル(洋書を一年間に1冊読了出来る)
この本は、こんな人達にオススメします。
・人に言えない秘密を抱えている人
・守りたい大事な人がいる人
・かつて優しい嘘をついたことがある人
私がこの作品に興味を持ったのは映画版がきっかけです。
主演がダニエル・ラドクリフ。
ハリー・ポッター役のちょっと影があり薄幸な少年のイメージが一変、ダークファンタジーの主人公を演じるのだから、どんな作品なんだろうとうきうきして、本に手を出しました。
あ、映画は結局まだ観ていません 笑
本作品は、言うなれば、一つの優しく悲しい嘘をきっかけに悲劇が訪れてしまう物語です。
作品に登場するイグ(Ignatius)、メリン(Merrin)、リー(Lee)は各々嘘をついて、その結果が積み重なり、悲劇が生まれてしまいます。
悲劇を引き起こすのはメリンの嘘ですが、彼らが十代で出会い現代に生活する十年の間にイグ、リーも嘘をついていて、その積み重なった嘘の上に築かれたのが三人の関係でした。
まぁ、嘘嘘言いましたが、イグは自身が付いた嘘に対して正直に自分の気持ちを告白しましたが、メリンの嘘は悲劇を引き起こし、リーはこれまでについてきた嘘の種明かしをしたことで、自分の気持ちが拒絶されてしまうことになりました。
物語はいくつかの章に分かれています。
時間軸は現代から始まり、イグ視点で彼らの出会いの年へ追憶し、再び現代に戻り、今度はリー視点で過去に戻り、また現代に戻る形で話が進みます。
三人は幼馴染。
彼らが十四、五、六歳頃に通っていた教会で出会います。
この出会いの時点で、彼らの関係の結論は出ていました。
現代では友人同士の良い関係を保つ三人ですが、結局は二人の男と一人の女。
イグとメリンはこの出会いをきっかけに、のちに恋人同士になります。
教会での出会いはメリンの十字架のネックレスです。
メリンが首に掛けていた十字架を使って反射させ、イグの顔に光を当てました。
彼女の後ろの席に座っていたリーは、彼女の十字架が壊れていることを見つけますが、メリンはリーに興味を示さず。
代わりにメリンは、その十字架を席に置き忘れた振りをして、イグに届けさせます。
それが、三人の出会いでした。
イグがメリンに十字架を返す前に、様々なエピソードを交えますが、その中に小さな嘘が含まれました。
イグは、本当は渡したくなんかないのに、拾ったメリンの十字架を一旦手放してリーに渡してしまうこと。
リーも、自分の手に渡った十字架を本当はイグに返したくはなかった。
なぜなら本当は、リーもメリンに興味を抱いていたから。
リーは「なんかあの女の子のことが気になるんだよな」と自分の気持ちをほのめかす程度でしたが、イグは「彼女に片想いしている」とはっきり気持ちを告げます。
イグの気持ちの告白と別な物との交換条件に、リーは十字架を返すのでした。
リーはメリンに対する気持ち以外にも数々の嘘をつきまくっていました。
それが元でリーは深い傷を負うことになるのですが、改心し周囲に誠意を見せることで信頼を回復し、傍で見守るイグとメリンの親友として確固たる地位を築きます。
ですが、メリンへの気持ちを隠し通すことでつき続けた嘘、「メリンのことが好き」は、メリンがついた優しい嘘を引き金に溢れ出ることになります。
三人の嘘が悲劇を呼び、三人の関係に終止符が打たれます。
イグはある朝鏡越しに自分に角が生えていることに気付きます。
その角はいわば悪魔の角。
彼と接した人達は心にしまった本音を話さずにはいられなくなります。
見知らぬ人達が抱える心の闇。
イグの両親が必死に隠そうとする、イグへの嫌悪感。
イグの兄テリーは、悲劇の真相を口にしてイグを苦しめます。
その真相と向き合ったイグは徐々に角の力に浸食されていきます。
三人がこれまでについた嘘によって、人間関係が壊れていく様はどこの恋愛小説にも出てきます。
その人間関係崩壊による悲劇や復讐劇が始まるといったこともありますが、それがファンタジーめいた描写は中々ありません。
三人の危うい友情と、嘘をつきながらも心の底では相手を思いやっていた描写もあり、やるせない気持ちにもなる作品です。
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