Author: Diana Wynne Jones
翻訳版の有無: あり。「チャーメインと魔法の家」
映像化: なし
英語レベル: Advanceレベル寄りのBasic(洋書に一日3分向き合える)
この本を読むと、「GiveとTakeのバランスは大事であると学べる」というベネフィットを得られます。
本作品が「ハウルシリーズ」と呼ばれる最後の作品です。
チャーメインは本が大好きな少女で、過保護な母親から家の手伝いは何もしなくてよいと躾けられたので、本当に本ばかり読んでいる少女です。
そんなある日、叔母から親戚の魔法使いウィリアム・ノーランド氏の家を管理するよう、依頼されます。
その家は魔法の家で、一つのドアが洞窟やら王の城への道へ繋がっているやらと、何ともわくわくする仕掛けがされています。
このチャーメイン、読書好きではありますが、何もさせてもらえない家から飛び出してノーランド氏の家を管理する役割を与えられることに喜びを覚える素敵な少女です。
「本を読む時間が減るから嫌!」とか言わず、自分の可能性を試したい子。
うぅん、すごく共感できる。
親は、特に母親は子供可愛さになんでも手を出してあげて守っているけど、子は(この場合チャーメイン)自分の可能性を試したいんですよね。
親戚の家に行くことで一人の子供が成長する話だと思っていたら、王族の陰謀も絡み合い、人間の成長とファンタジーがバランスよく物語を作っていました。
時の王とその娘ヒルダ王女は、王位継承者の王子ルドヴィックが気に食わないようですが、どうにも彼を廃位は出来ない様子。
彼を取り巻く陰謀があり、その謎を突き止めるべく召喚されたのが魔女ソフィーということで、第一巻に登場するソフィーも活躍します。
ちなみに舞台は、ソフィーが住むインガリーではなかったです。
さて、本作を読むベネフィットですが、まさにGiveとTakeの話。
チャーメインは、実家にいる間は自分が好きな読書をする時間がすべてでした。
でも、自分で家事をしてみたいという願望もあり、ノーランド氏の家の管理はうってつけの機会です。
意図せず相手が家事することで、相手の時間をtakeしてきたチャーメイン。
今度は自分がgiveしたいのです。
ノーランド氏の家は魔法が仕掛けられ、直接手を出さずとも魔法で解決出来る家事なども登場します。
一方で、この家を管理する場面を共にするのが、ノーランド氏に師事したいと懇願の手紙を出し、訪れたピーター少年(Peter)と、ノーランド氏の飼い犬ウェイフ(Waif)ですが、彼らと家事の時間を共にすることで、チャーメインはより成長するのです。
彼女がこの魔法の家でお願い事をすると、ノーランド氏が掛けた魔法により叶います。
例えば、「食事を出して」と言って朝食が出てくるシーンがありますし、「この料理はどうやって作るの?」と聞くとノーランド氏が残した魔法がレシピと方法を教えてくれます。
一方で、ピーターとの掛け合いは違います。
家事はすべて自分の手で行わなければならず、そこに時間を割かなければなりません。
チャーメインと違ってピーターは家で親の手伝いをした経験があることから、最低限の家事は出来ます。
洗濯の経験がないチャーメインに、手ほどきをするのがピーターです。
(皆さん、白い衣類と色物の衣類は分けて洗いましょう。)
おそらくチャーメインは一人っ子で、周りに大人ばかりがいるし、読書好きのために同世代の子供達との交流が少ないように見受けられますが、ピーターのお蔭で切磋琢磨します。
理詰めのピーターのために、何度か苛立つチャーメイン。
でも、彼との交流により感情もはっきり表します。
彼女は内省的なので、いちいち感情的に反論せず、内心苛立つという体で記されています。
家事の時間は自分の時間を捧げることになり、時たま自分のペースをピーターによって乱されるチャーメインは苛立ちますが、この様子は私達の現代社会にも見られる光景ですよね。
毎日の生活で当たり前と思ってしまい、感謝の心を忘れがちなインフラ。
そして家事。
これらを回すチャーメインとピーターの姿に、giveの精神を見ることが出来ます。
もちろん、giveのやりすぎもいけません。
心が疲弊するし、なぜ自分だけ時間を割かなければならないのだと、不満が出ます。
まさにバランスが大切だなと感じる作品です。
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