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Book Report: The Lighthouse Sisters

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 8月2日
  • 読了時間: 6分

Author: Gill Thompson

翻訳版の有無: なし

映像化: なし

英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了できるレベル)


「過去のクロスロードを意識したら、その決断をほめてほしい。」


あの時、こうしていたら。

あの時、こうしていなかったら。


人には必ず一回は、自分が決断したこと振り返る瞬間があると思います。

どちらの決断がよかったかは、人それぞれ感じ方が違いますが、「こうしていたら」の決断も「こうしていなかったら」の決断も、最後には花丸になるのだと信じています。

受け取っていても、断っていても、どちらも正解なのです。

迷いが出るのは、自分の気持ちが揺らいだ時や、誰かと自分の現状を比べた時。

だから、過去に選んだ決断が正しかったか迷う。


こんな偉そうなことを書いていますが、私も●●だったらと、これまで自分が下した決断に迷うことがあります。

迷いが出た時は、私は、今ここにいる自分が手にしているものに集中するようにしています。


本作は、メインとなる登場人物達が「あの時、自分が違う決断をしていたら」と常に迷う様子を描き、私達に決断の大切さを教えてくれています。

第二次世界大戦が今まさに引き起こされるという時代のイギリス、看護師として勤務する姉のアリス(Alice Robinson)と数学に強い妹ジェニー(Jenny Robinson)は、両親と弟ウィリアム(William Robinson)と生活しながら、時代の不穏な変化を薄々と感じ取って生活していました。

基本的に仲のいい一家ではありますが、教鞭をとる父ジェームス(James Robinson)に似て学問に強いジェニーは父のお気に入り。

自分の世界に閉じこもりがち(おそらく、自閉症かと)なウィリアムに母アネット(Annette Robinson)のはつきっきりで、仲のいい家族の間でアリスは自分が誰からも選ばれない存在のようだと疎外感を感じていました。

加えて、ジェームスのかつての生徒であり、姉妹の幼馴染であるピップ(Philip Marett)もジェニーに恋していて、尚更アリスを苦しめます。

三人ともティーンエイジというところもあり、繊細で微妙な空気を感じ取る年齢ですから、アリスにしろジェニーにしろ、それぞれが醸し出す気まずい空気を感じ取ります。

困ったことに、ジェニーはピップに対する気持ちは友情以上のものはなく、ピップの恋心を受け止められないから困惑するばかり。

目下ジェニーはケンブリッジ大学へ進学し、勉強に励む未来を描いているので、今のところ恋愛なんて考えられないのです。


三角関係を動かしたのは、皮肉にも時代の流れ。

第二次世界大戦が本格化したのです。

欧州に住む彼女達なので、特に当時のドイツやイタリアの動きには敏感だったかと思います。

アリスにはユダヤ人の友人レベッカ(Rebeka)がいて、物語の中盤で、レベッカに隔離施設へ収容されるという危険が迫るのですが、そんなレベッカをアリスが助けるシーンが出てきます。

こういう時代の流れの変化があると、物事の本質が浮き彫りになるのはどの作品も同じで、平時の時にもてはやされた勉学の世界にいたジェニーは居場所を失っていき、看護師という命に係わる職種で働きお金を稼ぐアリスは一家を支える存在になる逆転現象が起きていきます。

とはいえ、ジェニーが家族から蔑ろにされたというわけではなく、一家の中心人物かアリスへ移っただけのこと。

ジェニーは持ち前の学力の高さを生かし、世間の動向を探る諜報のような活動に力を入れていきます。

やがてアリスは仕事へ、ジェニーも諜報の行動へ集中するため二人は離れていきます。

ピップはというとジェニーと行動することが増えたため、アリスは必然的にピップの大切な人がジェニーであることに気づいていきます。

人間関係の構図を受け入れ、静かに自身の失恋を受け入れていったある日、当時の敵国だったドイツの兵士ステファン(Stefan)がアリスの前に現れます。

医師アンドリュー氏(Sir Andrew Beaumont)がステファンの手術を執刀し、アリスが手伝った過去があるのですが、その縁でアリスとステファンは急接近。

当時のイギリスの情勢では、ドイツ人と懇意にすると白い目で見られることをわかっていながらも、アリスはステファンに惹かれていくのがわかりました。

一方のジェニーも、共に行動することが当たり前になったピップの存在の大きさを感じながらも、どうしてもピップを異性として見ることが出来ない事実に苦しんでいました。

両親や兄弟との関係も変わり、一番近くで一番長く自分に付き添ってくれたのがピップ。

やがて、諜報の動きが当局にかぎ取られ、所持を禁止されたワイヤレス機器を所持するところを見つかったことで、ピップは当局へ連れていかれ拘束されます。


戦争によって引き離され、翻弄される二組の男女。

アリスとジェニーは、作中で大切な人から離される場面に出くわします。

このことから、読者が意識させられたのが冒頭にも書いた「あの時、こうしていたら」と「あの時、こうしていなかったら」ということ。

アリスとすれば、ステファンとの関係に対し、様々アクションを起こしていくのですが、行動を起こしたことでついてきた結果に悩まされます。

自身の行動の結果により、苦痛が伴ったステファンへの愛情は、アリスに何度も「あの時私が行動を起こしていなければ、こんなに苦しむことはなかった。でも愛ゆえの行動だった」と考えさせます。

ジェニーはアリスと反対に、「あの時、私さえ折れてピップの愛情を受け取っていたらどうなっていたのか」という意識を常に持ち続けることになります。

ピップへの想いを受け止めきれないうちに、ジェニーの環境が大きく動いてしまいました。

後になってピップの存在の大きさに気づいたジェニーは、何度も違う未来を想像するのです。


これまで、フィクションのジャンルですが、戦争を舞台にした物語を読んできましたが、明らかに人生のクロスロードを意識した作品は本作が初めてかもしれません。

それだけに、姉妹の比較が面白かったです。

どちらの立場がいいのかとか、比べる要素がたくさんありますが、アリスとジェニーの人生に優劣はありませんし、その時の立場に置かれた二人が精いっぱい人生を生きただけのことです。

私達も現実世界で、たくさんの選択を迫られます。

そのたびに「あの時やってれば」「あの時やらなければ」と迷いが出ることがあると思いますが、今でも後悔するなら、もやもやする気持ちを昇華するアクションを起こせばいいし、寄り添ってあげればいい。

その決断のお蔭で今の自分があるとほめてあげてほしいです。



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