Author: Jennifer Weiner
翻訳版の有無: あり。「イン・ハー・シューズ」
映像化: あり「イン・ハー・シューズ」
英語レベル: Advanceレベル寄りのBasic(洋書に一日3分向き合える)
この本は、こんな人達にオススメします。
・相容れないけど憎めない姉妹がいる人
・家族と向き合うことに蓋をしている人
・靴が好きな人
原題を初めて読んだ時、私は「In Her Shoes」ってその彼女の靴の中に何が入っているのだろう、と疑問を抱きました。
In her shoes、あるいはin one's shoesは、その人の立場になってみないとわからない、という意味の慣用句です。
You will understand her struggle once you are in her shoes.
彼女の立場になれば、彼女がなぜ彼女の苦しみがわかるよ。
今回の作品は、同じ靴のサイズを持つ姉妹が、ある決定的な不和を通じて自分自身、そして姉妹の立場を想いやる物語を描いています。
弁護士で優秀な姉ローズ(Rose Feller)と職を転々とする妹マギー(Maggie Feller)は、悲しく窮屈な家族の中で寄り添いながら生きてきました。
悲劇的な母の死、父の再婚、仲の良くない再婚相手と継妹と生活を経た二人は、性格や価値観の違いを理解しつつ、たった二人の姉妹であるためお互いを大切にしています。
ですが、ローズはマギーが疎ましいし、マギーもローズが疎ましい。
というのも、マギーの視点ではローズは世話焼きで正論ばかりで母親面する、しかも弁護士という職業柄、頭の良さが鼻につく。
一方のローズも、すべてにおいてだらしないマギーに苛立ちます。
宿なしになったマギーを引き取ったローズですが、マギーは姉の家でやりたい放題。
ローズが一度も履いていない靴を勝手に使い、夜の街に出かけ、トラブルに巻き込まれて最後にはローズが尻ぬぐい。
そしてマギーが起こしたある行動により、ローズとマギーの仲が決定的に決裂します。
寄り添い合いながらも反発する二人は、実は互いにコンプレックスを刺激する存在です。
ローズは自分の容姿、マギーは知性と知識。
ローズは、太っていないにせよ、マギーのように美人でもなければスタイル抜群でもない。
(Fatとかoverweightではないが、chubbyといったところでしょうか)
ストレスからダイエットに頓着せず、太る元となるような食事生活をしています。
マギーは学習障害があり、一定の学年以降、彼女は勉強への意欲をなくします。
その上、当時やけになったマギーに対し、彼女の体目当てに接触した男子同級生がいたエピソードから、彼女は男を落とすために自分の体を使うようになります。
ローズもマギーも自己肯定感が低く、自分に自信がなく、まるで自分の課題が鏡合わせのように、大切な家族でありながらもお互いが疎ましく感じていました。
彼女達を取り巻く人々もなかなか個性の強い人たちばかり。
ローズとマギーが決定的な不和に陥る原因になった、ローズと付き合っていた弁護士の同僚ジム(Jim Danvers)はハンサムで頭の切れる人。
でもその容姿に自信を持っているので、堅実を絵にかいたローズを大切にしていない。
同じくローズの同僚サイモン(Simon Stein)は、ジムと違い人の目を引き付けるような見た目ではありませんが、ローズに好意的。
彼女の理解者であるエイミー(Amy)は、ローズから聞くちゃらんぽらんな妹の話から、苦労する彼女に同情的です。
気が弱く妻の言いなりな父マイケル(Michael)、絵に描いたような継母シデル(Sydelle)も特徴的です。
そして忘れてはならないのが、ローズとマギーの祖母エラ(Ella)。
ローズとの決別後にプリンストン大学の図書室へもぐりこんだ後、再度トラブルを起こして今度こそ行く当てを失ったマギーは祖母を頼り、そこで自分を見つめ直し、自分の居場所を自分の手で作り上げていきます。
恋愛も描かれる本作品ですが、物語を通じて描かれるのは家族間の許しです。
安らぎのない家庭の原因である母の死、彼女を失った傷から娘達とうまく向き合えなかった父、継母との緊張感のある家庭、そして彼らから離れることを選んだ祖母。
家族の不和の原因を一手に浴びたローズとマギーが、お互いが抱えるコンプレックスと家族の過去に向き合い、成長を遂げることになります。
小説としてよくある話ですが、ローズとマギーが自分とどう向き合うか丁寧に描かれているし、決して綺麗事にしていないところに私は心惹かれました。
十年以上前に映画化されていますが、きっと今観ても色褪せていないし、原書で読んでも面白いです。
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