top of page

Book Report: It Ends with Us

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 7 日前
  • 読了時間: 4分

Author: Colleen Hoover

翻訳版の有無: あり「ふたりで終わらせる」

映像化: あり。「ふたりで終わらせる」

英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了できるレベル)

*続編にIt Starts with Usがある。


「心震わす初恋か、フィジカルにも求める関係か」


本作は実話に基づく物語で、そこに愛があるからこそ、主人公が出した決断が難しいものだったと言えます。


本作の実話を引っ張り出すと、筆者の実母は筆者の実父から暴力を受けていたようです。

つまり、作者はドメスティック・バイオレンスが起きている家庭で育った人でした。

どうも時間の経過と共に、母は父と離婚することを決めたのですが、筆者にすれば実父も実母も大事な人には変わりありません。

本作を作るにあたり、二人が登場人物のモデルになっていますが、暴力をふるう男性が心底悪役でないところがまた作者の愛情が感じられる部分でした。

この点も本作を通じて、登場するキャラクターたちが誰しも根っからの悪役でないことが明らかになっていきます。


リリー(Lily Bloom)には忘れられない初恋の男性がいました。

その彼アトラス(Atlas)は、リリーが自身の家庭内で日常的に繰り広げられる両親のドメスティックバイオレンスに悩んでいた頃に知り合った、同じ学校に通う上級生です。

アトラスも自身の家庭に悩みを抱えていた生徒で、周囲から浮いた存在でしたが、そういった心の傷からか、リリーとアトラスは傷を癒し合うように寄り添って友情を深めていきました。

その友情は、仄かな愛情を育むようになりましたが、リリーの家庭環境が原因で実ることのない初恋で終わりました。

リリーの元から離れて軍に入ることになるアトラスですが、いつかアトラスが根を下ろすことになるマサチューセッツ州ボストンで再会することを誓い合い、二人は別れました。

時は流れ、結局アトラスと再会することがなかったリリーは、不幸な家庭環境の原因だった父が亡くなり、生まれ故郷を出てボストンに住み、自分の生業をまさに決める段階にいました。

ある夜に、仕事が原因でフラストレーションいっぱいの怒り溢れる男性ライル(Ryle Kincaid)と出会います。

ライルは脳神経外科医(neurosurgeon)で、事故が原因で幼いながらに亡くなった患者と向き合ったばかりの状態で、リリーは何とも重苦しい空気ながらも、ライルとの出会いがあまりに印象的だったために、リリーの中でいつまでも残るワンシーンとなりました。

リリーはその後すぐに、自身が経営する花屋をオープンすることを決め、準備に取り掛かります。

その準備の最中に知り合った女性、アリッサ(Allysa)は気さくな人で、花屋のオープニングスタッフとして採用し、リリーは思いがけない友情を育むことが出来たのです。

世間は狭く、アリッサはライルの妹で、その縁もあって、リリーはライルと再会を果たすだけではなくアリッサと彼女の夫マーシャル(Marshall)、そして彼らの母とも顔合わせを済ませることになります。

元々、男女関係の築き方の認識にずれのあったリリーとライルでしたが、一緒にいる時間を過ごすうちにリリーとの関係構築を真剣に考え出すライル。

二人が真剣に交際を考える最中、リリーは、ある有名なレストランで勤務する男性と鉢合わせます。

その男性こそ、かつて再会を誓い合ったアトラスでした。


一人の男性と、将来を含めて関係構築を考える最中に、昔の恋の相手と再会し関係を考えさせられるリリー。

これだけで終わればシンプルに、どちらの男性との恋の成就を選ぶかという話なのですが、リリーはやがて自身の母と同じように、ライルから思わぬ形で暴力を受けてしまいます。

ライルを信じたい気持ちと、自分を大切に扱ってくれない事実に疲弊するリリー。

彼からの愛情も、自分が彼に持つ愛情も、本物だからこそリリーは悩むのですが、親の代から続く暴力の連鎖を次世代に持ち越さないために、自分が何をすべきなのか問いかけられたリリーは難しい決断を下すのでした。


本当の悪者はいない、というのが本作のテーマで、暴力を振るうライルも何かしらのトラウマを抱えていて、それを悩み通すのが彼のポジションでした。

リリーとしても、初恋のアトラスへの恋心と今一緒に過ごすライルとの関係で悩む姿が印象的でした。

様々な理由で結ばれることがなかった初恋が、「今ここ」の段階で目の前に提示されている。

とはいえ、今一緒にいる大事な人との関係も無下にできない。

そこに正しくない、暴力が含まれていようとも、というジレンマに思い悩むリリーの姿は、私達が誰かと人間関係を築く時に悩む姿とリンクして近くに感じることが出来ました。


私は、リリーの決断は正しかったと思うな。


ree

コメント


©2021 by 洋書Lovers普及委員会。Wix.com で作成されました。

bottom of page