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Book Report: Margo's Got Money Troubles

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 5 時間前
  • 読了時間: 5分

Author: Rufi Thorpe

翻訳版の有無: なし

映像化: なし

英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了できるレベル)


「何事も行動するところから物語が始まる」


マーゴ(Margo Millet)は十九歳にして、自身の人生を詰みました。

彼女が通う大学の教授であるマーク(Mark)と関係を持ち、彼の子供を宿してしまいます。

マークは三十代後半の既婚者で、子供も二人いて、ようは二人は不倫関係。

マーゴが書いた課題の出来がよかったところをマークが褒めたところから、二人の生徒と教授の関係に親密さが増し、やがて男女の仲になってしまったのです。

家庭を諦める気がないマークは、マーゴに子供を諦めるよう伝え、更にシングルマザーである母シャイアン(Shyanne)も、自身の苦労から子供を諦めるよう諭します。

しかし、二人の反対を押し切って出産を決意したマーゴ。

するとマークは一切の連絡手段を遮断し、シャイアンもマーゴの子育てに援助を拒否。

生まれたばかりの男の子とボーディ(Bohdi)を連れ、三人のルームメイトのいる我が家に戻っても、生活を乱されたくない二人は家を出ていく始末。

自分の人生は立ち行かない、子供の世話をしなくてはならない、何より経済的に困窮することになったマーゴは必死に援助を訴えます。

婚外子を生んだマーゴとその子供に生活を乱されたくないマークの母エリザベス(Elizabeth)から、子供の実父が誰かを明かさないこと、関りを持たないことを条件とするNDAとお金(ようは手切れ金)を渡され、一時的にお金の心配が消えたマーゴの元へ、彼女の連絡を受け取った父ジンクス(Jinx Millet)が訪ねてきます。

元はプロレスラーだったジンクスは、今は引退し、怪我による薬の常用から依存症と戦う生活をしているのですが、生活に困窮するマーゴ、今の生活を変える気がないため居住者が増えることが好都合のルームメイト・スージー(Suzie)との条件が合い、三人と赤ん坊という組み合わせで新たな生活が始まります。

とはいえ、金銭的な負担が解消されたわけではないマーゴは、仕事探しとボーディを預ける託児所探しに追われます。

そんな時、ジンクスの助言からたどり着いたのが、オンラインプラットフォームOnlyFanを使用しての仕事でした。

オンラインでアカウントを作成し、そのSNSを通じてサービスを提供し、お金を稼ぐという手法を取り入れたマーゴは、既存ユーザーを真似て自身の性的な写真を提供していきます。

始めは過激さを抑えて写真を投稿するマーゴですが、こういった類の写真ですから、ユーザーから性的にあからさまなメッセージや画像などが送られてくるようになります。

ですが、これを逆手に取り、男性から送られた性器の写真に対し面白いレビューを書くという、代金が伴うサービスを始めたことで、マーゴはまとまった額のお金を稼いでいくようになります。

他のSNSを併用して、知名度とお金を生み出すユーザーのケーシーとローズ(KC and Rose)ともコラボし、自身も稼ぎを生み出すマーゴ。

オンラインの世界に身を投じ、急な稼ぎを得ながらいわゆる晒しという危うさを経験していくマーゴの、若い女性として、母親としての成長を描いていきます。


本作を読んで感じたのは、何事も行動をして始まる、ということ。

マーゴの場合、誰も助けてくれる人がいなかったため、動かざるを得なかったというのが正しい言い方なのかもしれません。

本来なら頼りになるはずの母シャイアンが彼女の助けを拒否したのは、二つの理由があったため。

自身もシングルマザーとしてマーゴを育てた過去を持つシャイアンは、ジンクスとついぞ結婚が出来なかったつらい過去を持ちます。

実は、マーゴはジンクスとシャイアンが不倫の末に出来た子供でした。

本妻との間にも子供がいて、そちらの子供達はしっかり生活を築いているし、そちらの子供達には時間を費やすジンクスの姿に、心を痛めたのはシャイアンです。

不倫に対して意見を述べるつもりはありませんが、既にパートナーがいる相手が、本命パートナーやその人との間に出来た子供達のように、自分やその娘にも同じくらい時間とお金をかけてくれないという事実があり、それは当然の事。

マーゴがかつて自分が経験したことをするという現実に、シャイアンは反対するのは道理です。

そして、更にシャイアンの立ち位置が複雑なのは、彼女は今、ケニー(Kenny)という男性と結婚を前提に真剣交際しているということ。

愛するジンクスと結婚することを叶えられなかったシャイアンは、ケニーとそれを叶える段階にあり、いくら娘とはいえ、自分の幸せの障害になりそうなものを排除したいと思う女性の心がありました。

やがてそれは、マーゴとの関係を揺るがす事柄になるのですが、どう展開したかは本作を読んでのお楽しみです。


マーゴが出産を決意しなければ、また元の大学生活を送り、いずれ単位を取り、就職するなどの選択肢があったことでしょう。

子供を諦めるのも、出産するのも、結局女性側のマーゴが悩み通し、苦しみ抜くことになるが本当に理不尽に感じます。

出産後も苦労するマーゴですが、オンラインの新しい世界に飛び込むことになるのはまさに現代的な設定で、既存の「未婚を選んでシングルマザーになった女性が新しい世界に飛び込む」に新たに加わったなと感じました。

マーゴはとにかく行動的なのが本作を明るくする要素なのですが、オンラインビジネスに協力的なルームメイトのスージーと父ジンクスの存在は、本作の救いでした。

また、泥沼になるマークとの関係の結末や、オンラインを通じて知り合う顧客の一人JBとの仄かな関係も、始終、金銭面の不安がちらつく作品に面白いスパイスとなってくれています。

やらざるを得なかったとはいえ、母親になった女性は強いなと思いました。


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