Author: Julia Quinn
翻訳版の有無: あり。「突然のキスは秘密のはじまり」
映像化: あり「ブリジャートン家」
英語レベル: Advancedレベル(一年に一冊洋書を読了できる)
この本を読むと、「自分のルーツを大切にする大事さを学べる」というベネフィットを得られます。
いよいよブリジャートン家シリーズも佳境に入りました。
各々独立した物語ですが、兄弟八人の恋物語も一人ずつ網羅されていき、残り二人というところに来たので物悲しいですね。
さて、今回は末っ子ヒヤシンスのお話です。
先代のブリジャートン家の子爵が亡くなった後に生まれた子供で、父親を直接知らず、兄弟から聴くエピソードで父を思う立場にあります。
母ヴァイオレットも、突然夫を失った悲しみを経験していましたが、ヒヤシンス誕生によって心を取り戻したというエピソードがありました。
そんな彼女とペアとなるのが、あのダンブリー夫人の孫ギャレス(Mr. Gareth St. Clair)です。
ヒヤシンスはダンブリー夫人をメンターとして慕う設定なので、彼女の親戚筋とペアになるのは自然な話ですね。
そのギャレスも、父親に関するスキャンダラスな過去に悩まされて、放蕩生活を送る孤独な青年として描かれています。
毎週火曜日に、ヒヤシンスがダンブリー夫人の元を訪れ、本の読み聞かせをするところから二人はお互いの存在を認知し合います。
父親に関する寂しさを抱えるという共通点の他、ギャレスは亡き兄の妻(彼にとって義理の姉)から手渡された、父方の祖母の日記により、ヒヤシンスとの距離が縮まっていきます。
父方の祖母イザベラはイタリア出身で、イタリア語で書かれた日記の解読をヒヤシンスが引き受けたことで、ギャレスとヒヤシンスは思わぬ謎解きに巻き込まれていきます。
二人の恋の始まりは、この日記ですが、作品を通じて二人とも家族のルーツに関して向き合うことになります。
冒頭に記載したように、二人は父親に関する空虚感を抱いています。
思い出の中でしか父を見いだせないヒヤシンス。
確かに家族からは深い愛情を受けていますが、父親が生きていたらどう接していただろうと想像を膨らませます。
彼女を含む子供達の幸せな結婚を願う母を、疎ましいと思う時に、彼女から逃げ出す先は父の元ではないのかと想像してしまうのです。
またギャレスは、父との不和を作中で繰り広げます。
彼の行いはすべて、父に認めてもらいたいという気持ちから。
ヒヤシンスへの想いも、「自分の恋を叶えられる自分」を父に認めてもらいたいというギャレスの無意識の行動でもありました。
その歪んだ関係をヒヤシンスに感づかれるギャレス。
そしてその父との不和の理由も、父方の祖母の日記を紐解くことで、徐々に明らかになっていきます。
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