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Book Report: Jo's Boys

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 1 日前
  • 読了時間: 5分

Author: Louisa May Alcott

翻訳版の有無: あり「ジョーの少年たちとのプラムフィールドの生活」

映像化: あり。「ナンとジョー先生」

英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了できるレベル)


「人の成長を楽しんで見守ることが出来るのは、どれだけ幸せか」


このテーマ、私はどうなんだろう、って自分の立場に置き換えて自問自答してみました。

相手にもよる、というのが結論でした 笑

自分が、自分が、と自分にフォーカスする時もありますし、若手の成長を見守ることが出来ることもあります。


若草物語シリーズの最終章にあたる本作は、前作で登場した、プラムフィールドで学ぶ子供達が青年期に入り、外の世界から刺激を得て成長する物語です。

その若い子供達を見守るジョー達オリジナルメンバーも登場します。

プラムフィールドで学んだ若い子供達は、やがて成長し、人生を学び、恋をし、それぞれの人生を切り開いていく物語になっています。

特に焦点が当たるのは、前作の主人公でヴァイオリン弾きを志すナット(Nat)、ナットの紹介でプラムフィールドにやってきた孤高の青年ダン(Dan)、独立心旺盛で医学の道に情熱を注ぐナン(Nan)の三人で、彼らをジョー含めマーチ家に関わりのある同世代のデミとデイジー(Demi John and Daisy)、その妹ジョージー(Josie)、その従妹ベス(Bess)、ジョーの息子達のロブとテッド(Rob and Ted)、ジョーの結婚により彼女の甥となったフランツとエミル(Franz and Emil)です。

いつの時代でも普遍的な、「身分違いの恋」や「家庭を持つことと仕事への情熱のバランス」などが丁寧に描かれ、読むスピードが衰えませんでした。


私が気になったのは孤高の青年ダンの動向と、仕事に情熱を注ぐナンと彼女への一方通行の愛情を注ぐトム(Tom)の行方でした。

ダンは、自身の気難しい性格や、あまり安定しない自身の出自ゆえに、前作から問題児として描かれた青年でした。

その姿は本作でも健在で、それゆえに自由を求めて旅する人として描かれていました。

彼の心を癒す唯一の存在がジョー(Mrs. Jo)で、ダンにとってジョーはまさに母親代わりとして描かれています。

読者の私は、「ダン、ジョーのことを単に母親代わりとだけ見てくれていればいいのだけれど」と、彼の乾いた心を潤してくれたジョーの存在にはらはらしましたが、ダンのジョーに対する気持ちは母親への思慕として描かれたので、私の心配は杞憂に終わってくれました。

それでも、彼の人生は苦労続きで、最終話でダンが彼の人生を全うしたことを締めくくっていたのを確認したけれど、作品を通じて苦労したところを見ているので、本当に幸せになってほしいと思っていました。

ダンは、ジョーの次男テッド(Ted)に懐かれていて、本作でも二人は心の友として描かれるシーンが多く登場しますが、物語後半でダンが試練に会った時、ダンの心の重荷をテッドと分かち合うシーンに友情っていいなと思わされました。

ダンにとってジョー、あるいはジョーに関わる人達は、彼が生きていくために力と強さとなる人として登場します。


もう一人の気になる人物、ナンはプラムフィールドの女子生徒の一人として登場したキャラクターで、やや従順で親世代が求める女性像に忠実であろうとするベスやデイジーと違い、早い段階で自分のやりたいことをよく理解する人物として描かれています。

そういう意味ではジョーの姉、メグの末っ子のジョージーも女優の道を歩みたいと夢見るのだけれど、自分の意思を貫いたとはっきり描かれるのはナンの方です。

ナンは、自身の経験から医学の大切さを理解し、プラムフィールドでも同世代の子供達に医学を施してきました。

青年期にもその情熱は衰えず、医学の研究を続ける女性として描かれています。

彼女に好意を寄せる、同じプラムフィールド出身のトムの熱意にも目もくれず、しっかりと自分を持ち続けます。

ナンとトムの姿は、かつてのジョーとローリーにも例えられますが、この二組の決定的な違いは、男性が持つ熱意を女性がどれだけ理解していたかという点でした。

かつて、ローリーの熱意にジョーも悩みます。

それもそのはず、ジョーは作家という職業につきたいのに、ローリーの好意を受け入れれば夢を諦めて夫人にならなければならないから。

ローリーはお金持ちの家の一人息子で、彼の夫人になる人はそれなりに家をまとめあげなければならない。

21世紀に生きていない彼らなので、今ほど女性の社会進出に理解があったとは思えませんが、ジョーの少女時代はナンの少女時代に比べ、女性が社会に出て活躍することを良く思わない時代でした。

更に、冒頭に書いたように、ジョーはローリーの好意をよくわかっていたからこそ、自分の夢と葛藤したのであって、一方のナンはトムの好意に全くの無頓着。

トムは自身の恋が報われないと知っていながら、ナンへの好意を示し続けるのです。

その後、トムが自分が持つナンに対する熱意へどう決着させたのか、をみると、おそらくすんなり納得するはず。

私は納得できました 笑

今の時代に比べて、まだまだ女性の社会進出が認められていない時代。

女性の仕事への情熱や社会的に自立することに対し、男性側がどれだけ理解を示していたか、それも心から受け入れられないとうまくいかないことを、この作品を通じて示してくれています。

恋に、夢に、人生に悩んだ子供達を見守りながら、ジョーは素敵な青年期と中年期を過ごしていくことになります。

どの登場人物の立場でも楽しめる作品です。


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