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Book Report: Little Men

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 10月4日
  • 読了時間: 4分

Author: Louisa May Alcott

翻訳版の有無: あり「リトル・メン ジョーの少年たちとのプラムフィールドの生活」

映像化: あり。「リトルメン」

英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了できるレベル)


「あなたの安全地帯はどんなところですか?」



子供だったマーチ家の姉妹が大人になり、もっと若い子供達に焦点を当てていくようシフトしたのが本作です。

リトル・メンと銘を打ち、始まった「若草物語」の第三部ですが、 真っ先に思ったのは、この作品に登場する誰にとっても一緒にいることで安心感を感じられなければこの世界は成立しない、ということ。


この先は、第二部を読んでいない方にとっては結構なネタバレになるので注意。



まず明らかなのは、登場する少年たち。

プラムフィールドに、少年たちを集めて教育の機会を与える場所を作ったジョーとフリッツ夫妻は、親元を離れて暮らす少年たちにとって夫妻とこの学校はまさに安全地帯。

食事や金銭面での飢えを感じることなく、のびのびと豊かに生活します。

生活に必要な糧を学ぶため、各々に農学、家畜の世話、生物学などの世界から役割を与えられた少年たちは、責任をもってその役割をこなします。

主人公となるナット・ブレイク(Nat Blake)はヴァイオリン弾きの少年で、プラムフィールドに来たばかりの時は少し体が弱く、ある時、施設で一人で過ごしていましたが、同じく施設で生活するトミー・バングス(Tommy Bangs)と一緒にトミーが世話する雌鶏の小屋から卵を収穫する手伝いをします。

トミーはその卵を集めて、ジョーと売買し、ほしいものを買おうと計画を立てているのですが、こういった具合に少年たちは施設を出た後に必要な知恵を、日々の生活から得ているのです。

これも、自分達が身を置く環境が安全だから出来ること。

悪さをする人がいたり、あるいは反対に大人達がこぞって何もさせなければ、少年たちは学ぶことができないのです。


本作は施設にいる少年たちの何気ない日々をまとめた作品ですが、全員が他人同士なので、時にはぶつかる時もあります。

ナットが施設を来る前に知り合ったダン(Dan)も、作品の途中からプラムフィールドに加わりますが、彼は他の少年たちと違い、素行が悪くナット以外の少年たちから始めは煙たがられます。

とはいえ、毎日一緒に生活しますから、ダンに対する心の壁も薄くなっていくのですが、ある日、ナットとトミーの友情にひびが入る出来事が起きます。

その時はさすがに皆、安全地帯を侵される気分になりますが、彼らを見守るベア夫妻の存在や、各々が問題を解決しようという姿勢なので、最後にはナットとトミーの仲も修復に向かいます。


何より、私が安全地帯扱いするジョーも、心の安全が確保された状態で第三部の本作が繰り広げられるのが読者として私も安心です。

というのも、第二部を通じてジョーと幼馴染のローリー(Theodore Lawrence)の関係が「幼馴染」から「男女」に変わるのか、否かが繰り広げられ、久しぶりに文学作品にきゅんきゅんしました。

結果としてジョーは別の人と家庭を持っているし、ローリーもそれは同じで可愛い子供までいるのですが、プラムフィールドにはジョーの姉メグ(Meg Brooke)の子供のデミとデイジー(Demi and Daisy)も入園しているし、ジョーの子供もいるし、ローリーも訪れるたびに自身の娘ベス(Bess)を連れてくるし、いわばファミリービジネスと化している施設です。

ローリーは隣の家に住むジョー達の幼馴染でしたが、マーチ家に入り浸り、五番目の子供のように接してもらいます。

成長するとお互いの家柄の差を感じていくジョーですが、それ以上に心が乱れたのは、ローリーからの求愛でした。

結局、お互いが相手に求めるものが違い過ぎると理解するジョーがローリーを拒否し、失意のローリーをジョーの代わりではなく自身の意思で毅然と支えたエイミー(ジョーの妹)との間で愛情が芽生えて、二人が結ばれるという結末で終わります。

二人の間に何もないから、ローリーも頻繁にプラムフィールドへ訪れても、誰も妙な緊張感を感じないんだよな。

過去の事とはいえ、ジョーとローリーが一緒にいるシーンが描かれるたび、妙にどきどきするのは私の勘ぐり過ぎなところなのですが、家族間がうまくいっているからこそお互いに安心感を与えあえるのでしょうね。


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