Author: P.L.Travers
翻訳版の有無: あり。「帰ってきたメアリー・ポピンズ」
映像化: なし
英語レベル: AdvanceよりのBasic(洋書に一日3分向き合えるレベル)
この本を読むと、「不思議体験は意外と何度でも出来る」というベネフィットを得られます。
さて、あのメアリー・ポピンズが帰ってきました。
(なんかすごいことのように言ってますが、一読者なので、新シリーズ読み始めただけ。)
前作を読む限り、私が受けたメアリー・ポピンズの印象は、不愛想で自惚れの強い、そして秘密の多い人というものでした。
彼女が世話したバンクス家の子供達、特に「上のお姉ちゃん、お兄ちゃん」であるジェーンとマイケルは彼女のことをとても慕っていましたが、私だったらそこまで懐かないな。
と、疑問に思うメアリー・ポピンズの人柄ですが、バンクス家の面々はメアリー・ポピンズが戻ってきたことはとてもウェルカム。
雇い主からすれば彼女は優秀だったのでしょうし、子供達は彼女といることで得られる不思議体験に胸をわくわくさせていたのでしょう。
(この人といると毎日が楽しい、という感覚を表現する作品は、「メアリー・ポピンズ」の他に「長くつ下のピッピ」にも共通するように感じます。
さて本作でもメアリー・ポピンズを通じて、ジェーンとマイケルは不思議な体験をします。
メアリー・ポピンズの「リターン」の場面に始まり、彼女の親戚のアーサー氏(Cousin Arthurなので従兄弟かと)は第二月曜日にはすべてうまくいかないようになって憂鬱だし、メアリー・ポピンズと同じようにバンクス家に従事するロビンソン・エイ(Robinson Ay。未だに発音の仕方がわからない)はかつてある王様に仕えていたみたいだし。
そして、新たな兄弟も加わり、バンクス家は一層賑やかに。
前作同様、赤ちゃんが子供へと成長する過程で動物達の声を忘れていく、という表現をしているのですが、今回バンクス家に赤ちゃんが生まれ、その描写がまた見られました。
何度読み返しても切なくなる描写です。
さて、ベネフィットとは別にですが、この「赤ちゃんから子供へと成長する過程」で忘れていく能力を未だに持ち合わせるのがメアリー・ポピンズで、彼女が唯一無二の存在であり、それはとても孤独であることを本作を通じて読み取ることが出来ます。
バンクス家に加わった赤ちゃん、アナベルも生まれてから数日は鳥の言葉を理解していましたが、数日してすっかり忘れてしまいます。
この鳥=lark(ヒバリ)は前作にも登場し、メアリー・ポピンズの旧知という関係ですが、彼はアナベルの他に、バンクス家の双子の赤ちゃんジョンとバーバラが鳥の言葉を忘れる様子も見ています。
この文章だけ読むと、ヒバリの立場に立ち鳥の言葉を忘れていくことは悲しい、という気持ちになるかもしれませんが、一般的に人間は鳥の言葉を理解することは出来ません。
単に鳥のさえずりにしか聞こえません。
それは、「世の中の一般」に当てはめるととても幸せなこと。
動物の言葉をわからないのが人間です。
しかし、メアリー・ポピンズは鳥の言葉がわかります。
このヒバリは、彼女にとって単に一羽の鳥ではなく、旧知のヒバリ。
素晴らしい特殊能力であると同時に、一般的な人間は持ち合わせない力であるため、誰にも理解されない悲しさがあります。
他のエピソードは、単に不思議体験を楽しむことが出来ましたが、前作同様、赤ちゃんの誕生と動物の言葉を忘れていくシーンは悲しかったです。
そして、このエピソードから、本当のメアリー・ポピンズの姿に触れることが出来ます。
彼女はきっとこれまで、誰からも理解されない悲しさを体験してきたのだと、二作目にしてようやく理解出来るようになります。
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