Author: Roald Dahl
翻訳版の有無: あり。「マチルダは小さな大天才」
映像化: あり「マチルダ」
英語レベル: Advanceレベル寄りのBasic(洋書に一日3分向き合える)
この本を読むと、「自分と相手との小さな違いを認めてあげられる」というベネフィットを得られます。
あなたは、自分と誰かを比べた時に、生まれた場所は生まれ持った容姿だけではなく、性格なども含めて「こういうところが違うな」と感じたことはありませんか?
その時、その違いについてどういう反応をしますか?
本作「マチルダ」はまさに自分と人との違いをどれだけ認めてあげられかが、キーワードの一つになっています。
マチルダ・ワームウッド(Matilda Wormwood)は、初登場時、小学校未就学児の少女。
幼さとは裏腹に、文学と数学の能力が天才的というユニークさを持ち合わせています。
残念ながら、彼女の良さを彼女の両親は認めませんでした。
父親はマチルダを馬鹿にして息子マイケルだけを可愛がるし、母親は無関心。
元々知能が高く生まれついたマチルダは、近所の図書館に通い詰めて本の世界にのめり込むのも無理ありません。
そんなマチルダのユニークさをやがて理解してくれたのが、小学校の担任の先生となったミス・ハニー(Miss Honey)です。
マチルダは、最小学年で九九を習いたてなのにすらすら問題を解いたり、「愛読書はチャールズ・ディケンズ作品の一つです」と発言したり、小学一年生らしくありません。
彼女のような「天才」が本当に存在するとは思ってもみなかったミス・ハニーは、誰からも認められず、それでも健やかでいるマチルダを受け入れるようになります。
マチルダから他の特異さも打ち明けられて、学校が終わった後に二人でミス・ハニーの家を訪れる様子は心が穏やかになりました。
マチルダとミス・ハニーは、天才と凡人の対比です。
そして子供と大人の対比でもあり、苦難を今経験する子供とかつて子供時代に苦難を経験した人の対比でもあります。
知能や知識の吸収力、そしてそれを使ってトラブルを乗り越えるタフさを持つマチルダは、父親と大人達へ立ち向かう強さを象徴しています。
自らが行った行動がトラブルを引き起こした場合に相手から非難を受けると、マチルダは素直に謝る姿勢も見せますが、不当に扱われると真っ向から否定し、相手と戦う力強さも持ち合わせています。
幼い子供なのにタフだなと、私は本作を読んでいて彼女のタフさに感心しました。
子供の頃に大人達からの不遇を経験したのは、ミス・ハニーも同じですが、彼女はそのタフさを持ち合わせていなかったがために、大人の持つ力へ蹂躙し、服従するしかなかった過去が明らかになります。
これは、マチルダが天才でミス・ハニーが凡人だから、ということではなく、本人達が持つ心のタフさが影響しているでしょう。
マチルダはしっかりと自分がどんな少女なのかわかっているし、ミス・ハニーはそんなマチルダを認めているのです。
一度たりとも彼女を否定しないミス・ハニーには感心しました。
子供ですがきゃあきゃあ騒ぎ立てる性格はなく、静かな気質から大人びた印象のマチルダですが、彼女がのびのびとしていられたのは、ミス・ハニーという安心出来る大人がいたおかげです。
作中に登場する悪役は、マチルダの両親だけではなく、彼女が通う学校の校長トランチブル(Miss Trunchbull)で、学校を統べる校長先生だというのに子供嫌いというひどい女性です。
なら、なんで小学校の教員なのと、突っ込みどころ満載でした。
彼女の所業もひどいので、マチルダがトランチブル校長と対決するシーンは爽快でした。
Comments