Author: Herman Melville
翻訳版の有無: あり「白鯨」
映像化: あり。「白鯨」
英語レベル: Advanced(一年に一冊洋書を読破出来るレベル)
この本を読むと、「無謀とわかっていても挑戦したくなる気持ちになる」というベネフィットを得られます。
いえ、本作で登場人物たちは、無謀だと口にしてはいなかったはずですが。
モビィ・ディック、あるいは白鯨の話は子供の頃にアニメ「白鯨伝説」で触れたことがあり、頭の片隅に残っていました。
そして何かの折に、本作は長編なうえ難解で、読破するのが大変だと聞いたことがあり、私のチャレンジ精神に火が付いたのが読み始めたきっかけでした。
どうせ難しいなら、何かイベントを作って読めば、自分の気持ちも楽だろうと思い、毎日更新しようとイベントを打ち立てたのが運の尽き 笑
噂は本当でした。
主人公のイシュマエルと彼と仲間となる銛師のキークェグがピーコッド号に乗り込んだ後が、長かった。
本当に話が逸れるんだもん。
とはいえ、逸れて取り上げられた話というのが海やクジラに関する知識で、これらを取り上げることで航海の長さを表現しているし、そもそも知識あっての航海シーンが描写できるということなので、作者がいかに調査したかがわかります。
さて、鯨漁に出ることにしたイシュマエルですが、もともと漁師ではなく、世界の広さを知るために航海に出たという趣旨が冒頭に書かれていました。
そのコメントからして無謀のように感じましたが、世界の大きさを示す海に出て、自分が住む町以外の世界がどういう雰囲気か、どんな人がいるか、何を食べるか、どんな空気を感じられるか、など知りたいと思うのは自然のことだと思います。
もちろん今いる環境で満足するのもよいですが、高い視点で物事を見るためには今いる環境から飛び出してみるのも一つの手です。
イシュマエルは、自身の希望を叶えるために鯨漁に出て、ある特定の白いマッコウクジラ「モビィ・ディック」に対する執念を抱くエイハブ船長に出会い、海に出て、そして死闘を繰り広げることになります。
本作は自然の力(厳密には動物)と人間との対峙を大胆に描いた作品で、しかも舞台は海なので、力は自然の力と鯨に分がありますが、この鯨を仕留めるために惜しまないのが登場人物たちです。
約三年に及ぶ航海でモビィ・ディックと対峙することになりますが、決着の時はあっけないものでした。
苦労をしても、無謀でも、何か挑戦したいと思い行動に移すからこそ実現した、この航海。
結果はどうあれ、「○○に挑戦したいけど、大丈夫かな」と挑戦することそのものに足踏みする人の背中を押してくれる作品になっています。

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