Author: Tove Jansson
翻訳版の有無: あり「ムーミン谷の夏まつり」
映像化: なし
英語レベル: Advanced(一年に一冊洋書を読破出来るレベル)
この本を読むと、「物理的な距離に関わらず、大切な人への感謝を伝える大切さに気付くことが出来る」というベネフィットを得られます。
これまで読み進めたムーミンシリーズですが、どことなく水、具体的には水害に関わるイベントが多い気がします。
本作でもムーミン一家とその友人達は、火山の噴火が原因で起きた洪水をきっかけに、ムーミンとスノークメイデン、ムーミンの両親と友人達、そして再登場するスナフキンに分かれてスポットライトが当たます。
洪水から逃れた一行は、洪水によって流されてきた建物とそこに住むエマ(Emma)に出会い、そこが劇場で小道具や舞台に興味を持ちます。
ムーミンとスノークメイデンが家族たちと離れた木の上で休んだことで、洪水の影響で、翌日に離れ離れに。
漂流する先で、友人の一人であるリトルミー(Little My)が誤って水に落ちたことでそこから離脱し、彼女は偶然、ムーミン一家から離れて旅に出た後再び戻ってきたスナフキンと出会うことに。
心を打つのは、洪水という自然災害に見舞われて、近くにいる家族への心配すると同じくらい遠くにいる友スナフキンがどうしているか思うムーミンの姿。
今という時間を怪我無く過ごそうと注意すると同時に、一人旅に出てから帰らないスナフキンが元気か、いつ帰ってくるのかムーミンは気遣います。
私達にも共通する姿ですね。
家族、友人、仕事や趣味などコミュニティで繋がった人達と、徐々に絆が薄れていく人間関係の相手には、より気遣いの気持ちを表しやすいのではないでしょうか。
また、地元や家が好きなムーミンにとって、スナフキンの自由で何かに縛られない気質には惹かれるものがあるのでしょう。
近くのスノークメイデンや他の友人、スニフやミンブルの娘、その妹のリトルミーももちろんムーミンには大切な存在ですが、距離がある分、どうしてもスナフキンを思うムーミンの様子がフォーカスされがち。
(作品なので、そういう画風になるのは仕方がないですね。)
私達がこの様子から学べるのは、自分と相手の物理的な距離に応じて、相手を気遣う気持ちの濃度が異なってしまうこと。
近くにいる人達も、距離が遠い人と同じくらい大切だと思うのなら、感謝を言葉で伝えるのが必要になってくるということ。
私達も家族だと、何事もやってもらって当たり前と思いがちですが、相手と遠いところにいると気軽に感謝の気持ちを伝えることが出来る場合が多いです。
本作は、立場や物理的な距離に関わらず、何か与えてもらったら相手に感謝を伝える大切さを考えさせられる作品になっています。
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