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執筆者の写真Masumi

Book Report: On the Way to the Wedding


Author: Julia Quinn

翻訳版の有無: あり。「夢の乙女に永遠の誓いを」

映像化: あり「ブリジャートン家」

英語レベル: Advancedレベル(一年に一冊洋書を読了できる)



この本を読むと、「一目惚れと徐々に相手を好きになることとの違いに気づくことが出来る」というベネフィットを得られます。


ブリジャートン家シリーズ最後の作品です。

兄弟全員が幸せな恋愛結婚をし、それを間近で見てきた四男グレゴリー(Gregory)は、自身も同じように恋愛結婚したいと夢見ています。

自分の運命の女性も「一目見ればわかる」とし、いつ彼女と出会えるか心待ちにしていました。

何も根拠のないものを信じるという、危うい心持ではありましたが、その運命の日は訪れて、グレゴリーはハーマイオニーという女性に一目惚れします。

(面白いのがハーマイオニーはHermione Watsonという名で登場します。J.Kローリング氏のハリーポッターに登場するハーマイオニー・グレインジャーと、彼女を演じたエマ・ワトソン氏を混ぜたような、何とも不思議な感覚になります。)

ですが、ハーマイオニーはちっともグレゴリーに関心を向けてくれない。

実はハーマイオニーには、恋する相手がいたため、当然グレゴリーに興味が向いていない。

困ったグレゴリーを助けてくれたのが、ハーマイオニーの親友、ルーシー(Ludinca Abernathy)でした。

実はハーマイオニーの恋は身分違い。

彼女の恋が露見した場合に父親はその恋を許さない、ハーマイオニーが相手の男性と駆け落ちしたとしても幸せになりそうにない、とルーシーには親友の行く末が見えていて、身分でいえばグレゴリーなら申し分なしとして、グレゴリーとハーマイオニーの仲を何とか取り持とうとします。


やがて、ハーマイオニーの関心を得るという共通の目的を持ったグレゴリーとルーシーは奇妙な友情を深めていきますが、思わぬ邪魔が入ることになり、そしてその邪魔が入ったことでグレゴリーは自分の気持ちを見つめ直すことに。

ハーマイオニーといる時よりも、ルーシーといる時の方が心が躍り、自分らしくいられると気づいたグレゴリー。

ルーシーも、本作に登場した時点から、自分には婚約者がいるので男性には節度を持って接するというように、何事に対しても自分を律する女性でしたが、ハーマイオニーの恋、そしてグレゴリーの恋に接するうちに心が軟化していきます。

婚約者がいるという事実と、人を好きになるということの違いに徐々に気づいていくルーシー。

そして、好きになった相手がグレゴリーという事実に複雑な心情を抱えていきます。

いくつかの恋の展開がなされていく中、ルーシーの結婚話もいよいよ本格的に進められ、関わった人達は幸せを掴むために行動を起こしていきます。


この作品は一目惚れを扱っていますが、それは他のブリジャートン家シリーズと比べてあまり真新しいテーマではありません。

次男ベネディクトに焦点を当てた「An Offer From a Gentleman」(もう一度だけ円舞曲を)では、ベネディクトもソフィーに一目惚れするシーンがあります。

ベネディクトとソフィーのエピソードの場合、パーティーの企画のためソフィーの顔をちゃんと見てないというポイントがありますが、二人も探り合いながらも関係を深めていきます。

一目惚れをきっかけに、ベネディクトの場合はその相手を探し出そうとします。

人探しの過程にソフィーがいて、名前も知らない一目惚れの相手と形あるソフィーの間で悩み、結果、幻のような一目惚れの相手より生身のソフィーとしっかり関係を深めたいという結論を導き出したのがベネディクトでした。

一方のグレゴリーは初めから生身の相手に一目惚れし、その相手と関係を深めたいと努力しますが、先述したようにハーマイオニーとの関係を築けていない 笑

ハーマイオニーにとってグレゴリーは、しつこく言い寄ってくる男性のうちの一人にすぎません。

ハーマイオニーもなかなかの頑固な女性で、というか一途な女性で、恋する相手以外の男性に対し社交辞令でも関心を示さないという状態。

グレゴリーはますます燃えて、どうにかハーマイオニーの恋の相手になろうと努力します。

ですが、一方では、ハーマイオニーを話題にしてルーシーと作戦会議する時間が楽しいのも事実。

他愛もない話題でも話が弾むのです。

心の片隅では、グレゴリーも生身の相手との会話の方が楽しいと気づいているのですよね。

さらにグレゴリーは、この一目惚れを通して自分と兄弟との間で感じる溝のようなものに向き合います。

彼も心のどこかで、上三人の男兄弟と同じ輪に入りたかったという一種の疎外感を抱いていました。


上三人の男兄弟たちと年齢が離れているため、男兄弟同士のじゃれ合いが少ないグレゴリーはどこか押しが弱い。

アンソニー、ベネディクト、コリンと男が続くため、彼ら三人の結束は強いです。

すぐ下の妹ダフネやエロイーズとの絡みでは、彼ら三人がごろごろついてきましたが、以降の兄弟のエピソードでは、三人と下の兄弟たちと年が離れていること、三人とも既に結婚していたこともあってか、独自に向き合っています。

グレゴリーと年齢の近い兄弟は末っ子のヒヤシンスで、本作でも彼女が登場し、彼の精神的な手助けをしてくれます。

男兄弟より女兄弟と近かったグレゴリーの葛藤も描かれますが、優しくて女性の話を親身に聞くグレゴリーは上三人の男兄弟たちとはまた別な、柔らかな印象を抱かせてくれます。

押しの弱さのために、ハーマイオニーへの恋に邪魔が入ってしまうのも致し方なしですが、グレゴリーの優しい気質に触れることが出来るエピソードです。

一目惚れをきっかけに、様々な恋が動き、恋の延長線上にある家族間の人間関係も大きく動かします。

グレゴリーには先述の妹、ヒヤシンスに、いつも包み込んでくれる母ヴァイオレットがついているので、少し頼りなげなグレゴリーの人物にスパイスを加えてくれています。







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