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執筆者の写真Masumi

Book Report: Poupelle of Chimney Town

更新日:10月20日

*この記事は2021年6月28日にNoteへ投稿した記事の再編です。


Author: にしのあきひろ カテゴリー: 絵本、ファンタジー 翻訳版の有無: なし。ただし和英併記 映像化: あり「えんとつ町のプペル」 英語レベル: Basicレベル(洋書に一日3分間向き合える)

この本は、こんな人達にオススメします。 ・周囲の目や意見なんて関係ない、自分の信念を持ってチャレンジするんだ!という強い思いがある人 ・自分の力では物事を動かせないと諦めている人 ・未知なるものへ憧れと好奇心がある人

今回ご紹介したいのは、実は洋書ではありません。 正真正銘、日本の方が手掛けた作品です。 絵本であるため、私も映画を観るまで子供向け作品だろうと思い込んでいましたが、映画を観た後、そして絵本を読んだ後に大人に向けた作品だと気づきました。 洋書ではありませんが、例外としてどうしても取り上げたくて、数々の洋書を差し置いて本作品を選んだ理由は、大きく二つあります。

一つ目、まず作品の良さ。

シンプルな流れで物語が進むのに、たくさんのテーマが盛り込まれているため、重みのある作品に仕上がっています。 要約すると、煙に覆われた町に住む少年ルビッチ(以下Lubicchi)がゴミ人間プペル(以下Poupelle)と出会い、未知の星空を二人で探しに行く物語、というのが本筋ですが、この物語には「究極のリーダーシップ」「固定観念の打破」「自分の信念を貫き通す者への憧れ」「没個性による夢実現の諦め」など、現代社会に生きる人たちなら誰しも感じる生きていくための課題がテーマとして盛りだくさん。 もちろん、LubicchiとPoupelleの友情物語といった不変的なテーマも含まれるため、登場人物の動向など注意深く考察しなくとも十分楽しめる作品になっています。 ただ、今挙げた重いテーマを意識することで、普通に、平凡に、大人社会を生きてきた方なら誰しも感じたことのある閉塞感を、この作品を通じて実感できると思います。 煙突に埋め尽くされた町に住むLubicchiが、「空に星はない」という周囲の先入観に押しつぶされながらも、誰からも支持されなくとも星をみつけてやるという強い信念を抱いて行動する姿に、誰しも共感したり、反対に彼のように行動できていない自分を思って苛立ちを抱くはずです。 さて、映画でぐっと深堀されていたのが、Lubicchiのリーダーシップ。 Lubicchiが誰の支持を得られなくとも行動を起こしたリーダーなら、彼と反対に、周囲の目を気にして自分の意見を押し殺してしまったフォロワーがいますが、それがアントニオ(以下Antonio)です。 絵本でも映画でも、Antonioはいじめっ子の典型として描かれているため、リーダー格っぽいのに小物臭がする子だと思っていました。

映画では物語後半に、彼の心の奥底に隠した気持ちを描かれるシーンがあり、むしろ彼に強く共感出来ました。 周囲の目を気にして自分の気持ちを押し殺す、なんて、誰しも経験のあることではないでしょうか。 彼が本音をこぼすシーンには、私も感情移入して思わず泣きそうになりました。

二つ目、絵本の造り。

絵本だと思ってなめていました。 ただ話の内容がいいだけなら、洋書カテゴリーの例外として紹介しません。 先に記載したように、この作品は和英文章が併記されています。 これ、普段洋書に触れない方にとって、洋書を身近に感じられる作品の理想形です。 一つの物語を絵で楽しめる、文章は和洋併記なので日本語で内容を把握しながら英文に触れられる。 英語への苦手意識がぐっと減らすことが出来る、画期的な作品です。 絵そのものも美しい色使いで描かれているので、絵を楽しみたい方にとっても良い作品となっています。 大人なら誰しもが言われたことがある「べき、ねば」という固定観念を、真っ向から打破することをテーマに描かれた作品。 くしくも、映画公開は2020年12月で、我々の生活様式や常識が一変して半年以上が経った頃。 変化への対応を行うなか、何かと制限されていて、先も見えない閉塞感漂う中、「リーダーシップ」「未知への挑戦」といったポジティブなテーマをもって物語が進み、勇気を与えてもらえる作品です。


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