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執筆者の写真Masumi

Book Report: Queen Charlotte


Author: Julia Quinn

翻訳版の有無: なし

映像化: あり「クイーン・シャーロット~ブリジャートン家外伝~」

英語レベル: Advancedレベル(一年に一冊洋書を読了できる)



この本を読むと、「相手に寄り添う大切さを学ぶことが出来る」というベネフィットを得られます。


くしくも、本作を読了した日、録画したよしながふみ先生原作のドラマ「大奥」の最新話を観終わり、感慨深くなっている状態で、このブログを書いています。

「クイーン・シャーロット」と「大奥」はイギリスと日本という異なる国で起きたお話なのですし、時代背景が違いますが、二つの作品には、夫婦になった二人が環境や相手が抱える秘密を共有して、お互いがかけがえのない人となっていく過程を描くという、共通のテーマがありました。

ちなみにドラマ「大奥」は漫画を基にして、パラレルワールドを描いているのですべてが史実どおりではありません。

ですが、基本は史実を基にした物語。

先日放送した、和宮様と家茂公が夫婦として少しずつ歩み寄っていくエピソードは、ドラマも原作も秀悦です。


本題の「クイーン・シャーロット」に戻します。

この物語も、他のブリジャートン家作品と同じように、パートナーとなる者達の心の歩み寄りを描いていますが、異なるのが二人が夫婦になるところから物語が始まります。

舞台が王の結婚ですからね。

他作品は恋に落ちて、ハッピーエンドを迎える過程を描いています。

知らない土地へ嫁いだシャーロットと繊細ゆえ心とマインドがうまく繋がらないジョージ三世の綱渡り状態の結婚生活を描いています。

ただ、この個人のことだけがテーマなら、結構状況がシンプルで済んだのですが、シャーロットの結婚は別の目的を含んでいました。

実はのちの王妃となったシャーロットは、黒人の血を引く女性。

つまり彼女が王室に入ることで、これまで白人だけで占めていたイギリス社交界に黒人を入れるという試みを行うことが、王室を取り巻く環境を変化させようとしていたのです。


初めて映像化されたブリジャートン家を自分のSNSで観た時、時の女王シャーロットだけではなく、特権階級の人々の人種が様々で面白いなと思ったのを覚えています。

長女ダフネが公爵サイモンと契約し、恋人の振りをするというCMでしたが、「相手役が黒人なんだ!」とストレートに思ったことを覚えています。

巷では、ディズニー作品におけるプリンセスの立ち位置の意識改革も何かと話題ですが、一方のブリジャートン家はより自然にダイバーシティーを取り入れて配役を考えているなと思います。

不思議と置き去りにされた感覚にならない作品です。


さて本題ですが、本作品で際立ったのは「相手のことを慮る大切さ」でした。

異国から嫁いだシャーロットにしろ、心の繊細さを抱えたジョージにしろ、思いやってもらえていない。

シャーロット側からすると、嫁ぎ先の文化どころか夫の人となりも分からず、失礼ながらあてがわれたという風情で結婚が進められます。

誰に聞いても夫となる男性がどういう人なのか、正直に答えてもらえていません。

血統を繋ぐことが大事とされた背景もあるのかとは思いますが、シャーロットに寄り添ってくれる人は身内も含めて一人もいませんでした。


一方のジョージも、彼の視点で立つと、やはり寄り添ってくれる人はいなかった。

彼の繊細な気質のために、発作を起こすとどうやら心とマインドが真っ二つになって正気を保っていられなくなるという秘密を持っているようですが、彼は実は王になる重圧に耐えられていないのでした。

王の長男という立場から、次代の王として育てられましたが、ジョージが望んだことではない。

孤独と怒りを抱える二人が王と王妃として目合わされ、何も知らずに夫婦となるところから始まり、やがてお互いを支えとして生きていく。

心とマインドがちゃんとまっすぐ繋がっていた分、シャーロットの方が理性的にジョージの王として、そして人としての苦悩をよく理解していきます。


味方がいない中踏ん張るシャーロットですが、王妃の侍従として彼女につくブリムスリー(Brimsley)を筆頭に、王室を守るための協力者を得ていきます。

王の右腕のレノルズ(Reynolds)に、ダンブリー夫人アガサ(Agatha Danbury)。

アガサがピックアップされるのは、個人的に嬉しいです。

三歳からダンブリー氏と結婚することが決められていたアガサは、愛情のない年上の夫に付き従うしかありませんでしたが、彼らも黒人であり、社交界の主だったサークルに入ることが出来ない夫の悔しさをよく理解するという複雑な気持ちを抱えた女性です。

そんな夫妻がシャーロット王妃と近づきになり、特にアガサはシャーロットと心を通わせていきます。


本作品は、様々な形で二人組が描かれていて、その二人組でも「相手を慮ること」の描写を見ることが出来ます。

国王と王妃夫妻、ダンブリー夫妻という夫婦はもちろんですが、ジョージとレノルズ、シャーロットとブリムスリー、シャーロットとアガサ、そしてブリムスリーとレノルズの二人組です。

(シャーロットと彼女をイギリスに連れてきた兄、とか、アガサとジョージの母であるオーガスタ王太子后も組ませようと思えば組ませられますが、あまりあからさまじゃないので割愛します。)

様々な立場があり、きっと個人の気持ちを優先することは難しいこともしばしばあったでしょうけど、相手のことを思いやって形を作っていき、本筋のブリジャートン家の物語の時代に結びつくのかと思います。


さて、私は洋書から先に本作品に手を出しましたが、称号に関して改めて触れることが出来ました。

王族に関する単語でいうと、私達は王: king、女王・王妃: queen、王子: prince、王女: princessが真っ先に出てくるのではないかと思います。

結婚によって称号を得る際、kingとqueenとで違いがでます。

確かに、と思えたのは現代のイギリス王室を見て。

イギリス王家のエリザベス女王(二世)は称号がqueenで、その王配であるフィリップ殿下の称号はprinceでした。

つまりqueenの称号を持つ王族と結婚をしても、相手はkingにならない。

一方、本作のように王であるジョージと結婚したシャーロットは、queenの称号をいただいています。


また、princessというと、ディズニー作品の影響か、若い女性だけがプリンセスのような印象を受けますが、王位継承していない女性は年齢関係なくプリンセスです。

というのも、ジョージの母親であるオーガスタ王太子后はPrincess Augustaとして表現されています。

(ジョージ三世の父親は王位を継ぐ前に亡くなったため、王妃にならなかった。)

こういうところも発見ですね。










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