Author: Patricia Highsmith
翻訳版の有無: あり「アメリカの友人」
映像化: あり。「リプリーズ・ゲーム」
英語レベル: Advanced(一年に一冊洋書を読破出来るレベル)
この本を読むと、「口は災いの元という言葉を意識するきっかけをもらえる」というベネフィットを得られます。
突然ですが、皆さんは悪口をどれくらい言いますか? 笑
普段、私たちも何気なく言葉を発しますが、その時の気分に影響されて、口にした言葉に思いがけず悪意が上乗せされていたなんてことあると思います。
悪口や陰口を言わないように注意していても、一緒にいる人に影響されてぽろっと口にしてしまったり、その時の気分で愚痴ってそのまま誰かを攻撃してしまったり。
中には悪口や陰口をたたくことに対する罪悪感が薄い人もいますが、本作のテーマである悪口がきっかけとなり、ある人物が事件に巻き込まれるという展開を繰り広げます。
絵のフレーミングを行うジョナサン・トレバニー(Jonathan Trevanny)は、急性骨髄性白血病(myeloid leukemia)と診断されて以降、日によって変化する体調と付き合ってきました。
魅力的な妻シモーン(Simone)と幼い息子のジョルジュ(Georges)の行く末を憂いながら、慎ましく日々を過ごしています。
快復を諦めたわけではありませんが、体調が中々好転しないことから焦るジョナサンは、担当医が彼を激励しても彼の態度を楽観的だと言ってみたり、時々フラストレーションを持て余す時もあります。
そんなジョナサンは、自分の命が長くないという噂が流れていることを知ります。
噂を聞きつけたご近所さんには、そんな噂は嘘だと否定しますが、ジョナサンは次第に疑心暗鬼になります。
そんな中、ジョナサンはウィスター(Wister)という謎の男性に出会い、ドイツの医者を紹介されるとともに、彼に力を貸してほしいとオファーを受けます。
その助けとは、彼が指定する人物の暗殺でした。
これに協力すると、ウィスターは多額のお金をジョナサンへ支払う約束をしてくれますが、二回目のオファーを受けた際にはさすがに断ります。
実はこのウィスター、リプリーと関りがあるギャング、リーヴス・ミノー(Reevse Minot)が偽名を使ったもの。
リーヴスはギャンブルをしますが、彼にはいけ好かない相手が二人いて、彼らを手に掛けてほしいという依頼をリプリーに話していました。
(淡々と書いていますが、ようは人の命を左右する要求なので、とても物騒です。)
数か月前のあるホームパーティーの場で、リプリーはジョナサンから悪口を言われてしまう場面に出くわしたことを思い出し、さらにジョナサンの病気があまり快復の期待が出来ないことから、リプリーはジョナサンをリーヴスに紹介します。
こういった会話を経て、ウィスターを名乗るリーヴスはジョナサンと落ち合い、ドイツでの医師による診察と多額の報酬と引き換えにあるギャングを撃ってほしいと拳銃を渡します。
始めは渋るジョナサンでしたが、やがてその要求を呑み、指定された場所と方法で標的のギャングを一人撃ちました。
リーヴスにしてみればいわゆる殺し屋の都合がついたので、彼がいけ好かないと感じるもう一人の暗殺もジョナサンに命じます。
ジョナサンが行う暗殺により、彼の家族だけでなくリプリーと彼の家族を巻き込み、手に汗握る展開へと続きます。
本作の肝は、冒頭で申し上げた通り、まさに人の悪口。
その時の気分に左右されて、ジョナサンが何気なくリプリーの悪口を言ったことで、様々な人たちが巻き込まれていきます。
リプリーだって、リーヴスの申し出を徹底して断ることも出来ましたが、遺恨を残したホームパーティーの場面の印象が強かったということです。
良いことを一千個行っても、たった一つ悪いことをすると、不思議なことにその一つの悪いことの方が悪目立ちし印象に残りやすい、という事例も見聞きしたことがありますが、まさに今回の物語はその事象を表しています。
私達は聖人君主ではないので、絶対に悪口を言ってはいけないと指示されても、中々難しいですが、何気ない悪口が原因で人生を左右される事件などに巻き込まれるというのは理不尽に感じます。
言葉には注意したいものです。
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