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Book Report: Sense and Sensibility

執筆者の写真: MasumiMasumi

Author: Jane Austen

翻訳版の有無: あり「分別と多感」

映像化: あり。「いつか晴れた日に」

英語レベル: Advanced(一年に一冊洋書を読破出来るレベル)



この本を読むと、「自分の気持ちとの向き合い方をほかの人から学ぶことができる」というベネフィットを得られます。


ジェーン・オースティン作品は、過去に「エマ」を読んだことがあります。

彼女の代表作のうち、タイトルが「〇〇と●●」という書かれ方をするものが「高慢と偏見」と本作「分別と多感」であり、

最初はどちらかが他方の続編なのかなと思ったところから、本作に興味を持ちました。

ちなみに観賞前ですが、「高慢と偏見」は「プライドと偏見」、「分別と多感」は「いつか晴れた日に」というタイトルで映画化されているので、映像作品が気になる方はこちらを

チェックしてみてください。

 

さて、本作のタイトル「分別と多感」とはどこからくるのか。

読書前は、私もよくわからずいましたが、主人公となるダッシュウッド姉妹のエリノア(Elinor Dashwood)とマリアン(Marianne Dashwood)のことをさすようです。

彼女たちは、亡くなったダッシュウッド氏の二度目の結婚で生まれた娘たちで、その下にマーガレットという妹と、父の最初の結婚で生まれた兄ジョンが家族にいます。

エリノアとマリアンは、下のマーガレットと比べて年が近く、気性も反対で、だからこそ気が合う姉妹です。

いわゆる長女らしくあまり感情的にならず、知性的なエリノアは分別があり、ザ・妹なマリアンは自分の感情に素直で裏表のない女性です。

ダッシュウッド夫人の子供という視点では三姉妹で、マリアンは末っ子ではなく中間子ですが、マーガレットが幼く、本作にあまり関わらないことと、マリアンの感受性豊かな個性の

おかげで、いわゆる姉と妹の構図がエリノアとマリアンの間に出来上がっています。

当時のイギリスで、女性は結婚することを強く求められており、未婚女性は親戚の誰かの庇護に置かれる環境だったことから、本作では年頃の彼女たちを「結婚」が取り巻きます。

(これは他の作品「エマ」でも同じです。)

本作では自分の気持ちの向き合い方を学べると、私はベネフィットで挙げましたが、何を隠そう自分の感情と向き合うことになるのがエリノアとマリアン姉妹。

彼女たちが置かれる結婚の環境と、彼女たちがする恋とで揺れ動きます。

 

ダッシュウッド氏が亡くなる際、彼の息子ジョンには、氏の妻ダッシュウッド夫人と姉妹たち、つまりジョンにとっての継母と異母妹たちの世話を頼むと、遺産も準備していましたが、ジョンの妻ファニー・ダッシュウッド(Fanny Dashwood)の助言により、夫人と姉妹たちは受け取ることができませんでした。

ジョンとファニーにも幼い息子がいるため、今後の生活を考えれば遺産の相続が息子ジョンの範疇にだけ入るようにしたいファニーの気苦労もわからなくもありませんが、生活苦となる姉妹と夫人はやがて、夫人のいとこジョン・ミドルトン卿(Sir John Middleton)の庇護下に身を寄せます。

その間、ジョンとファニーのところに居候していたファニーの弟エドワード・フェラーズ(Edward Ferrars)と、エリノアは惹かれ合うように。

お金にシビアなファニーと、会ったことがない末弟ロバートに比べ、エドワードは優しい気質で、人を押しのけて出世するようなタイプではありませんが、分別ある振る舞いがエリノアには魅力的に映ったようです。

一方のマリアンも恋の動きがありました。

夫人と姉妹がジョン・ミドルトン卿のコテージに身を寄せて幾日か経ったある日、散歩の途中で足を捻ったマリアンを美しい青年が介抱しました。

彼はウィロビー(John Willoughby)といい、音楽の趣味などが合ったことで、マリアンはすっかり彼に夢中です。

この二組のカップルがすんなり愛を育むことができれば話が早いのですが、そうはいかないもの。

エドワードは、のちに姉妹が知り合うスティール姉妹の妹ルーシー(Lucy Steele)と秘密の婚約をしており、後日、彼の母と姉ファニーが別の女性との結婚を勧めた時にエドワードが反発したことが公になります。

ウィロビーは実は女性に不実で、姉妹と知人となったブランドン大佐の初恋の末生まれた娘との間に子供を作っており、しかもこの事実がウィロビーの資産家の親戚に知られたことから、彼も望まぬ結婚をさせられるという事態になります。

つまり、エリノアもマリアンも、各々が抱いた恋に大きな障害が立ちはだかるのです。

恋と結婚に悩むことになるのですね。

同じ事柄で悩む二人ですが、自分の気持ちの向き合い方や、どういう態度で外の世界と向き合うかは全く異なりました。

 

先に記載したように、知性的なエリノアは、エドワードがルーシーと婚約中であること、彼女から婚約の印を見せられたこと、また別の女性との結婚話を勧められた際にエドワードはルーシーとの結婚を進めようと反発したという事実に触れ、心を痛めますが、感情爆発させて物に当たり散らしたり、人と接する態度を変えたり、ということはしません。

あくまで静かに、ですが自分の中では激しく動揺するのがエリノアです。

ジョン・ミドルトン卿の義母(彼の妻の母親)のジェニングス夫人(Mrs. Jennings)は詮索好きのため、彼女の口からエドワードの噂話も耳にしますし、マリアン目当てで訪れるブランドン大佐とエリノアは友情を育むのですが、二人の様子から彼との仲も夫人から探られます。

こういう周囲の様子にも大人の対応でかわすのがエリノア。

自分の気持ちを無視しているかというとそうでなく、つらいことはつらいのですが、自分の中で感情を処理します。

表に感情を出さない(あるいは出せない)分、少し気の毒な気もしますが、自分ではどうにもならない事柄を真摯に受け止め、エドワードがルーシーと結婚しても、あるいは彼の母と姉が勧める女性と結婚しても、次に彼と会う時はしっかり丁重に会おうと覚悟を決められるのがエリノアです。

こういう人は、周囲の状況に対してなるようにしてなる人生を送るか、超が付くほど幸運な棚ぼたがあるのが定石です。


マリアンは反対に、感情が抑えられないと表に出すし、気分が悪いからと部屋に籠ります(人に当たり散らさないだけよい)。

ウィロビーから絶縁とも取れる手紙を受け取ると部屋でわんわん泣くし、ブランドン大佐から事情を聴いたエリノアの口からウィロビーが大佐の娘との間に何が起きたのか聞くと、静かに黙って泣きながら話を咀嚼する。

感情の起伏の大小はあれど、マリアンは自分の気持ちを外にわかりやすく発信します。

だから、周りは常にマリアンを心配します。

姉妹とは言え、こんなに近くいてお互い恋に悩み、異なる態度で向き合うのですから、「あの人、何考えているんだろう」と感じるはず。

実際、悩みを表情に出さないエリノアが実は一人で長い間エドワードとの恋に悩んでいたことを知ると、マリアンは驚き、自分のことばかりだったと姉に謝るシーンがあります。

感情に素直なマリアンがエリノアの分別ある態度に感化されて、態度を改めるシーンがあり、少し大人になったなと感じました。

反対にエリノアも、ちゃんと感情を露にする場面が出てくるので、親近感が湧くこと間違いなしです。

脇役の存在も大きく、特に姉妹を見守りつつ深く関わるブランドン大佐はキーパーソンですし、彼女達よりだいぶ年上ということもあり、彼が登場するシーンは安心感があります。

自分の感情との向き合い方は、私も心理学、コーチングをベースにしたリソースで勉強中ですが、自分の価値観を知ることができる大切な学びですし、この二人の姉妹の様子からも学ぶことができます。

エリノアとマリアンどちらの自分の気持ちとの付き合い方も大事ですし、もっとこうした方が楽だよ、と思うことができます。

こういう心の勉強は、つい最近、現代の勉強なので、これを勉強できる私は幸運だなとも思えます。



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