Author: Emily Giffin
翻訳版の有無: あり「サムシング・ボロウ」、コミック版「サムシング・ボロウ~秘密の恋人たち」
映像化: あり「Something Borrowed/幸せのジンクス」
英語レベル: Advanceレベル寄りのBasic(洋書に一日3分向き合える)
この本は、こんな人達にオススメします。
・人に言えない恋をしている人
・実は口に出せないけど、長年の友人に不満がある人
・結婚式準備中で、ちょっとストレスが溜まっている人
海外の結婚事情を調べると、あるジンクスに則って準備する事柄があります。
それが本作のタイトルの元になっています。
Something Old, Something New, Something Borrowed, Something Blue.
このキーワードをもとに、花嫁は結婚する際にガウンを準備するそうです。
今回のキーワードはSomething Borrowedです。
Borrowは借りるという意味を持つ単語で、この花嫁のガウンに必要な誰かから何か借りてきたものを身に着けると良い、ということになります。
本作の借りてきたものは、一体何を指すのか。
残念ながら、今回のプロット上、良いものを指さないと感じました。
なぜなら、主人公が長年の友人の婚約者を「借りる」ことになるのだから。
弁護士の主人公レイチェル(Rachel)は、PR会社で働く長年の親友ダーシー(Darcy)の花嫁付添人、それも花嫁の世話を取り仕切る役であるMaid Of Honorを任されることになりました。
ダーシーの結婚相手は、レイチェルと同じ弁護士のデックス(Dex)で、レイチェルが密かな感情を抱き続けていた相手でした。
すべての始まりはレイチェルの30歳の誕生日パーティーの夜。
ダーシー主催でパーティーが執り行われ、しかも自分は数か月後に結婚を控える身なので、ダーシーは上機嫌。
結果へべれけになったダーシーを自宅まで送り届け、レイチェルとデックスは飲み直しにバーをはしごした結果、一夜の過ちを犯してしまいます。
最初は当然、過ちを後悔する二人ですが、デックスは長年レイチェルへの想いを隠してきたし、レイチェルはこれまで羽目を外してこなかった自分の人生やダーシーへの積もり積もったコンプレックスや小さな嫉妬が彼女の箍を外し、二人の関係が一気に加速します。
表向きはダーシーとデックスの結婚式準備や二人の関係を支持しつつ、裏ではデックスとの秘密の関係を結ぶレイチェルは、自分を見つめ直していきます。
学校で使うバッグ、初恋相手、憧れの大学への大学受験、など小さなことから大きなことまで、自分の希望を通して何かとレイチェルへマウントしてきたダーシー。
一番長く付き合っていて、一番何でも共有してきた相手だけど、ダーシーが必ずレイチェルより格上の立場にならないと、ダーシーが気が済まないようになっていた。
そして、レイチェルはそれを許していた。
共依存ともいえる彼女との関係を見つめ、デックスとの浮気はある種ダーシーへの唯一のマウント行為なのではと自分の気持ちと感情を振り返るレイチェル。
結婚式が近付く中、やがて、レイチェルはデックスに対し、何をしてほしいのか自分の希望を伝えます。
そこに意外なエピソードが加わり、すべてが急速に変化していく中、レイチェルが手に入れてそして失うものは何だったのか。
そしてそれは本当に納得出来るものなのか、を考えさせられました。
私にも、長年の友人がいます。
ある時、私も彼女に対して、ある分野でマウントを取っていることに気付きました。
彼女よりも○○でいたい。
どんなに仲の良い友人同士でも、競争意識はあるのだと気付かされました。
異性関係、仕事、結婚や離婚などのステータス、年齢、資産、など私達は様々なカテゴリーを使って他人と比べます。
その感情が悪いことだとは、私は思いません。
ただ、その気持ちを無理に押し殺すこと、反対に前面に出すことは良くないことだと思います。
しかも、そのカテゴリーはあくまで表面的なこと。
それを得るまでにどんな行動を取ったかを知らないまま、目に映るものだけを比較するのは浅はかなこと。
それがわかると、相手と自分を比べるのは空しいことだと気付くことが出来ます。
レイチェルとダーシーの場合、表面的なことにばかり目を向けているし、レイチェルも自分が我慢していることが多いし、「一番歴史が長い友人」ということに拘ってダーシーへの本音を隠しているように感じました。
執着を手放した結果、心の平和を手に入れたレイチェルの結末は、彼女を新しい世界へと導いてくれると感じました。
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