Author: Thomas Hardy
翻訳版の有無: あり「ダーバービル家のテス」
映像化: あり。「テス」
英語レベル: Advanced寄りのBasic(一日3分英語と向き合えるレベル)
この本を読むと、「自分の意志で人生を送れるありがたさを実感出来る」というベネフィットを得られます。
私が本作と出会ったのは、別の小説「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」を読んでいた時。
主人公のアナの愛読書が「テス」であると作品の中で紹介され、純粋に気になったのがきっかけでした。
長い時を経て漸く読了したのですが、冒頭の通り、読み終えたあとに抱いた感想は、私達女性が自分の意志で人生を送れるというのはありがたいことなんだな、ということ。
主人公のテス(Tess)は子だくさんのジョンとジョアン・ダービーフィールド家(John and Joan Durbeyfield)の長女。
父ジョンが町の牧師から、ダービーフィールド家は旧家ダーバービル家(D'Urberville)を祖に持つということを告げられ、その主筋にテスを奉公人として送り、富を築こうとする両親の手助けをすることになります。
「手助けをすることになる」と一言書いても、そのきっかけとなるエピソードから始まり、終盤までのエピソードを読むと、いかにテスが周りに振り回されたかがうかがえます。
家計の助けのためにダーバービル家に奉公へ出るテスを決意させたのは、彼女が弟アブラハムと深夜に町へ出掛けた際に運転していた実家の馬を、転寝で死なせてしまったこと。
舞台設定は馬車で移動する時代で、夜の移動中にテスが運転する馬車がすれ違う馬車とぶつかり、相手の馬車の部品がテスの馬に刺さったのが原因でした。
その奉公先の息子アレク(Alec D'Urberville)に目をつけられて情婦にされ、その結果テスの身に起きる悲劇に心を痛め、心機一転して奉公に出た別の農場で出会った青年エンジェル・クレア(Angel Clare)との結婚、彼女の秘密を打ち明けたことによる彼との不和。
などなど、挙げたらきりがない 笑
諸悪の根源はアレクなのですが、いわゆる伏線を探すとテスの身の上の不運がよくうかがえます。
彼女の運命を変える、馬・馬車でのエピソードの数々。
彼女自身が運転する馬車で、馬を死なせてしまったというシーンが、彼女の行く末を物語っていると言えます。
本作を読んで感じたのは、今この現代に生きる我々はなんて自由なのかということ。
特に女性は今、妻や母以外の役割を持って生きてもよいと許可されている。
本作の時代では、女性は妻か母親の役割しかなく、アレクの情婦とならざるを得なかった時分のテスは、エンジェルから責められました。
エンジェルも似たようなことをしたのに、彼はテスを許すどころか責めて彼女の前から去るというひどいことをする。
今の世の中だったら、去られた時点で女性側も去りますけど 笑
テスは新婚生活を送る場所に残るしか選択肢がありませんでした。
選択肢が多いというのは、選ぶ際に迷いが出るかもしれませんが、可能性が多いということは私達がこれから作ろうとする世界に自由度を持たせてくれますね。
さて、作品タイトルの「ダーバービル家のテス」は私の気になるポイントが一つ隠れています。
テスを指すのは、生家ダービーフィールドではなく、彼女の奉公先で、祖先の名前で、彼女の人生を翻弄しまくった家の名前ダーバービルだということ。
これは、彼女は家に縛られることを意図するのだと推測しました。
どこまで行ってもテス個人ではなく、家を探られるテス。
それが当時の時代背景でもあり、テスが送る人生のように感じられました。
個人でも家でも、どちらを選択してもいいしどちらでも良いと言ってもらえる今の時代に生きる私は幸せです。
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